任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】 | ニコニコニュース

文・取材・撮影:編集部 世界三大三代川

●大勢のファンを前に宮本茂氏が生で語る!

 2015年7月2日〜5日(現地時間)、フランス・パリにて、ゲームやアニメ、マンガを中心に日本文化を紹介する“JAPAN EXPO 2015”が開催中。2015年7月3日のICHIGOステージ(もっとも大きいメインステージ)では、任天堂 専務取締役の宮本茂氏によるステージ“Nintendo MASTERCLASS”が行われた。宮本氏が登壇するということ以外は、いっさい謎に包まれていたステージだが、ステージの始まる前から長蛇の列ができるほどの人気ぶり。宮本氏のワールドワイドな人気の高さをうかがわせた。イベントの内容は、宮本氏が携わる新作のプレゼンテーションが中心ながら、『スーパーマリオメーカー』の紹介時には手塚卓志氏が、ステージ終盤には『Splatoon(スプラトゥーン)』の阪口翼氏がサプライズで登壇するなど、非常に豪華な内容になっていた。本記事では、そのステージのリポートをお届けする。なお、ゲーム画面の撮影は禁止だったため、一部わかりづらい部分もあるが、ご了承いただきたい。

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 会場が暗転し、『ドンキーコング』や『スーパーマリオ』、『ピクミン』といった代表作、E3や『ゼルダの伝説』25周年コンサートへの出演時などをまとめた宮本氏のムービーが流れ出すと、会場中から興奮を抑えきれない歓声が(もっとも歓声が大きかったのは『ピクミン』のシーン!)。そして、ナレーションとともに、宮本氏が登場すると、観客は総立ちのスタンディングオベーションで迎える。

宮本茂氏(以下、宮本) これまでパリはあまり縁がなかったのですが、最近は身近な存在になっていました。というのも2年ほど前にルーヴル美術館で3DSが公式ガイドに使われて、僕がその開発を担当していたので、そのために何度もパリに来ていたんです。じつは、昨年のJAPAN EXPOに来ようと思っていたんですが、昨年は中止になってしまって、申し訳ございません。でも、今年は来れました。去年は制作途中だった『スターフォックス ZERO』もほとんど完成したので、詳しい話ができますし、今年は『スーパーマリオ』が生まれて30年になるんですね。(観客から大きな歓声)ありがとうございます。そんな年にJAPAN EXPOに来れたのはすごいことだなと思っています。(このイベントを)皆さんで楽しみましょう。

 挨拶を終えると、作品紹介の前に宮本氏が軽く仕事への印象について話し始める。

宮本 日本に生まれて、京都に住んで、京都でずっと仕事をしてきました。それが、こうしてパリに来て、パリの皆さんにこんなに注目していただけるとは、想像もできませんでした。最近は、仕事の上でもよくグローバリゼーションとか、国際的な感覚を身につけてとか、勉強すれば役に立つという言いかたをする人も多いんですが、僕は実際に仕事をしてみて、勉強して国際的な感覚を身につけるよりも、自分のいちばん中にあるものを、世界中の心にそれぞれ届けるということ、いかに共感してもらえるかということがいちばん大事だと思うようになりました。今回は、僕らが考えているもの、考えてきたものを皆さんに届けられるように紹介したいと思います。お楽しみください。

 ここで流れたのは、Wii U用ソフト『スターフォックス ゼロ』のムービー。ムービーが終わると、会場から大きな拍手が贈られる。厳密には異なるのだが、ここでは“E3 2015”バージョンのムービーを参考用に配置させていただく。

