クモは風の力を借りて、水の上を帆走する

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いやークモなめてました。

みなさんいろんな理由でクモをお嫌いになっているかと思うんですが、最近の研究によってクモのナチュラル忍者っぷりが発見されたんです。先日明らかになったクモの忍術は水の上を渡るっていう本物の忍者も苦戦する荒技。

足を高く持ち上げることで風を受け止め、それを推進力に水面を移動し、止まりたくなった時に糸を水面にひっかけてブレーキをかけることが判明しました。

この研究はBMC Evolutionary Biologyにおいて発表されたんですが、これによってクモがどうやって長距離を移動して新しい土地へと進出してきたのかが、少し明らかになりました。というのも、科学者たちの間ではクモが糸を使って空を飛ぶことは知られていたんです。

あ、そうそうクモって空も飛ぶんですよ。知ってましたか?で、今回は水の上を航海することも分かったんです。

空を飛ぶ時は糸が風をキャッチして浮くわけです。好条件の下だとなんと1日30キロほど移動することもできるんですが、いつも成功するとは限らないので結構なリスクがある移動手段です。

この研究のリーダーであるロンドン自然史博物館のモリト・ハヤシさんはこう言います。

ダーウィンすら、海岸から何マイルの離れた沖を航海しているビーグル号に何回も落ちて来る空飛ぶクモというのを記録しています。でもクモが陸生であり、空を飛ぶ時は全く方向のコントロールがきかないことを考えると、なんで進化の結果こんなリスクの高い行動が維持されてきたんでしょうか?

そこで研究者たちは糸を使って空を飛ぶ「バルーニング」と言われるこのクモの行動だけが全てではないと疑いました。クモが水面に降り立ったときに何が起きるのかを調べるため、21種類の異なったクモを325匹集めました。研究所でクモを水の張ったトレイの上に置き、突風をシミュレーションするために空気パンプで風を吹き付けたそうです。

クモの足というのは水を弾く力が非常に強いため、全てのクモが水の上に立つことができ、また325匹のうち201匹のクモが水上の「航海」に成功したそうです。その多くは足を空中に整然と広げることで風を受け止めていたとのこと。

これで私たちが分かったのはクモが自ら積極的に体勢を変えることで風の方向を利用し、自分たちの水面移動をコントロールできるということです。止まりたくなれば糸を水面に落として止まります。この能力は、コントロールできない空中飛行の後、間違って水面に降りてしまう危険性をうまく補完しています。

またクモの糸は水面に浮いている物へとたぐり寄せて無事に陸にたどり着くための命綱としても使われるそうです。空を飛ぶクモはまた水面移動も上手いことから、この二つの行動は平行して進化してきたのではないかと研究者たちは考えています。

空気も水も障害としないこのナチュラル忍者たちが、世界中に広まったのは想像に容易いですね。ちょっとクモを見る目が変わりました。


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Source : BMC Evolutionary Biology

Maddie Stone - Gizmodo US [原文]
(塚本 紺)