独立を目指すあなたへ:フリーランス1年目がやりがちな5つのミスと対応策 | ライフハッカー[日本版]

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99u:「え、何をしたいって?」

仕事を辞めてフリーになりたいと告げた直後、妻はそう言いました。

妻の反応を責めるつもりはありません。なにせ当時の私は、自分と妻、そして生まれたばかりの娘を養えるだけの、まともな給料をもらえる仕事に就いていたのですから。住宅ローンや自動車ローンのほか、借金もたくさんありました。でも、巨額のへそくりがあるわけでもありませんでした。

それでも、私は自分でビジネスをやりたかったのです。それまでの数年間、副業でフリーランスの仕事をしていましたが、独立することをずっと夢見ていました。クライアントとの仕事が好きだったし、自分が自分の上司になることで得られる柔軟性と自由を愛していました。

この記事は、会社員からフリーへの転身を考えている人のために書きました。よく言われるような、リスクを受け入れる方法や、根気を保つためのモチベーション向上術を書くつもりはありません。それよりも、2008年の私と同じく、独立の準備はできていながらも資金がないという状況のあなたに読んでもらいたいのです。

以下、会社員からフリーランスになる人がやりがちな、5つのミスを紹介します。

1.自分のニーズを妥協しない


家賃や住宅ローン、自動車ローン、学生ローンの支払いのほか、毎月の生活費など、私たちには多くの固定支出があります。

サラリーマンなら予測可能な安定した収入が得られます。毎月決まった日に入る給料をもとに、予算の計画を立てられるのです。

でも、独立すれば収入は不安定になります。出費を相殺するには、出ていくお金よりも多くを稼がなければいけません。そうなるまでは、貯金を切り崩すしかないのです。当たり前のようでいて、それまでに染みついてしまった「定期的にお金が入ってくる」という感覚は、なかなか払拭することができません。

キャッシュフローについて考える前に、毎月の支出を正確に知っておく必要があります。「Money Forward」や「Zaim」のようなツールを使い、過去数か月分の出費を振り返って「必要経費」と「それ以外」に分類してみてください。


  1. 「必要経費」とは、生活を回すために必要なもの。住宅ローン返済、学費、食費、光熱費、税金などを指します。

  2. 「それ以外」は、必要経費でないものすべて。外食やブランド物の服、最新のiPhoneなど、生活に必ずしも必要でないものを指します。


まずはそれぞれの金額を計算してみましょう(必要経費は安定していることが望ましい)。必要経費は必ずカバーしなければなりませんが、それ以外は(願わくば今だけ)犠牲にしてもいいはずです。

2. 給料から逆算して請求額を決めてしまう


駆け出しのフリーランサーは、自分を安売りしがちです。「年収10万ドルほしいので、年間2000時間(40時間×50週間)働くとすると、時給は50ドル。よし、その金額に設定しよう」と考えてしまうのです。

ここで問題なのが、仕事上の諸経費を考慮していないこと。フリーランサーとしてやっていくには、営業努力が必要です。ウェブサイトのアップデート、潜在顧客への提案、請求書の発行、潜在・既存顧客との打ち合わせなどを避けることはできず、かなりの時間もかかります。つまり、生活水準を維持したければ、同等の正社員よりも多くの料金を請求しなくてはなりません。

それに、社員の雇用には隠れたコストがたくさんあります。雇用主は、採用活動(求人広告や人事部の給料、仲介業者やリクルーターへの経費)に投資せざるを得ません。また、新人を育てるのに数週間から数カ月かかることもあり、それも雇用主にとってのコストです。ほかにも、健康保険、有給休暇、退職金、疾病休暇、SNSをしているだけで何も生み出さない社員への給料などの、さまざまな負担があります。

つまり、フリーランサーはその分を考慮して請求してもいいのです。クライアントから見れば、あなたは蛇口をひねれば成果が出てくる水道のようなもの。価値を生み出したときにだけお金を払えばいいのです。独立したあなたは、もう従業員ではありません。あなた自身が、企業としてクライアントに必要な商品を提供しなければならないのです。

シンプルなルールとして、今の時給を2倍にするのがいいでしょう。経験豊富なクライアントは、あなたが通常の社員のような経費を必要としないこと、またいつでも解雇できることを知っています。

とはいえ、最終的には、自分がクライアントに提供できる価値を見積もれるようになるのが理想です。

3. 売上と利益を勘違いしてしまう


フリーになったら、売上と利益を分けて考える必要があります。売上は請求書を発行することで得られる金額で、利益は自分の手元に残る分です。

特に覚えておいてほしいのが、支払いは請求よりも遅れてやってくること。つまり、どうしても余裕のない月が出てきます。駆け出しのフリーランサーは、とかく楽天的になりがちです。でも、どんなにすばらしい潜在顧客との出会いがあっても、契約を締結しないかぎり何の意味もありません。私の友人のJesse Mechamが、金銭管理などについてのサイト「YOU Need a Budget」にこう書いています。

フリーランスの浮き沈みに対処するためには、先月の収入で暮すことです。1カ月分の支出に相当する金額は、へそくりとして取っておくのが賢い選択です。

4. お得意先がわからない


会社員に慣れてしまうと、きちんとした未来予測を避けがちです。毎日オフィスに出勤していれば、お金をもらえるのですから。

新人フリーランサーは、これと同じマインドセットに陥りがちです。「毎日デスクに向かっていい仕事をして、納期通りに納品していれば、クライアントとお金は向こうからやってくる」と。そうだったらどんなにいいことか。現実はそう甘くありません。弁護士を雇って契約書を作成する、ビジネス用の銀行口座を開設する、事業計画を立てる、パーフェクトなウェブサイトをデザインするなどの仕事は、すべてが大きな前進のように見えますが、実際は顧客がいなければ何の価値も生み出しません。