宮本 スーパーファミコンでどうしてもポリゴンのゲームが作りたくて、それでスーパーFXチップという特別なチップをカートリッジに載せて、誰にでも遊べるシューティングゲームを作ろうとしたんですね。それが、『スターフォックス』の始まりです。そのシューティングゲームに合わせて主人公を作ろうということで、いろいろ考えたんですが、僕が子どものころから動物の擬人化の絵を描いていたので、任天堂のデザイナーといろいろな動物の擬人化を試しました。そのいろいろなイラストの中にキツネの絵があって、それがすごくいいなと思ったんですよね。シューティングゲームのパイロットにいいなと。そのキツネを中心にいろいろな仲間を作って、なんならパペットショーでもやろうかという感じに、動物を並べていきました。キツネがいいなと思った大きな理由があります。近くに伏見稲荷という神社があって。この神社のお使いがキツネなんですよ。『スターフォックス』は飛びながら何かを潜ったりしますよね。神社も鳥居がいくつもあって、このゲートを潜っていくイメージもピッタリだなと思って、『スターフォックス』というタイトルにしたんです。僕らの街には、“稲荷フォックス”という野球チームがあったり、キツネがすごく身近な存在なんですね。JAPAN EXPOの京都ブースにも鳥居の写真がありましたね。いま、外国人の観光客から人気ナンバーワンのスポットになったらしいんですよ。これ、『スターフォックス』が有名にしたわけじゃないんですけどね(笑)。

宮本 『スターフォックス』は、アクションアドベンチャータイプの『スターフォックスアドベンチャー』を作ってもらったり(『スターフォックスアドベンチャー』の開発はレア社が担当)と、いろいろと作ってきたんですが、今回は2画面で作るシステムを考えたんですね。上の画面を演出や全体を映すものにして、下のWii U GamePadの画面でコクピット視点を映して、全体を把握するために上の画面を見たり、コクピット画面で敵を狙ったりといった遊びを考えて試作していたところ、「これは『スターフォックス』にちょうどいいぞ」って思ったんですよ。この2画面の遊びは、ユーザーさんにとっても初めての体験になるので、わかりやすいほうがいいだろうと、『スターフォックス64』をベースに作っています。ただ、リメイクではなく、同じ地名や同じキャラクターは登場しますが、コースの内容などはすべて新しくしているので、新しい体験ができます。

宮本 タイトルについては、『スターフォックス64』をベースにしているので、『スターフォックス』でいう“6”とか“7”ではなく、“ゼロ”がふさわしいかなと思って、このタイトルにしました。“ゼロ”というのは、日本で作っているわけだから、絶対漢字にしようと思って、漢字の“零”をロゴに入れたんです。今回、シリーズとしては、『スターフォックス64』以来、久しぶりに自分がディレクターに近い立場でやっています。

宮本 今度はアーウィン(フォックスたちが乗る戦闘機)が、ウォーカーという歩行タイプのロボットに変形するんですね。以前、初代『スターフォックス』の発売後に、スーパーファミコンで“スターフォックス2”というゲームを作っていて、ほぼ完成していたんですが、どんどんまわりの技術が進化して、ハードウェアが新しくなっていたので、いまさらカートリッジにチップを積むのも古いだろうと、ペンディングにしていたんです。その“スターフォックス2”にウォーカーが出てきていたんです。このウォーカーを使うと、着陸して建物に入ったりと、いろいろな組み合わせの冒険ができるんです。アーウィンからの変形も、キレイに変わるんですよ。これ、いっしょに開発を担当しているプラチナゲームズがアートと合わせて全部作ってくれているんですが、彼らが、すごく苦労して、同じモデルできっちり変形するように作ってくれました(プラチナゲームズの名前に、観客から歓声が挙がる)。ウォーカーは、ダチョウなどの鳥のイメージですね。地上へ降りるときに、パタパタパタと羽ばたくんですよ。では、実際にゲームを見てもらいながら説明しましょうか。

