日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の IPO(新規上場)で日経平均株価は下落する? イベント投資の達人が大型IPO前後の動きを分析! | ニコニコニュース

ザイ・オンライン

2015年内にも日本郵政グループ3社が新規上場。
売り出し規模1兆~2兆の超大型IPOに!

 日本郵政グループ3社の新規上場(IPO)が、いよいよ2015年の秋から冬にかけて行われる見込みだ。正式な日程は未定だが、6月30日には東京証券取引所に対して本申請が行われる予定となっている。

 新たに株式上場するのは、「日本郵政」とその子会社である「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命保険」の3社。売り出し規模はまだ明らかになっていないが、初回だけで1兆~2兆円に達すると見られる。間違いなく、1987年2月上場のNTTや1998年10月上場のNTTドコモ以来の超大型IPOとなるだろう。

 ちなみに、日本郵政株売り出しの主幹事証券会社はすでに発表されており、大和証券、野村證券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券、ゴールドマン・サックス証券、シティグループ証券、JPモルガン証券、UBS証券、岡三証券、東海東京証券の計11社となっている。

 日本郵政の新規公開株を購入したい人は、これら11社の証券会社か、そのグループに属する証券会社に口座を開設するといいだろう。その中で、口座開設が容易なネット証券は、次の4つだ。

●カブドットコム証券(三菱UFJフィナンシャル・グループ)
●SMBC日興証券
●岡三オンライン証券(岡三証券グループ)
●東海東京証券
(※クリックで公式サイトへ)

 今回のIPOに関する正式な情報はまだ公表されていないが、本気で新規公開株の購入を狙うなら、いざとなって慌てないように今のうちから口座開設しておくといいだろう。

日本郵政グループ3社の株価だけではなく、
日経平均株価の変動も要注目!

 今回のような超大型IPOで気になるので、IPO後の日本郵政グループ3社の値動きだけでなく、その前後における株式市場全体の値動きだ。これだけ大規模なIPOともなると、株式市場の需給が悪化し、一時的に相場が下振れすることも十分に考えられる

 しかし、「そんな状況こそ儲けのチャンス」と言うのが、イベント投資の達人・夕凪さんだ。

「NTTやJR東日本など、過去に行われた大型新規上場における株式市場の値動きを分析した結果、株価に一定の傾向が見つかれば、今回の日本郵政グループの上場でも同じような値動きをする可能性が高い。そこが狙い目です」

 そこで、ザイ・オンライン編集部では、夕凪さんに過去の大型IPOにおける値動きの分析・検証を依頼。そこから見えてきたアノマリーを解説してもらった。

 いささか気が早いと考える人もいるかと思うが、株式公開の日程が発表になったらすぐにでも日経平均株価が動き出す可能性もある。個人投資家といえども、今のうちから戦略を立てておくに越したことはないだろう。

NTT、JR東日本から、第一生命、日本航空まで、
過去の大型上場6銘柄のデータを検証

 今回の検証にあたり、夕凪さんが立てた仮説は次のとおり。

大型上場があるとそこに資金を移す必要があるので、日経平均株価など指数に影響が出る

 日本郵政グループ3社のような売り出し規模の大きいIPOがあると、株式市場から大量の資金が吸い上げられる。個人投資家はともかく、多くの機関投資家やファンドは日本郵政グループ3社の株を一定数保有しなければならず、その資金調達のために保有銘柄の一部を売却することになる。当然、株式市場の需給は悪化し、相場の下落につながるということだ。

 そこで夕凪さんは、

(1)過去の大型IPOの上場日前後で、日経平均株価がどう推移したのか

(2)過去の大型IPO銘柄の株価は、上場後どう推移したのか

の2点を検証した。

 検証に使用したのは、NTTやJR東日本など、過去に売り出し規模が大きかった次の6銘柄だ。

■過去に行われた大型IPOの6銘柄社名(銘柄コード)
※クリックでチャートへ上場日公募価格公募総数吸収金額NTT(9432)1987年2月9日119万7000円185万株2兆2145億円NTTドコモ(9437)1989年10月22日390万円54万5000株2兆1255億円JR東日本(9020)1993年10月26日38万円250万株9500億円JT(2914)1994年10月27日143万8000円39万4276株5670億円第一生命(8750)2010年4月1日14万円931万9070株7131億円(※)日本航空(9201)2012年9月19日3790円1億7500万株6633億円※1 売り先指定の211万2900株は除いて計算

 表内の「吸収金額」というのは「IPOにより株式市場から吸収される金額」のことで、「売り出し規模」と言い換えてもいいだろう。この吸収規模が大きいほど、IPOとしての規模が大きく、株式市場への影響度も高い。

