いまさら聞けないクラウドのアレコレ(2) ~スタートアップ企業のジレンマ~

 前回のおさらいとして、私たちを取り巻くサーバー環境について見ていきましょう。「サーバー仮想化? そんなの使えるの?」という時代があり、「クラウド? そんなの使えるの?」という歴史を経て、現在私たちはいくつかの利用形態によってコンピューティング資源を利用しています(図1)。

図1. さまざまな利用形態を経て企業活動に必要なシステム資源が提供される

 しかし、クラウドコンピューティングの普及により計算機資源をネットワーク越しに提供されるようになった結果、特定のホスティング企業(クラウド事業者なども含む)に膨大なサーバー資源が集約運用されるようになりました。現在の私たちのコンピューティング環境では、HyperGiantと呼ばれるGoogleなどのWebサービス事業者やクラウド事業者がネットワークを介して大多数の企業に対して計算機資源を提供する世界が現実のものとなったのです(図2)。

図2. サーバー稼働台数によるシステム設計思想の違い

 やや古いデータではありますが、Huan Lui氏がまとめるブログによれば、Amazon Web Serviceのデータセンター規模は、2012年の推定数として5,000ラックを超えており、おそらく現在も拡張が続いています(図3)。

 日本国内を拠点とする大企業であっても、これだけの規模のコンピューティング資源を単一の会社で保有・利用することは稀であると思います。19インチラック1本に30台以上のサーバーをすべて詰め込んでも15万台以上というコンピューティング資源になるわけですから。

図3. Amazon Web Servicesが保有する19"ラック保有数(推定)[2012年]

 つぎに視点を変えて、Amazon Web Servicesのようなパブリッククラウドを利用する企業の立場からコンピューティング資源の利用について見ていきましょう。