 実機のゲームプレイに。このイベントでのROMは、試遊台などで出展されているバージョンではなく、オープニングから遊べる最新のバージョンを持ってきたとのことだ。

宮本 Wii U GamePadを使うと、演出が入っているときも周囲を見渡せるんですね。いま、これは飛び立つ前のオープニング部分ですが、仲間がまわりを飛んでいて、それぞれをロックオンすると、仲間たちのセリフが聞けます。そして、降り立つのはおなじみのコーネリアですが、新しくなっています。いままでの『スターフォックス』は飛んでいる方向にしか攻撃できませんでしたが、ジャイロを使うことで飛んでいない方向も狙えるようになりました。操作は2本のスティックを使って移動しながら加速したり、宙返りしたりできます。撃つのはRボタンだけなので、かなりシンプルに遊べるようになっています。あと、僕らがこだわったポイントとして、ふたつの画面、どちらも60fpsで動くようにしているんです。

宮本 このステージでは、本来はウォーカーに変形できないんですが、一度クリアーすると、本来は変形できないステージでもウォーカーに変身できるようになります。違う性能を持つ、新しいビークル(乗り物)で挑むと、同じステージでも新鮮な体験ができます。いま、横に扉がありましたよね。あれは、きっと分岐ができるんです。そして、いままた敵がふさいでいるので、横にそれようとしています。これで、ひとつのフェーズが終わりましたが、フェースは2、3個でひとつのステージになっています。

宮本 ここのフェーズ2では、オールレンジモード、360度飛び回れるステージになりますが、コクピット画面で敵をロックオンして狙っていきます。デモシーンが始まりました。ストライダーという歩行型の敵が登場してきますが、このデモシーンのあいだも、コクピット視点を使えば、操縦ができます。ストライダーが中央のタワーを上らないように防ぐのが目的になりますが、ストライダーを倒す方法はいろいろあって……。ここで、ウォーカーになりましょうか。パタパタパタって。ストライダーは頭が弱点なので、上空を飛びながら下を狙って撃つとか、ウォーカーで浮かびながら狙う必要があるんです。敵がタワーに上ってくると、ZRボタンで注目をすると、ラジコン操作のように狙いやすくなります。

宮本 フェーズ2が終わりまして、ボスが出てきます。『スターフォックス』のボスは前にいて、だいたい正面から撃ち合いをするんですが、今回は実際に動くボスに対して、裏側に回ったり、下側に回ったりと、立体的な攻めかたができます。撃ってくる弾をかわしながら攻撃するというのは、ふたつの画面だとやりやすくなっています。ミサイルを撃ってきたりするんですが、ミサイルが追いかけてくるのが自分で見えますからね。宙返りをして、GamePadの画面でミサイルを見たりできます(ボスを倒して、ゲームの実機プレイ終了)。

宮本 このゲームはふたつの画面を使い分ける戦略を見つけるのが楽しいので、基本的にはふたつの画面を使うんですね。ですが、GamePadのマイナスボタンを押すと、テレビの画面にコクピット画面を映し出せるので、ゲームが把握できたら、大画面をコクピットにして、コクピット画面だけで遊ぶということもできます。

宮本 ちょっと新しい部分を見せます。ランドマスターという戦車タイプのビークルがありますが、映像にあったように、今回がランドマスターも変形して、フライングタンクになります。そのランドマスターで遊ぶタイタニアというステージも新しくなっていますので、見てください。

 ランドマスターが砂漠のステージで進む映像が映し出される。巨大な岩のようなオブジェがつぎつぎと飛来してくるので、それを避けながら進んでいく。蛇のようなボスが登場し、花弁を開くように頭が割れると、中央から赤いレーザーがランドマスターへ向かう。ランドマスターはレーザーにつかまり、釣り上げられるような状態に。

宮本 このボスは、プラチナゲームズがデザインした新しいボスです。これは、飛んでいるんじゃなく、釣り上げられているんですね。自分が釣り上げられていてもコクピットでは敵が見えるので、そこで攻略します。こういうシネマティックなシーンと、実際に自分が入って遊ぶシーンが盛りだくさんになっています。