 なお、日本郵政グループの株式上場では、3社とも初回に全株の10%程度、総額1~2兆円規模の売り出しになると見込まれている。

 通常、全株式の35%以上を市場に流通させるのが東京証券取引所の原則ルールとなっているが、日本郵政グループで一度にそれだけの規模を売りだすと株式市場への影響があまりに大きいため、今回は株式市場での円滑消化のために特例措置を求めていくと見られている。とはいえ、1~2兆円というのが東京証券取引所の1日の売買代金とほぼ同じ規模だと考えると、かなりのボリュームなのは間違いない。

大型IPOによる株式市場の需給の悪化は、
上場後により大きな影響が出る

 では、いよいよ検証だが、まずは大型IPO前後における日経平均株価の値動きを見ていこう。

日本郵政の上場によって、日経平均株価は本当に下落するのか?

「まず、過去の大型IPO6銘柄の上場日前後における日経平均株価の推移をまとめたのが、下のグラフ1です。各銘柄の上場日の終値を基準として、その前後60営業日の日経平均株価の騰落率を示しています」

 NTTが上場したときは、上場日の前後で日経平均株価が右肩上がりで上昇しているのが非常に目立つが、これはIPOが1987年2月とバブル経済真っ只中という特殊な状況に行われたことも大きいだろう。しかし、その他の銘柄は値動きが入り組んでいて、ここからアノマリーを見つけ出すのは難しい。

「このグラフでは全体の傾向がわかりにくいので、それぞれの日経平均株価の推移を平均化したのが、次のグラフ2です。6銘柄の上場時のデータを平均化したものと、化け物のような値動きをしたNTTを除いた5銘柄の上場時のデータを平均化したものの2つをプロットしています。今の時代にも通用する『大型IPOのアノマリー』を検証するには、NTTを除外したデータで考えたほうがいいのではないかと思います」

「たった5~6銘柄の平均なので荒っぽいまとめではありますが、ある程度の傾向が見て取れます。まず、上場前は60営業日前から40営業日前まで下げていますが、上場日にはある程度戻しています。これは、『IPOにより資金が吸収され、株価の下げるのではないか?』という恐れから下げたものの、実際の影響が大したものではなく買い戻されたのではないかと推測できます」

 より重要なのは、株式上場後の値動きだと夕凪さんは分析する。

上場直後から約40営業日後にかけて、一度戻した日経平均株価が再び下げていきますが、こちらのほうはインデックス組み入れにともなう本当の需給の下げではないかと思われます」

 主要インデックスのうち、日経平均株価(日経225)には株式上場後、数年経たないと採用されないが、TOPIXへは上場日翌月末には組み入れられる。このTOPIXへの組入れが、約40営業日後だったのだろう。さらに、主に海外のファンドがベンチマークとしているMSCIとFTSEの構成銘柄にも早々に採用される可能性が高い、と夕凪さんは言う。

「MSCIは『アーリー・インクルージョン』、FTSEは『ファスト・エントリー』というルールを適用します。どちらも、市場に影響力がある銘柄は定期採用日を待たず、株式上場後、早期に採用をして指数に組み込むというスペシャルルールです。2014年10月に株式上場したリクルート(吸収価格2138億円)の場合は、上場日を入れて10営業日目にMSCIへ、5営業日目にFTSEへ組み込まれました」

 とはいえ、実際にMSCIとFTSEに採用されるかどうかは、通常なら上場日当日の夜に発表されるが、場合によっては組み入れが見送られる可能性もある、と夕凪さんは言う。。

「今回の日本郵政グループ3社の場合、当面の間は政府が過半数の株を握ったままとなるので、MSCIとFTSEも『今回は組み入れなし』などなんらかのスペシャル対応をする可能性もあります。上場日にどんな発表がされるのか、要注目ですね」

 これでもしMSCIとFTSEで採用が発表されたら、相場の需給が悪化させる圧力がより高まる可能性は高い。

大型IPO銘柄そのものの値動きを見ると、
近年上場した2銘柄の株価推移が酷似

 では、次に大型IPO銘柄自体が上場後の初値をつけた後、どのように株価が推移したのかを検証しよう。ここからは、検証データの中からNTTを除いている。NTTの値動きは特殊ケースなので、今回の比較対象としては適切ではないと考えたからだ。

