【慢性腎不全】生活が不規則な人はeGFR測定を | ニコニコニュース

注目するのはこの検査項目
プレジデントオンライン

「自覚症状がなければ、悪い数値でも慌てる必要はない」と生活習慣総合研究所所長の工藤医師。 まずは自分の健康診断表を見直すことから始めよう。

■尿が黄色くて心配な人のケース

Gさん 46歳
身長(cm):168.5
体重(kg):62.1
BMI指数:21.8
腹囲(cm):79.5

流通業。若いころから食が細く、朝食抜きで出勤することも多い。血圧が高く血糖値もやや高め。父親が腎盂炎を患っている。運動は苦手でほとんどしない。ヘビースモーカー。

doctor's check――腎臓は2つあるから大丈夫……なわけない
まず、尿検査で尿たんぱくが陽性かどうかを診ます。血液検査ではクレアチニンや尿素窒素の数字に注目します。クレアチニンは年齢や性別によって若干異なるので、これらを勘案した計算値であるeGFR(推算糸球体ろ過量)が用いられます。精密検査では腹部エコー、CT、腎機能精密検査を受けてください。

慢性腎不全とは、病名ではなく、腎臓の慢性の病気により腎臓の機能低下が進行する状態を意味する。20歳以上の成人の8人に1人が罹患している疾患で、最近では「新たな国民病」としてCKD(Chronic Kidney Disease) とも呼ばれている。

腎臓は血液をろ過して老廃物や塩分、電解質などを尿として排泄し、体の中の恒常性を保っている。この機能がうまく働かなくなると、体のあちこちにトラブルが生じるのだ。しかし、慢性腎不全も初期にはほとんど自覚症状がない。放置したままにしておくと、末期腎不全となり、尿毒症、高カリウム血症による不整脈、心不全などを引き起こす危険性が高まり、透析や腎臓移植が必要となる。

「末期腎不全に至ると完治はほぼ見込めません。慢性腎不全になる前に対策を立てましょう」(工藤医師)

慢性腎不全は進行度に応じて、ステージ1からステージ5の5段階に分けられている。その指標となるのが推算糸球体ろ過量(eGFR)だ。eGFRは、年齢と性別、血液検査で得られる血清クレアチニン値の数値を基に計算される。血清クレアチニン値の基準値は、男性で0.6~1.1mg/dl、女性で0.4~0.7mg/dl。血清クレアチニン値が同じでも、性別や年齢によってステージが変わってくる。たとえば46歳の男性で血清クレアチニン値が3.2mg/dlならステージ4で、腎機能は高度に低下し、心筋梗塞や脳卒中にかかりやすくなっていることがわかる。

「ステージ3から腎不全の予備軍。腎臓専門医の受診が必要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙も腎不全を悪化させる要因なので、併せて治療することも大切。eGFRの計算は複雑ですが、血清クレアチニン値等を入力すれば判定できる計算ツールがインターネット上でも紹介されているので、試してみては」(工藤医師)

また、尿素窒素(BUN)でも腎臓の働きがチェックできる。基準値は9~22mg/dl。40mg/dlを超えたら腎不全が考えられ、さらに100mg/dl以上になったら尿毒症の起こる可能性がある。

一方、尿検査では重要となるのが「たんぱく尿」と「血尿」。1日150mg 以上出ている場合を「たんぱく尿」といい、腎障害が疑われる。血尿には結石、糸球体腎炎の可能性が潜んでいる。さらに詳しい検査に尿中微量アルブミン検査がある。これは糖尿病性腎症の初期に尿中に出てくる少量のアルブミンを検出する検査。腎臓のろ過機能が低下すると分子量の小さなアルブミンがたんぱくよりも早く排出されるので糖尿病性腎症の早期発見が可能になるのだ。

「慢性腎不全は、高血圧、糖尿病、コレステロールや中性脂肪が高い人、それから家族に腎臓病の人がいる場合は要注意です。血液検査と尿検査を併せて受け、早期に発見をしましょう」(工藤医師)

■生活改善リスト
正しい食事・睡眠・休日を楽しもう

待っているのは厳しい食事制限。ファストフード通いは計画的に

腎臓病は心疾患や脳疾患を引き起こすだけでなく、発症すると待っているのは面倒くさくて厳しい食事制限の世界。

制限されるのはたんぱく質。分解されたときに残る老廃物が腎臓でろ過され、尿で排出されるのだが、大量にたんぱく質をとると腎臓の負担が増え、機能を悪化させるからだ。

予防のためには、やはり塩分を積極的に控え、栄養バランスのいい食事を適量ということになる。ファストフードやスナック菓子の摂りすぎには注意しよう。

寝る子は育つ上手な睡眠で腎臓機能を回復

腎臓の機能回復に効果があるのが十分な睡眠。規則正しい生活が理想だが、そうはいかないのが現実。せめて内臓を休ませるために寝る4時間前からは何も食べない、または消化のいいものを少量にとどめよう。また、クーラーを効かせすぎて体を冷やすのも危険だ。

休みの日は山や海へ出かけて過ごしてみる

運動習慣は健康維持が目的では3日坊主で終わりがち。健康な人が運動習慣を身に付けるには「気持ちいい、面白い」などの楽しみが必要だ。ハイキングやキャンプなど、アウトドアのレクリエーションは自然と運動量が増え、ストレス発散にもなる。

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生活習慣総合研究所所長 工藤一彦 
1947年生まれ。信州大学医学部卒。防衛医科大学講師、女子栄養大学教授などを経て現職。著書に『健康常識にダマされるな!』(監修)など。

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