宮本 いくつかのビークルがあって、ひとつのステージを複数のビークルで遊ぶ仕組みなんですが……。新しいビークルを見てみましょう。ジャイロウイングという、ヘリコプタータイプのビークルですね。ふたつの画面を使って遊んでいると、高いところに上って、GamePadの画面で地上を見たりと、ゆっくり進みながら景色が見られます。これは変形はしませんが、お腹からダイレクトアイというロボットが出てきます。ダイレクトアイでまわりを見渡して、狭いところに入ったりできるんです。ファミコンロボットに似ていますね(笑)。ダイレクトアイでコンピューターにアクセスして、いろいろできるんです。サーチライトを止めたり、ジャイロウイングに荷物をぶら下げて敵の上から落としたりできます。ジャイロウイングから垂れているケーブルの範囲内をウロウロできるんです。ダイレクトアイを下ろして上を見ると、飛んでいるジャイロウイングが見えて、ちょっと怖いという(笑)。こういうゆっくりした、探索型のステージが好きな人もいると思うので、そういう方も楽しんでもらえると思います。

●数々のサンプルステージが公開された『スーパーマリオメーカー』

 『スターフォックス ゼロ』のプレゼンテーションが終わり、『スーパーマリオメーカー』の映像とともに、手塚卓志氏の仕事をしている様子などが映し出される。そして、映像が終わると、事前予告なしのサプライズで、手塚卓志氏が登壇。まさかの展開に、またまたスタンディングオベーションによる大きな大きな歓声で迎えられる。ふたりが着席して、『スーパーマリオメーカー』のトークの前に、手塚氏について宮本氏が説明を始める。

宮本 もう、30年以上いっしょに仕事しているんですが、僕が最初に採用したデザイナーの部下なんです。入社したころは、もっとルイージのような……(と、手塚氏の体型を見る)いまは立派になりましたけどね(笑)。『エキサイトバイク』のころからいっしょに仕事をして、『スーパーマリオブラザーズ』のデザインを手伝ってくれて、『スーパーマリオブラザーズ3』からディレクターをやってくれました。『スーパーマリオワールド』まで作ったあたりから、立派な身体に合わせて、プロデューサーになって、『ヨッシー』シリーズや、『Newスーパーマリオ』シリーズを作ってくれています。30年いっしょに仕事して、お昼と夜のご飯はいっしょに食べているので、家族よりいっしょにご飯を食べているかもしれない。僕も、同じご飯を食べているんですけどねー(と、手塚氏のお腹を見る)。

宮本 面接ですか? デザイナーが欲しいと思って募集したんですが、みんなたいてい「任天堂でゲームが作りたいです」って来るんです。でも、この人(手塚氏)は違ったんですよ。任天堂でもいいし、子ども服のメーカーでもいいって。いつもアイデアやデザインの力を見るのに、僕は入社面接で4コママンガをみんなに描いてもらうんです。30分くらいの制限時間で。起承転結といって、プロローグがあって、びっくりすることなどがあって、オチがある……という流れで描くんですが、手塚さんが描いたのが、おじいさんのヒゲがただ伸びていくっていうやつなんですね。「どうなるのかな?」と思ったら、最後までヒゲ伸びるだけでおもしろくもなんともない(笑)。「ちょっとおかしな人かな?」と思って採用しました(笑)。