上昇する日本郵政を売買するなら、TOPIX組み入れのタイミングがターニングポイントに

 まず、各IPO銘柄の株価推移をプロットしたのが、次のグラフ3だ。それぞれ初値からの騰落率をプロットしている。

 しかし、このグラフでは市場全体の影響が含まれるため、IPO銘柄そのものの値動きを判断するには不適当だ。そこで、各IPO銘柄の騰落率から日経平均株価の騰落率を引くことで、市場の影響を差し引いたグラフ4を作成した。

 バブル最終期にかかっているNTTドコモを除くと、総じて値動きは良くない。上場後70営業日後には、NTTドコモ以外はすべて10~18%程度下落している。

「興味深いのは、近年の大型IPOである日本航空と第一生命の値動きがそっくりなことです。どちらも上場後、40営業日程度は上昇していますが、それ以降は急落しています。これは先ほど説明したように、FTSE⇒MSCI⇒TOPIXの順に買っていかなければならず、さらにそれに合わせて先回り買いする投資家たちが出たりするので、なかなか株価が落ちないのです。そして、上場日翌月末にTOPIXに組み入れられた後は需要が下がり、値崩れするということでしょう」

日経平均に影響はあるものの不確定要素は多いので、
狙い目は上昇する日本郵政グループ3社

 以上の結果から、夕凪さんが導き出したのは次の2つのアノマリーだ。

【アノマリー・その1】
大型IPOの上場前の換金需要はそれほど市場に影響を与えないので、恐れることはない。警戒すべきは上場直後からTOPIX組み入れまでで、その間、換金需要により日経平均株価は下落する。

【アノマリー・その2】
近年の大型IPO銘柄は、上場後TOPIX組み入れまでは堅調だが、その後は急落する。

 さらに、「これらのアノマリーを踏まえ、夕凪さんであればどのように狙っていくのか?」を聞くと、次のような答えが返ってきた。

●全体相場について

「日本郵政グループ3社の上場前に日経平均株価が下げるかもしれませんが、どうせ戻るので追従する必要はありません。重要なのは上場後の下げに対する警戒です。大型株の買いポジションを落としたり、空売りでヘッジしたりするといいでしょう。とはいえ、相場全体の値動きは、日本郵政グループ上場だけでなく他に多くの要因が絡んでいるので、そこまで狙いに行かなくてもいいと思います」

●日本郵政グループ3社について

「上場日翌月末にあるTOPIXのリバランスまでは、値持ちすることを期待して買い増しスタンスで。逆張りが得意なら押し目で買い、順張りが得意なら新高値をつけたタイミングで買うといいでしょう。特に、上場日の夜にMSCIとFTSEへの採用が発表されたら、よりこの傾向が強く出るはずです。そして、TOPIXリバランス以降はいさぎよく手放すこと。松井証券の「プレミアム空売り」などの一般信用で空売り可能なら、それを試すのもアリです。個人的には、全体相場で狙っていくよりも、こちらの個別で狙っていくほうが勝てる可能性は高いと思います」

 これら夕凪さんの分析は、あくまでも過去のデータを検証した結果出てきた傾向であって、不確定な要素も多い。しかし、投資判断を助けるひとつのアノマリーとしては、十分に参考になるだろう。

「今回の分析は、検証データ数が6銘柄とけっして十分な数ではありません。また、NTTと第一生命以外は秋のIPOであり、アノマリー的に株価が急落しやすい10月、11月を通過しているため、日経平均株価に季節性の影響が出た可能性もあります。それでも、MSCIやTOPIXといったインデックス組み入れのタイミングなどと合わせて考え、分析することで、それなりに説得力のある内容になったと思います」

 日本郵政グループ3社の株式上場は、売り出し規模1兆~2兆円の大型IPOという、めったにない大イベントだ。新規公開株はもちろん、この相場変動の可能性をチャンスととらえ、今回のアノマリーを参考に狙ってみるのも面白いのではないだろうか。

【日本郵政の新規公開株を狙うなら、この証券会社!】
●カブドットコム証券(三菱UFJフィナンシャル・グループ)
●SMBC日興証券
●岡三オンライン証券(岡三証券グループ)●東海東京証券
(※クリックで公式サイトへ)

夕凪さん
(公式サイト:http://www.geocities.jp/yuunagi_dan/)

株式投資歴17年の個人投資家で、イベント投資の達人。これまでに「日経平均の入れ替えを狙う」「公募増資を狙う」「TOBを狙う」「四季報発売の時期を狙う」といった独自の投資法を開発し、資産を増やしている。現在、日本証券新聞で定期コラム「夕凪所長のイベント投資100%」を執筆。主な著作は『スタバ株は1月に買え!:10万円で始めるイベント投資入門』(東洋経済新報社)。

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