新米フリーランサーであるあなたは、営業をしなければなりません。予測可能かつ定期的なクライアント獲得の術を持つ必要があるのです。そのためにはマインドセットを変えましょう。あなたのビジネスは、「デザイン」や「執筆」ではなく、クライアント探しとビジネス課題の解決なのです。

最初は、以下のように始めてみてください。

(1) 最初のクライアントは今の雇用主で


今いる会社での経験や専門性を活かすために、元従業員を下請け業者として使うことに雇用主がオープンかどうかを確認しましょう。同じ仕事をしていては会社を辞める意味がないと思うかもしれませんが、最初の収入は必要です。ゆくゆくはあなたの代わりに正社員が雇用されることになりますが、短期的に見れば、今のボスに頼ることで、独立直後の勢いを得ることができます。

(2) いちばん近いネットワークに宣伝する


誰にでもネットワークはあります。身近なところで言えば、友人や家族。あなたがしようとしていることや何ができるのか、潜在顧客とのつながり方などを伝えておきましょう。

(3) 仲介業者との関係を作る


個人的に再委託はあまり好きではありませんが、手早く仕事を見つけるには適しています。業者の多くが、たくさんの仕事を抱えながらそれを完了するだけの処理能力を持っていません。仲介業者の採用担当者には、あなたが独立する時期を知らせておきましょう(もちろん、あなたのポートフォリオのリンク付きで)。

(4) ネットワーク、ネットワーク、ネットワーク


勤務時間終了後に、地元で行なわれている何らかのイベントに参加してみましょう。地元のビジネスコミュニティに仲間入りして、いろいろな人と話し、あなたの専門性を活かした自由なアドバイスをします。ただし、すぐにクライアントを見つけようという下心で参加しないでください。それよりも、将来クライアントを紹介してくれるか、あるいは直接のクライアントになるかもしれない人々に向けて、種をまくのです。私はいつもそういう心構えでイベントに臨んでいます。

いくつかの契約を交わし、できれば支払いを受けるまでは、今の仕事を辞めない方が無難です。

5. 柔軟性を活用しすぎない


最後に。ビジネスをビジネスとして扱わなかったために、燃え尽きてしまうフリーランサーがたくさんいます。

フリーランスとは会社経営です。自分の会社の新人CEOとして、クライアントに価値(ウェブサイトの再デザインによるオンラインセールスの成績アップなど)を提供しなければならないことを自覚してください。

つまり、フリーランサーたるもの、自分のビジネスに責任を持たなければなりません。よく見かけるのが、フリーになったはいいけどボスが増えただけという人。クライアントとの関係が、上司と部下みたいになっている人たちです。

会社を辞めてフリーになるのですから、今の仕事より得られるものが多くなければいけません。独立すれば柔軟性や自由、金銭的な自立が得られると思っているかもしれませんが、そうなるには、以下のような方法で、最初から強固な基盤を築く必要があります。

クライアントに間違った期待をさせない


福利厚生の不要な私たちは、クライアントにとって都合のいい社員のように扱われがち。でもプロとして、自分の成果は自分でコントロールしてください。つまり、クライアント要件にどう優先順位を付けて進めるか、進捗報告の手段と頻度、クライアントにあなたの仕事を認めてもらう方法などは、自分で決めるべきなのです。あなたは、自分の仕事を商品として扱うべきです。素晴らしい商品は、その製造過程と納品に一貫性がなければなりません。

アウトソースする


「この価値を提供できるのは自分だけだろうか」と自問してください。多くのフリーランサーが、請求書発行や簿記、支払いなどの業務を自分でやっています。これはかなりの時間と労力を無駄にします。また、アウトソースの経験を増やしておけば、将来的に二次下請けや従業員を雇用するときに役に立つでしょう。

請求額を増やして仕事量を減らす


価格を2倍にすれば、仕事を半分にしても生活水準が変わらないことにお気づきでしょうか? 自分の健康と幸せのために時間を使えずに、燃え尽きていくフリーランサーが多すぎます。いつも疲れ果てていることは、誇るべきことではありません。生きるために働くのであって、働くために生きるわけではないのです。目標とするライフスタイルや収入に合わせて、ビジネスを構築しましょう。まずは、請求金額を上げることから始めてください。


以上が、私がフリーに転身したときに犯した失敗を基にした、対応策です。独立を考えている一人でも多くの人に参考にしてもらえたら幸いです。私は幸運にも、タイミングよく素晴らしいクライアントと巡り合うことができました。支払いが遅れることもほとんどありません。

でも、このようなケースは例外です。多くのフリーランサーが、支払いの遅いクライアントに泣き寝入りしたり、自分や家族のための時間を取れずにいたりと悩んでいます。今は、フリーになるのは簡単な時代。だからこそ、失敗をしないように注意深く最初の一歩を踏み出してください。あなたの成功を祈っています。グッドラック!


The 5 Most Common Mistakes New Freelancers Make | 99u

Brennan Dunn(訳:堀込泰三)