 宮本氏による、手塚氏の入社という、かなりレアなエピソードが明かされた後は、手塚氏が『スーパーマリオメーカー』の開発の経緯について話を始める。

手塚卓志氏(以下、手塚) 私が所属する部署はゲームを作るだけじゃなく、ツールを作る人がいるんですよ。いろいろな国に向けてローカライズをするためのツールとか、我々がすごく助かるものをいっぱい作ってくれているんです。それで、彼らがつぎの『マリオ』を作るために役立つだろうと、Wii U GamePadを使ったエディターを試作していたんです。当然ながら、これまで彼らは『マリオ』のレベルデザインなんてしたことなかったんですが、自分たちで試してみたらとても楽しかったらしいんですね。それで、彼らから「これは商品になるんじゃないか」という提案がきて。最初は、ツールだしこれだけで売れるのか、いいものになるのかと、自分でもいいアイデアが浮かばなかった。でも、以前からGamePadを使った『マリオペイント』のような遊びが作れないかと考えていたことがあって。『マリオペイント』は自分では高級なおもちゃだと思っているんですね。あのソフトがあれば、自分たちで好きなようにいろいろ作り出せる。それで、この『スーパーマリオメーカー』はコースを作るソフトなんですが、遊ぶ人たちが自分たちで発想して自由におもしろいコースを作れれば商品になるんじゃないかと思ったんです。だから、ただコースを作れるだけでなく、敵を2段3段4段と高く積み上げたり、ノコノコに翼の生えたパタパタがいますが、そういう翼をほかの敵にも生やして飛ばせたりと、発想次第でいろいろなことができるようにしたんです。

宮本 最初は『マリオペイント』の一部みたいに作っていたんですが、これもできるようにしよう、あれもできるようにしようと、作っている人たちがいろいろ工夫をできるようにすると。そのうち、このソフトそのものが、『マリオペイント』になるんじゃないかという雰囲気になってきたんだよね。

手塚 そうそう。だから、皆さんが手に取ったら、いろいろ試したくなると思うので、ぜひ試してください。コースの作りかたは自由で、人それぞれでいいんですが、我々が作るならこういうものというサンプルを、今回持ってきました。だいたいテーマを決めて作るんですが、今回のテーマは、謎解きのようなものを2画面分のステージで作ろうと。

 と、ここでサンプルのステージが紹介されたのだが、写真がないと、なかなか伝わりづらいため、申し訳ないが、詳細は割愛させていただく。簡単に説明すると、ゴールの前には壁があり、通れない状態。その前に、“Pスイッチ”があるので、このスイッチを押せば、壁がコインに代わり、ゴールができるというもの。しかし、スイッチのまわりにも壁があるため、スイッチの下部にある“?ブロック”に甲羅を当てて、“?ブロック”内に仕込まれたジャンプ台を出現させると、その反動で“Pスイッチ”がブロックから飛び出て押せるようになる……というものだった。

 また、もうひとつのサンプルステージも紹介された。こちらも詳細は割愛させていただくが、「伏見稲荷を連想させるもの」(手塚氏)と語るように、鳥居のようにブロックが配置されたステージで、お寺のような形に積み上げられたブロックもある。ところどころに大砲が配置されており、こちらは謎解きではなく、アクションで潜り抜けるようなステージだった。ちなみに、これに手塚氏がチャレンジしたところ、あえなく途中でやられてしまうが(「ゲーム開発者がゲームが上手とは限らないんですよ」とは手塚氏の弁)、ここからが『スーパーマリオメーカー』の真骨頂。すでに作られたステージをエディットで、いろいろとイジり始める。

 そこで、お客さんに何を配置したいかを聞くことに。すると、圧倒的な歓声でクッパを配置することに。しかも、手塚氏はクッパを3匹連続で配置し、さらには、そのうちの1匹にキノコを与え、大きな“スーパークッパ”にしてしまった。救済策(?)として、鳥居の近くに3つほどファイアーフラワーを配置して挑んでみるも、クッパの炎が鳥居のブロックを破壊し始める猛攻にあえなく敗退。その後、『スーパーマリオブラザーズ3』や『スーパーマリオワールド』、『New スーパーマリオブラザーズ U』のスキンに変えたり、水中のステージにしたりと、いろいろ変えて、変化を見せていた。ちなみに、実際にプレイをしてやられてしまった後に、ステージエディットモードに移行すると、その直前のマリオの挙動が残像になって表示される。これは、「マリオの軌跡に合わせて、ものを置いたりしやすいようにしているんです」(手塚氏)とのことで、紙一重のジャンプでわたっていくステージなどを作りたいときに、ジャンプの残像に合わせてブロックを配置するといったことができるようだ。

