Netflix、新規格付けと日本進出日決定のニュースで8%アップの史上最高値 | TechCrunch Japan

NASDAQが0.2%の安値をつける中、Netflixは通常取引で史上最高値となる122.78ドルを記録し、終値は121.00ドル、7.5%高だった。

ビデオストリーミングサービス会社の株価は2015年に入って143%上昇した。株式分割、Icahnの持株売却、そして期待含みの決算報告が最近のアジア市場進出のニュースとともに、同社に対する投資家の注目を高めた。

Icahnと言えば、この物言う投資家は早期に売却したために数億ドルを失った。彼が残っていたNetflix株の現金化を発表したその日、株価は7対1分割調整後96ドル前後で取引されていた。今日の終値121ドルは、彼が26%儲けそこなったことを意味している。

Netflixの将来が明るいことに疑問を持つ人は殆どいないが、ここで同社の強み、最近の業績、および詳細の財務予測を検証しておく価値はあるだろう。投資家は先走りして、将来の成長に今から注ぎ込みすぎていないだろうか?あるいは、Netflixの今後数年は、その劇的に加速する評価額に見合うほど強力なのか?

史上最高値の理由

この日は、Netflixによる長年待望されていたアジア進出の正式日程の発表から始まった。同社はNetflix JapanのTwitterアカウントを立ち上げるとともに、9月2日のサービス開始日付を正式に認めたことを、VentureBeatが報じた。

同社が日本進出を発表したのは約6ヶ月前だが、数週間前のQ2決算会見でも注目の話題の一つだった。

Netflix CEOのReed Hastingsは、ローカライズしたコンテンツと積極的な価格戦略でスタートすると言い、Huluが日本初進出で遭遇した失敗を避けようとする意図がうかがわれた。Hastingsは日本の主要家電メーカー全社から支持を取り付け、ソニー、パナソニック、東芝の各社が日本で販売するテレビにNetflixボタンを組み込むことも明らかにした。

日本での正式開始日のニュースは、Q4に予定されている南欧、スペイン、イタリアでの開業に対する投資家の期待も高めているのかもしれない。

さらに、今日の値動きの一部は、投資会社のGuggenheim SecuritiesがNetflixの評価を開始し、目標株価160ドルで「買い」に格付けしたことも影響している可能性がある。160ドルという目標株価は今日の終値の33%高である。

Netflixの購読者離脱対策

Netflixの長期的高値の理由は、定期購読者の低い離脱率と、多くのユーザーが現在のNetflixの新規顧客向け月額8.99ドルという価格を極めて非弾力的と考えていることにもありそうだ。

2015年にRBC Capital Marketsが500人を対象に実施した調査によると、ユーザーの73%が、今後3ヶ月間に購読を解約する可能性は「全くない」と答え、解約の可能性が「極めて高い」あるいは「非常に高い」とした回答はわずか6%だった。

また非弾力性に関しては、同調査によるともし価格が1ドル上がった場合に定期購読を解約する可能性が「極めて高い」あるいは「非常に高い」とした回答はわずか9%だった。この数字は1年前の結果より3%低く、強力なオリジナルコンテンツが購読者を同プラットフォームに引きつけ続ける限り、今後も減少していく可能性が高い。

一方、Netflixの購読料金が今後もケーブルテレビの料金より劇的に低い(64ドル。FCCによる)状態が続き、同社が質の高いプログラムを提供し続けることができるなら、将来価格を上げる余地は十分にあると仮定できるだろう。

財務状況など

Netflixの2015年前半の売上は32億ドルで、前年同時期の26億ドルから上昇した。これは23%の増加だ。同じ半年間にNetflixの経常利益は2.272億ドルから1.723ドルへと下落した。これは約24%の減少だ。

厳密な利益ベースでは、Netflixの純利益は2014年前半期の1.241億ドルから、最近半年間の0.5億ドルへと大きく落ち込み約60%減少した。要するに、Netflixはそこそこの売上成長のために、利益を急激に減らしている。しかし、もしあなたがNetflixの伝統的企業指標だけを見ていると、重要な部分を見失うことになる。

(Netflixの予想PERが400を超えるだろうというジョークを聞けば安心できるだろう)

しかし、純粋な財務実績は投資家がNetflixの価値を測る唯一の成長要因ではない ー つまり、Netflixが新規購読者を純増ベースで増やしているペースは、おそらく同社の将来の売上を測る上でさらに重要な指標だ。

GAAPだSaaS戦争だと騒ぐ前に、ちょっと待ってほしい。先に議論した、消費者にとっての価格非弾力性はアカウント毎にブラスの収益をもたらすことを示唆していることを踏まえると、Netflixの低い離脱率は長期的な利益源になる。よって、成長に関して言えば、購読者ベースを大きくするために今の利益を削ることは、適正な取引であるだけでなく、長期的に大きな利益を生む行動かもしれない。

SaaSと定期購読者

先ほどのコメントからBox、そして同社が定常的売上基盤拡大のために巨額な損失を出したことを思い浮かべた人は、Netflixがコンテンツとメンバー拡大に多大な投資をしながら、それでも利益を上げているしくみを少々誤解しているかもしれない。

小さなヒント:NetflixのDVD事業は第2四半期、7790万ドルの「貢献利益」を同社にもたらした。これは同社の前半期の純利益をはるかに上回る。こうしてNetflixは興味深い方法による無料の収益源を持ち、それが同社の反復的デジタル売上の成長を可能にし、実質的にそのコストを補助している。

そう考えると、現在の購読者数成長にかかる将来のキャッシュフローは、見た目ほど高価ではない。では、その購読者数の伸びはどんな具合なのか?国内、国外、先の四半期に。会社はこう言っている:

Q2には史上最多の330万新規ストリーミングメンバーを加え、これは前年同期には170万人だった〈…〉米国で90万人、海外では240万人のメンバーをQ2に獲得した〈…〉Q3には米国で前年をわずかに上回る純増115万人と予測している〈…〉Q3の海外純増は240万人を見込んでいる。

つまりNetflixは、昨年同期を上回るペースで購読者ベースを伸ばしているだけでなく、現行四半期はさらに好調になると予測している。

そしてもし、将来この同じ購読者に対してさらに高い料金を請求し、それでも去っていくことがなければ、CAC(顧客獲得コスト)はHouse of Cards[Netflixの超人気番組]で、顧客のLTV(生涯価値)はとてつもない黄金になる。

情報開示:執筆者の一人は、少数のNetflix株を家族信託を通じて所有している。

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  (翻訳:Nob Takahashi / facebook