Douglas Crockford氏が新たなWebのアイデアを公開

サンフランシスコのAngular Uカンファレンスで,Douglas Crockford氏は,今日私たちの知るWebでは,一度実行されたことが長期間のリンギング効果を持ち得る,という考えを発表した。

現在のWebについてCrockford氏が問題とするのは,それが複雑であり,それ故に本質的に不安全である点だ。残念ながら,W3Cの標準化プロセスのため,何かを削除する作業には深刻な影響が必ず伴うことになる。そのために,レイヤや機能を追加し続けることでお茶を濁してきたのが実情だ。

Crockford氏は現在のWeb上に,新しいルーティングや暗号化,演算コンテナ,プレゼンテーションシステムなどを含んだWebを新たに構築する,というアイデアの初期草案を発表した。この提案は,我々の知っている既存のWebの多くを捨てて,現在のブラウザ上に構築された代替Webで置き換える,というものだ。

氏の実施計画は,ひとつのブラウザメーカに対して,“ヘルパアプリ”を実装するように説得することから始まる。ユーザがこの新技術をサポートしたWebサイトを訪れると,ブラウザがそのヘルパアプリを起動して,アプリに対するすべてのトラフィックを引き渡す。

この技術がブラウザでサポートされるようになれば,次の計画は,銀行などのセキュアなサイトをひとつ説得して,そのブラウザとヘルパアプリの組み合わせを利用要件としてもらうことだ。このステップが首尾よく進めば,他のセキュアサイトもこれに追随するに違いない。結果として他のブラウザメーカも,このヘルパアプリをサポートせざるを得なくなるのだ。

このシナリオならば,既存のWeb技術やトラフィックもこれまで通り機能することができる。 “[Webが]今後も有用であり続けてほしいのです”, と氏は言う。 ヘルパアプリは新しい暗号(ECC521, AES 256, SHA 3-256)を使って,JavaScriptメッセージサーバとのメッセージ交換を行う。UIはQtを使用する。SSL, HTML, CSSといったものがすべて削除されている点に,読者は注目してほしい。

氏自身も疑問を持つこのアイデアが現実的かどうかを問うのは,あまりにも時期尚早だ。“これが現実に起きるとは言いません”,と氏はコメントしている。しかし氏は,同じようなことを試みている企業がすでに存在している点も指摘する。

“Webを置き換え,あるいは取り込もうとしている企業はたくさんあります。MicrosoftやApple, Adobe, Oracle, その他多数の大企業から小企業までが,’何かをする上でWebよりもスマートに実行可能だから'という理由で,自身のアプリケーションプラットフォームを構築しようとしています。彼らの技術は確かに優秀ですが,ほとんどのソリューションはオープンでないため,結局的にすべてが失敗に終わっています。”

Crockford氏は“JavaScript: The Good Parts”の著者であり,JSONデータ構文の普及に貢献した人物だ。講演のビデオが公開されている。