 続いて、宮本さんがJAPAN EXPO用に作ったというステージを紹介。ラインに合わせて動く足場などを使って、COOLという文字を作ったり、凱旋門やエッフェル塔型のブロックが配置されているステージ。このステージには、司会の方が挑戦した。“?ブロック”を叩き、キノコを取って、スーパーマリオに変身……と思いきや、まさかのピーチ姫の姿に。『スーパーマリオメーカー』は、amiiboに対応しており、たとえばピーチ姫のamiiboを使えば、キノコを取ってピーチ姫の姿に変身できるのだ(能力は変わらない模様)。これまでに、ルイージ、キノピオ、ヨッシー、リンク、マルス、しずえ、Wii Fitトレーナーなどの姿が公開されていたが、手塚氏いわく「発売されているamiiboには対応する予定です」とのことで、具体的にどこまで対応するのかはわからないが、“大乱闘スマッシュブラザーズ”シリーズのamiiboだけでもかなりの数があるほか、任天堂作品以外のキャラクターも登場しているだけに、どこまで対応しているのかが楽しみだ。

 宮本氏のステージの後、VTRで登場したのは、『レイマン』シリーズなどで知られるMichel Ancel氏。Ancel氏は、このJAPAN EXPOのために、『スーパーマリオメーカー』でステージを作っており、それに手塚氏と宮本氏がチャレンジするというものだ。Anchel氏が作ったステージのテーマは、“パックマリオ”。ステージにはあちこちにテレサがいて、ブロックで挟むように作られた道には、コインが敷き詰められており、四つ角にはスターの入った“?ブロック”が配置されている。ステージのテーマと、このステージ描写でおわかりだろうか。そう、これは『パックマン』をモチーフにしたステージ。ゴールはすぐに見えているものの、テレサにやられないようにすべてのコインを取らなくてはいけないのだ。手塚氏、宮本氏が交互にプレイし、大量に出てくるテレサに道をふさがれつつも、パワーエサならぬ、スターを取ってテレサたちをつぎつぎと倒していく。とくに宮本氏がいいところまで行くものの、すべてのスターを使いきってしまい、テレサにやられてしまうのだった。

 『スーパーマリオメーカー』の紹介後、手塚氏から『スーパーマリオメーカー』のブックレットの紹介が行われた(『スーパーマリオメーカー』のパッケージ版に同梱。ブックレット単体の発売予定もあり)。こちらは、再び手塚氏のお言葉を引用して紹介させていただく。

手塚 我々がこのゲームの開発と並行して力を入れていたものがあるんです。それは、『スーパーマリオメーカー』専用の本を作ったんです。作った理由がふたつあります。『スーパーマリオメーカー』は、自分で考えて発見を楽しむ遊びなんですが、ゼロから考えることに慣れていない人もいると思うんです。そういうときには、コースを作るためのきっかけがあったほうが楽しいですし、その助けになるためにこの本を作りました。この本と連動して、本に写っている写真やページにまつわるムービーが再生されるんです。写真などの側に4桁のコードがあるので、それを入力すると写真にまつわるムービーが再生されます。この中には、レベルデザインのヒントがたくさん入っています。

手塚 もうひとつの理由が、いつも私はゲームを作るときに、遊んだ人の記憶に残るものを作りたいと思うんです。できるだけ、そのゲームを夢中になって遊んでほしい。それで、この本にはいろいろなビジュアルや、絵本のような楽しいページがたくさん入っていたりします・敵の動きがラインで表示されて参考になるものや、過去の30年前に使っていたコースを作っていたころの資料もあります。当時は、オリジナルの方眼紙にコースをレイアウトして描いて、それをプログラマーさんに渡して入力してもらっていたんです。

