猫の尿の臭いに慣れたネズミの不思議な行動とは?

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お食事中の方々、失礼いたしますね。どうやら猫の尿が原因で、猫とネズミの戦いが一時休戦になるかもしれないです。

L-フェリニンとよばれる猫の尿に含まれる化合物。本来、ネズミはこれにストレス反応を示し逃げるよう進化してきました。ところがロシアの研究チームによると、ネズミが赤ちゃんのころから猫の尿に含まれる化学物質にさらされていた場合、猫から逃げ出さないということがわかったのです。逃げないネズミ…これはにゃんこたちも追いかけようがないですねぇ。

ちなみにこうしたストレス反応って、ネズミに限ったことではないようです。動物の世界では、もし近くに天敵となる捕食者がいると知っていたら多くの被食者、つまり餌食となる動物が繁殖や出産を避けるといわれています。

実験


先日、プラハで行なわれたSEB(Society for Experimental Biology)年次会議で、Vera Voznessenskayaさんの研究チームによって発表されたのは、猫の尿のにおいがする環境で育った場合、ネズミは猫が近づいても逃げ出さなくなるという研究結果。

実験では、生後2週間ネズミを猫の尿のにおいとL-フェリニンにさらしました。これは若い動物が世界の重要な情報を得る、生態学でいうところの臨界期(Critical Period)なのです。それは鳥の赤ちゃんが親の後をついていくような刷り込みの時期でもあり、人間の子どもが言語をすばやく簡単に習得できる時期でもあります。今回のケースでは、ネズミの赤ちゃんが猫のにおいに反応して逃げないよう適応した期間になります。

研究チームはネズミが猫の尿のにおいにさらされている期間、ミルクを与えていました。だから食べ物と猫の尿のにおいが紐付いて、逃げなくなってしまったのかもしれませんね。

それでも逃げないネズミ


では、猫が近づいてきても動じないようなネズミに育つのでしょうか? いいえ、そんなことはまったくありません。なんと、L-フェリニンのにおいに気づいたネズミは、激しく嫌がってストレスによるホルモン分泌はしているようです。ただ、心も体も脅えてはいるものの、猫から逃げようとはしないのだそうです。

これはまるでストックホルム症候群のような状態。ただ研究者たちが指摘するには、このようなストレス反応は生まれながら遺伝子に組み込まれているもの。とはいえネズミは、異なる行動パターンを後天的に学習することもできるということなのです。

もちろん、おそらくこれは現実の世界で頻繁に起きることではありませんが、進化を遂げてきた動物の行動にはまだまだ不思議なことが沢山ある気がします。あれ、そういえばいろいろな場所でおトイレをする猫ってもしかしてこのネズミの事情を知っていたりして…。


source: SEBPhys.org

Kiona Smith-Strickland - GIZMODO US[原文
(Rina Fukazu)