回転寿司でやたらサラダ軍艦を頼む長野の謎 | ニコニコニュース

長野県民が大好きなサラダ軍艦(かっぱ寿司)
東洋経済オンライン

世の中にあふれるさまざまな統計やデータ。これをもとにしていろいろなランキングが作られるワケだが、中にはなぜそうなるのかの理由が、すぐにはわからないような"世にも不思議なランキング"がある。

TBSテレビ『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』(次回は8月10日<月>よる8時放送)は、そんなランキングデータの謎を解き明かす番組だ。「なんで△△が○位にランクインしているのか?」。その裏側を探ると、驚きの事実が次々に明らかになってくる。

手頃な価格とスタイルで人気を博している回転寿司。休日になると家族連れが空席待ちの行列をつくる店も多い。そんな回転寿司チェーンの4強といえば、「スシロー」「はま寿司」(ゼンショーホールディングス)「くら寿司」(くらコーポレーション)「かっぱ寿司」(カッパ・クリエイトホールディングス)。その一角であるかっぱ寿司にまつわるランキングを、ご覧いただきたい。

■全国1位の人気すしネタは「まぐろ」

■かっぱ寿司の人気メニュー(全国約340店ベース、2014年)

第1位 まぐろ

第2位 とろサーモン

第3位 ハマチ

(出典:カッパ・クリエイトホールディングス)

いずれもお寿司の定番で、何の違和感もなく、誰もが納得するランキングである。一方で、このランキングを長野県の店舗のみに絞ってみると、風景がガラッと変わる。

■長野県のかっぱ寿司における人気メニュー(2014)

1位 サラダ軍艦

2位 マグロ

3位 海老

(出典:カッパ・クリエイトホールディングス)

かっぱ寿司のサラダ軍艦とは、ボイルしたイカゲソとカニカマをマヨネーズであえたネタを載せた巻き寿司のことで、かっぱ寿司のメニューには「サラダ」という商品名で記載されている。本記事では、サラダ軍艦として表記していきたい。

それにしても、長野県のかっぱ寿司におけるサラダ軍艦の人気1位に何とも違和感を持つ読者は少なくないだろう。全国1位で超メジャーなネタのマグロを差し置いているのだ。いったいどういうことなのか。

全国でのサラダ軍艦人気は?

かっぱ寿司の全チェーンにおけるサラダ軍艦の人気ランキングは17位。東京都の店では28位、大阪に至っては67位。やはり、全国的に人気はない。

■カッパ・クリエイト本社は「理由不明」

取材班はカッパ・クリエイトホールディングス本社を訪れ、直撃取材を敢行した。しかし、担当者によると「長野県だけサラダ軍艦が売れているのは知っているがその理由は分からない。ぜひ理由を突き止めてもらいたい」と逆に依頼されてしまった。

このパターンは、天丼てんやビーンズ赤羽店(東京都北区)の謎に迫った「異常に持ち帰りが多くなった」天丼店の真実(7月9日配信)のときと似ている。こちらはこれまで『世にも不思議なランキング』をいくつも解き明かしてきた。ここまで来たら、自分たちで調べるしかない。取材班は長野県へ飛んだ。

実はかっぱ寿司1号店は今から36年前に長野県で創業。つまり、発祥の地だ。長野の中心部から車で走り、やや郊外に出たあたりでカッパ寿司を発見した。この日は土曜日まだお昼前だというのに、店内は満席状態。席についたばかりのお客さんに話を聞いてみることにした。

やはりサラダ軍艦が一番好きだという。そんな質問をしているそばから
サラダ軍艦が8貫も届いた。そのお客さんは席について真っ先にサラダ軍艦を注文したようだった。別のお客さんは1人で6皿(12貫)をたいらげた。長野県のカッパ寿司を訪れるお客さんへのアンケートでは、半数以上が好きなネタはサラダ軍艦と回答している。

さらに店内を観察していると、普段は東京にいる取材班にとって信じられない光景を目にした。テイクアウト(持ち帰り)コーナーに並んでいたのは、24貫すべてがサラダ軍艦で埋め尽くされたパックだ。

店員に聞いてみると、「お祭りや年末年始の時期には1日50~100セット単位で売れるのが当たり前」というのだ。東京のカッパ・クリエイト担当者に伝えると、「東京ではサラダ軍艦だけの詰め合わせは見たことがない」という話だ。

なぜ、長野県民はサラダ軍艦がそこまで好きなのか?

なぜ、長野県の人はカッパ寿司のサラダ軍艦がそこまで好きなのか。直接聞いてみると、「なんでだろうね。」「美味しいからでしょ」という、曖昧な答えしかない。

■長野県民は刺し身が苦手?

さらに調査を進めていくと、あるお客さんがヒントを教えてくれた。それは「海が遠いから、刺し身をあまり食べない」ということだ。そういえば、長野はまったく海に面していない県。昔は特に長野へ魚を運ぶ流通経路が不十分だったため、生の魚を食べる習慣がなかった。

調べてみると、長野県民はカニやアジ、イワシなどの魚の消費量を見ると、全国のかなり下位だ。つまり、すしネタでは当たり前の生魚がそれほど好まれていない風土がある。

そして、長野の人は「サラダ」好きだ。車を走らせて発見したのは、「サラダ街道」。緑豊かな田園や果樹園が広がることからサラダと命名されたらしい風邪を引いたらサラダ薬局。部屋をお探しならアパート・サラダメゾン。ちなみに最寄り駅からは徒歩36分。他にもサラダパプリカやサラダほうれん草まである。

実は、今から50年前、長野県は脳卒中による死亡率が全国1位で、大きな問題となっていた。その対策として県をあげて「塩分を控え、野菜を多く取る」運動を実施。その結果今や野菜摂取量が日本一の街になった。そればかりか、平均寿命男女とも1位日本一の長寿の県になったのだ。

はっきりとした確証を持てたワケではないが、大枠はつかめた。長野県民がやたらと、かっぱ寿司でサラダ軍艦を頼む理由は、「生魚はもともと苦手な地域」のうえ、「サラダが好き」という県民性に関係がありそうだということだ。全国画一のチェーン店ですら、地域ごとの動向はバラバラ。狭い日本も意外と多様性がある。