宮本 だから、一日一回しか直せなかったんだよね。遊べるのはつぎの日だった。

手塚 ほかにも、遊び心のある隠しムービーも入っています。

 ここで、『スーパーマリオメーカー』のコースを紹介する映像が流れる。すごいコースの連続に、見た目だけで、観客から感嘆の声が漏れる。

手塚 今年、『スーパーマリオ』の30周年を記念して、皆さんから『スーパーマリオ』に関するビデオを募集しています。見ていて楽しいんですが、もっともっと応募してほしいので、サンプルをお見せしますね。マリオやピーチの格好をして踊るもの、演奏をするもの、“30UP”という文字と“1UPキノコ”が書かれたケーキを映したものなど、さまざまな映像が公開される。これらの映像は、“Let's Super Mario”のサイト(→コチラ)でも公開されているので、ぜひ見ていただき、参加してほしい。

●宮本氏ができるだけ監修せず、新たな世代が生み出した『スプラトゥーン』

 続いて行われたのは、Nintendo of Europeが、Twitterで募集したユーザーの質問に答えるコーナー。宮本氏、手塚氏が、ユーザーの質問に直接答えるのは、なかなかない非常にレアなケースではないだろうか。なお、質問自体はフランス語だったため、翻訳などに怪しい部分があるが、宮本氏たちの回答は日本語だったため、そちらを重視してお読みいただきたい

・質問:『スーパーマリオ』シリーズの敵が亀になった経緯は?


宮本 僕らがゲームを、どんな遊びを作るか考えながら、キャラクターを作るんですね。『マリオブラザーズ』を作るときに、「下から叩いてひっくり返って困るやつは誰か?」と考えて、亀しかいないと。それで、『スーパーマリオ』のときには、亀は上から踏めないとおかしいよねという話になったんです。

手塚 亀を蹴っ飛ばしてそれを追いかけたとき、画面の外にある土管に当たって跳ね返ってきてやられちゃうんですよね。それを見て、「おもしろい」って言う人と、「ダメだ」って言う人がいて、意見が分かれたんです。でも、あれは採用してよかったですね。

宮本 それで、亀ならとことん亀でいこうという話になったんです。「飛んでいるやつは羽付ければええやん」という感じで。それで最後はでっかい亀が出てくるということで、クッパを作ったんですね。僕らがここにいるのは、亀のおかげですね。

・質問:ゲームを作る環境は、以前と現在とでどっちがいいですか?


手塚 いまよりずっとずっとチームがコンパクトで、制作の規模も小さくて、どんどん作っていけたんですね。いまはチームの人数も大きいし、豪華なものを作らないといけない。でも、そういうことでツールチームができて、『スーパーマリオメーカー』ができるきっかけができて、いまはいまですごくいいと思います。

宮本 昔は、5人か6人で半年で1本作っていましたからね。このころ、『スーパーマリオ』と『ゼルダの伝説』をいっしょに作っていて、どっちかに絞らないと仕上げられないということで、いったん『ゼルダ』をやめて、『スーパーマリオ』を作り終わったつぎの日から『ゼルダ』を作ったんです(笑)。けど、そのころはゲームデザインという仕事がはっきりなくて、こういうことがずっと自分の専門にできるかわからなかったんですよ。いまは、ゲームデザインという仕事がはっきりあるのはうれしいことですね。  

