安保法案、抑止効果にも疑義=防衛省OBの見解対立 | ニコニコニュース

 1日の衆院平和安全法制特別委員会で、参考人として出席した防衛省の制服組(自衛官)と背広組(官僚)の元幹部2人が、安全保障関連法案の抑止効果について相反する見解を明らかにした。同法案をめぐっては、合憲か違憲かで憲法学者の意見が対立している。目的や効果に関しても専門家の評価が分かれたことで、法案の分かりにくさが改めて浮き彫りとなった。

 政府は法整備の目的について「抑止力向上による紛争の未然防止」と説明してきた。これに関し、折木良一元統合幕僚長(与党推薦)は1日の特別委で「抑止力の向上が図られる」と支持。しかし、柳沢協二元官房副長官補(野党推薦)は「軍隊を対峙(たいじ)させることによる抑止が、逆に緊張を高める可能性もある」と反論した。

 折木氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事的台頭をはじめとする安保環境の変化を説明。4月に再改定した日米防衛協力の指針(ガイドライン)に触れ、「実効性の向上のためにも安全保障法制の早期成立が望まれる。これが対外的にも大きな抑止力になる」と訴えた。

 また、過去の自衛隊の海外派遣に関し「その時代の国際情勢に強く要請されながら、遅ればせながら法整備が進んだ」と言及。新たな安保法制を「憲法の範囲内で、主体的に前もって活動範囲、権限を法制化するという極めて意義のあるものだ」と高く評価した。

 これに対し、安倍政権の政策に批判的な柳沢氏は「間違えて撃ってしまったら(事態が)拡大する可能性がある。それをどう政治的に防ぐのか、政治の責任で議論する必要がある」と指摘。集団的自衛権行使の前提として法案が規定した存立危機事態の概念を取り上げ、「一義的な定義はできない」と曖昧さを批判した。