世界有数の富裕国に成長=シンガポール建国50周年―故リー・クアンユー氏が礎 | ニコニコニュース

 【シンガポール時事】シンガポールは9日、建国50周年を迎えた。今年3月に91歳で亡くなったリー・クアンユー初代首相の絶大なリーダーシップの下で国家建設が進められ、マレー半島先端の小島はいまや世界有数の富裕国へと成長した。リー氏が敷いた経済発展至上主義の路線を突き進んだ半世紀だった。

 1824年に正式に英植民地となったシンガポールは、第2次大戦中に日本の占領下に置かれ、戦後再び英国の植民地となった。1963年にマレーシア連邦に州として加入したが、民族政策などをめぐる中央政府との対立で、65年に連邦から追放されるという不本意な形で独立。シンガポール州の首相を務めていたリー氏は独立当日、「シンガポールは永久に、自由と正義の理念に基づく民主的な独立主権国家となり、より公正で平等な社会で国民の福祉と幸福を常に追求する」と宣言した。

 天然資源もなく、面積も東京23区と同程度しかない小国は、国家の存続を経済発展に懸けた。低い法人税率や優遇税制で世界中から積極的に外資を誘致。地理的優位性を生かして世界有数の海運・空運の中継基地として発展したほか、アジアの金融センターとしての地位を固めた。国民1人当たりの国内総生産(GDP)は現在、先進7カ国(G7)のいずれも上回っている。

 国家建設を進める上で政治・社会の安定は不可欠との考えから、言論・出版の自由を制限すると同時に、世界で最も多様性に富む国内の民族・宗教を平等に扱う政策を取ってきた。これに関して、現首相のリー・シェンロン氏は最近、「一部の人たちが(シンガポールは)民族・宗教に関する自由な議論や批判を認めるべきだと訴えているが、そうした主張は全く非現実的だ」と断じ、世界各地で騒乱や紛争の火種となっている民族・宗教問題には慎重なアプローチが必要だと強調している。

 与党・人民行動党(PAP)は独立前からシンガポールの発展を主導してきたが、長期政権が永続する保証は失われつつある。前回2011年の総選挙では、外国人労働者の急増や不動産価格の高騰などに対する国民の不満の高まりから、同党の得票率は過去最低の60.1%となり、議会定数87のうち、野党に過去最多の6議席を奪われた。

 来月中に実施される見込みの次期総選挙でPAPが勝利し単独与党を維持するのは確実視されているが、「得票率が50%を切るようなことになれば、将来の政権交代の可能性が高まる」(政府筋)とみられている。