・質問:『スーパーマリオサンシャイン』の開発秘話


宮本 『スーパーマリオ64』の時点で、ポリゴンで大きな3D空間を自由に動き回るというゲームを作り始めたんですね。そのときいっしょにやっていた、『ゼルダの伝説』シリーズを作っていた小泉さん(小泉歓晃氏)というディレクターがいるんですけど、彼に「新しいことをやろう」と話して作ったのが『スーパーマリオサンシャイン』です。いま、彼とは『スーパーマリオギャラクシー』とか『スーパーマリオ 3Dワールド』とかをいっしょに作っているんですけどね。それで、ゲームキューブのときに、このゲーム機はすごい力があるぞと、水鉄砲でバーっと地面に水を撒くテストをしたんですよ。マリオに物を持たせていいのかと、マリオはグローブ以外装備していいのかと、みんなで話しながら作っていました。けど、偶然なんですけど、この水を撒くとか、いまみんなが遊んでくださっている『スプラトゥーン』につながっていて、本当に偶然で関係ないんですが、任天堂にそういう血が流れているのかなと思いました。

 そして、この『スプラトゥーン』の話題から、『スプラトゥーン』のディレクター・阪口翼氏が、“シオカラ節”をBGMにサプライズ出演。三度スタンディングオベーションの大歓声で迎えられるなか、『スプラトゥーン』のブキを彷彿させるカラーリングの水鉄砲を持ち、ステージ中央まで小走りに出てくると、水鉄砲で観客に霧状の水をまいていく。

阪口翼氏(以下、阪口) 今日は、JAPAN EXPOで『スプラトゥーン』のトーナメントが行われていて、その優勝者に賞品を持ってきました。ここで、フランス1のプレイヤーが決まるので、僕が直接対決しようと思います。もし、僕に勝てたらもっとすばらしいものをあげます(笑)。今日、地球でいちばん盛り上がっているのがJAPAN EXPOだと思うんですが、明日からスプラットフェスト(日本版のフェス)というふたつのチームに分かれて対決する、お祭りのようなイベントがあって、それもJAPAN EXPOに負けないくらい盛り上がると思います! 僕らはすごいお祭りが好きなので、こういう仕組みを入れました。だから、お祭り騒ぎであるJAPAN EXPOに参加したくて、こっそり宮本さんのスーツケースに隠れて来ました(笑)。

宮本 どうりで重いと(笑)。 

阪口 帰りはおみやげで埋まると思うので、泳いで帰ります! (司会からの「今回のフランスのフェスのお題“ロック派? ポップ派?”はどっち派なんですか?」という問いに)ああ、僕はロック派ですね。

宮本 僕、フォーク派です(笑)。

 フェスについてのやり取りを挟み、司会者から宮本氏、手塚氏から阪口氏への印象が聞かれる。

宮本 僕ら同じグループで同じ部屋で仕事をしているんですが、今回はできるだけ関わらないように任せていたんですね。それでこれだけ遊べるものが出てきたので、これから楽になるなと思います。

阪口 いやー、でも、宮本さんも手塚さんもあまり何も言わないんですが、僕らはすごいプレッシャーなんですよ。

 という、これからの任天堂を担う、宮本氏から後輩の開発者へ受け継がれる血を感じさせたところで、イベントは終了。『スプラトゥーン』のBGMが流れ出し、宮本氏、手塚氏、阪口氏の3人がステージ中央のせり出したところに向かうと、会場中のファンがそこへ集結。ライブハウスのような密集したエリアとなり、『スプラトゥーン』のBGMとともにものすごい盛り上がりを見せる。すると、阪口氏が持ってきた水鉄砲を、今度は宮本氏が持って、観客に向かって撃ち始め、観客はさらに大興奮。さらなる盛り上がりを見せる中、宮本氏、手塚氏、阪口氏は、手を振りながら退場し、イベントは幕を閉じたのだった。

 新作の話に加え、サプライズの2名ものゲスト出演、宮本氏と手塚氏の関係、そして阪口氏ら、『スプラトゥーン』チームへの宮本氏の感想など、なかなか、日本のイベントなどでは見られない、海外ならではのレアな内容が盛りだくさんのイベントになっていた。こういったイベントを日本でもぜひやってほしいものだが、実現するかどうか。首を長くして待っていたい。