なんで『特地』に派遣される部隊は全部旧式の装備なのか? 現役陸上自衛官に聞く『GATE』のリアルさ | ニコニコニュース

『GATE』アニメ公式HPより
おたぽる

「自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」と、なんだか永田町の議論を先取りしたような物騒なタイトルのアニメが、7月3日からオンエアされた。『GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』である。

 20××年8月、東京・銀座に突如現れた「門」(ゲート)から、モンスターや中世の騎士のような軍勢が出現し、多くの市民を殺傷した「銀座事件」が起こった。現場に居合わせたの年季が入ったオタクの伊丹耀司3等陸尉は、「このままだと夏の同人誌即売会が中止になってしまう!」と、陸上自衛官の義務感からではなく、オタクとしての不純な動機で、一般市民を皇居に誘導して、数千人の命を救う。

 この事件で英雄となった伊丹は、2等陸尉に特別昇任。政府は、「門」の先に存在する異世界「特別地域」(特地)の調査のために、陸上自衛隊を派遣、伊丹も異世界戦闘用に開発された「戦闘服四型」に身を包み、偵察隊長として「門」に足を踏み入れる。そこで、伊丹たち自衛官が見た世界とは......。

 こんなストーリーで始めまる『ゲート』は、ミリオタからファンタジー好きまで、満足できる作品だ。それもそのはず、『ゲート』の作者である柳内たくみは元自衛官だし、アニメ化にあたっては、首都防衛師団である陸上自衛隊第1師団(練馬駐屯地)などが全面協力しているのだ。

 アニメに登場する74式戦車や高機動車、64式小銃などの兵器は、外見だけではなく、内部や作動状態などが細かく描かれており、ミリオタを納得させるクオリティだ。陸自部隊が「門」に突入する際、戦闘服に蛍光ジャケットを着た警務官(自衛隊の警察官)が交通誘導しているシーンなど、妙なリアリティも随所に見られる。

 このほか、登場人物の名前が、伊丹、健軍、久里浜、江田島、新田原など、自衛隊の駐屯地にちなまれているのも、ミリオタのトリビア的な知識を満足させてくれるだろう。

 このミリオタも納得のクオリティについて、自身もアニオタ兼ミリオタを公言する東京都内に勤務する陸上自衛官(20代)に聞いてみた。

「原作を読んだわけではなく、アニメ第1作を見ただけの感想なんですが......なんで『特地』に派遣される部隊は全部旧式の装備なんでしょうか? 戦車ならC4I機能を搭載した10式戦車があるし、小銃だって、今時の陸自部隊で64式小銃を装備している部隊はないですよ。戦闘服やヘルメット、防弾チョッキも迷彩ではなく、OD(オリーブドラブ)色だし。まあ、この『戦闘服四型』はフィクションだからいいんですが......。

 原作者も元陸自なんで、この辺の事情は知ってるはず。もしかしてなんですが、この辺の事情が、この先の展開でわかってくるのかもしれませんね。いずれにしても、現職では絶滅種ぐらいに貴重なアニオタ、ミリオタですから、今後の展開を楽しみつつも、厳しくチェックしますよ(笑)」

 ファンタジーについてはネタバレになるので詳細は書かないが、伊丹はエルフや魔導士、異世界の美少女たち交流を持つことになり、これが伊丹や部下たちの運命を大きく翻弄していく。現職自衛官のコメントにあった、特地派遣部隊の装備が"あえて"旧式な理由も、これから先の展開で明らかにされるのかもしれない......?

 自衛隊が異世界で戦う作品の代表作といえば、半村良の『戦国自衛隊』だが、『ゲート』の世界観は、どちらかというと、全編3Dで話題を呼んだ大ヒット作『アバター』に近いかもしれない。同じく異世界モノの諌山創著『進撃の巨人』や三浦建太郎著『ベルセルク』とは少し違った、現実世界と異世界の交流、そこからくる矛盾と葛藤にスポットライトを当てたのが、本作の持ち味だろう。

 ネット小説から火が付き、コミックを含めてシリーズ累計240万部を突破した本作のアニメ化は、ファンから待望されていたもの。放映は東京MXテレビからはじまったが、ローカル局やBS放送に加えて、ニコニコチャンネルやGoogle Playなどのネットでも、順次オンエアされる。
(文/山野一十)

★『GATE』公式HP <http://www.gate-alphapolis.com/>
★『GATE』アニメ公式HP <http://gate-anime.com/>