プラットフォームとしての都市の改革 | TechCrunch Japan

編集部記Gerard Grechは、Crunch Networkのコントリビューターだ。Gerard Grechはイギリスのデジタルビジネスを加速することを目標とする非営利団体Tech City UKのCEOである。

過去10年間で最も急速に成長した企業を考えてみてほしい。彼らの共通点に気が付くことだろう。彼らは全てプラットフォームだ。

YouTubeは動画を掲載した初のサイトではなく、停滞していたオンライン動画配信モデルを初めてディスラプトした企業だ。デジタルでの関わりを中核として、プラットフォームを構築した。Googleの急成長をもたらしたのは、ユーザーに中核事業の検索機能を開放し、キーワードに入札できるようにしたからだ。

Facebookは最初のソーシャル・ネットワークではなかった。しかし、彼らは自社サービスをデジタルなプラットフォームを基盤とした最初のソーシャル・ネットワークと捉えた。APIをアプリや新たな創造のために提供した。

効果的であると証明できれば、イノベーションは火が付いたように瞬く間に広がる。データサイエンティストの台頭を考えてみてほしい。シリコンバレーの一握りの企業が彼らに価値があると認めた瞬間から、チーフ・データ・オフィサーは役員クラスの重要な位置づけとなった。今では、ホワイトハウスからバーバーリーといった企業にまで浸透している。

公共部門が民間企業にインスピレーションを求めるのは珍しいことではないが、このトレンドは政府に何を伝えているのだろうか?都市はプラットフォームとして機能することができるのだろうか?都市もデジタルの力でディスラプトすることは可能なのだろうか?

テクノロジーの進化は、都市とそれを統括する政府組織へのアクセスを可能としたことを意味している。都市と政府は、市民と直接的に遅滞なくつながるべきなのだ。

都市は、関わることができない資産、鉄とガラスでできた建物の集合体ではない。

もちろん、ロンドンやニューヨークといった都市には、バッキンガム宮殿やエンパイア・ステート・ビル、ロンドンタクシー、地下鉄といった物理的な資産がある。しかし最も重要なのは、デジタルの存在と言えるだろう。都市は私たちのスマートフォン、パソコン、そしてデジタルネットワーク上に共有される知識として存在している。そして都市環境は前代未聞の課題に次々と直面している。

これまで以上に多くの人が都市に住む時代となり、交通機関、住宅、公共の場所に対する市民の要求は絶えることがない。魅力的なチャンス、文化的な探求のみならず、私たちが住む都市は人間の活動が引き起こす影響を最大限詰め込んだ小宇宙になりつつある。

デジタルイノベーションが世界中で創造のパンデミックを起こす時、私たちは劇的な再発明のチャンスを逃さないようにしなければならない。

進化するためには、都市をプラットフォームとして捉えなければならない。そしてそこに住む私たちは、テクノロジーを駆使し、都市の中核的な機能を創造的にディスラプトして再定義しなければならない。デジタルを活用する全ての市民は、リアルタイムのデータのハブになる。それぞれ個別に分析しただけでは、次の行動計画のための叡智は得られない。しかし、生成されたデータをマクロ的に把握することで、劇的な発明の可能性は尽きることがなくなる。

先進的なソフトウェア企業が導入している継続的な改善のためのアプローチのように、市民と都市の職員は「再発明を継続的に行う」という直にデフォルトとなる考え方にシフトしなければならない。

どのように実践するか?

優秀なデジタル企業が集まるサンフランシスコや、ユニコーン企業が急速に増えているロンドンのように、独自の複雑な要素を持つ都市を様々なAPIを提供するプラットフォームであると考えよう。

物理的な構造と同様、都市のデジタルな基盤は拡張できることを認識しなければならない。生成したデータを集合的に利用することで持続可能なソリューションを導きだすことができる。

都市をディスラプトするという概念を捉えやすくする喩え話をしよう。複数の辞書を持って「これをどうやったらデジタルにできるだろうか?」と問うのなら、その答えはMicrosoft Encartaだろう。CDに収録した辞書だ。覚えているだろうか?

だが、もし「デジタルで、辞書との関わり方を変えるとしたら何ができるだろうか?」と問うなら、Wikipediaが答えとなる。Wikipediaは、公的にアクセスできる世界中で最も多くの知識を集めたもので、誰でも関わることができる。

同様に、都市を変えるのに「デジタルに対応するならどうするか?」と問うなら、最終的に本質とはかけ離れて、不必要な「スマート都市」のソリューションのリストを得ることになるだろう。例えば、スマートトイレ、ゴミ箱、エレベーターなどで、そこで話しは終わりだ。

しかし、もし「デジタルで都市との関わり方を変えるとしたら何ができるだろうか?」と問うのなら、潜在的な可能性を最大限探求することができ、ダイナミックで市民の目線に立ったソリューションに近づくだろう。

デジタル分野に機敏な都市はこの動きを先導している。例えば、シンガポール、パナマ、ソウル、タリンなどだ。どの都市もデジタルが都市をディスラプトする余地を与えている。都市のデータセットを開放し、市民に対して都市のデジタル設計を見直し、議員と直接的で民主的な会話に加わるように促している。都市はプラットフォームであるという考え方に近づくほど、市民と都市の間に「デジタルにおける利用規約」を制定することが容易になる。

都市システムに実装するにはどうすべきだろうか?

都市と市民との間に私が「デジタルにおける社会契約」と呼ぶ規約を制定することが可能だろう。これは、権利、責任、提供するサービスといった双方が認める共通理解を基軸に構成される。

「デジタルにおける社会契約」は、市民の能動的、受動的な貢献と引き換えに、都市は市民のためにより良い環境を作ることに注力するという同意の上に成り立つモデルだ。市民は都市に自分のデータを提供する代わりに、市民は透明な都市運営と更なる都市効率の向上が期待できる。

都市に関わっていると感じるほど、私たち自身も都市に対して責任があると感じるだろう。これは良い循環であり、テクノロジーはそれを加速させるための燃料となる。

価値のあることにデータを提供することは生活の向上につながると私たち全員が知る必要がある。そして、都市の代表者にも役割がある。都市が責任を持つ空間とシステムを適切に構築し、効果が計測可能で効率的にデータを利用することを保証しなければならない。

Facebookを個人の考え、位置情報、画像や気持ちを共有する場としていかに信頼しているかを考えてみて欲しい。それにも関わらず、公的機関に私たちの個人に関わることとさほど関係のない情報でも預けることを躊躇ってしまう。その情報は、見方によっては重要な情報に成りうるのだ。

進化するためには、都市をプラットフォームとして捉えなければならない。そしてそこに住む私たちは、テクノロジーを駆使し、都市の中核的な機能を創造的にディスラプトして再定義しなければならない。

都市を自分の力が及ばないものから、作り直して形を整え、クリエイティブに再創造できるものに変えたいと思うなら、その考え方を変えなければならない。実用的な叡智はクラウド上から公共の場に、そして議会に引き渡さなければならない。

これは、曖昧で複雑に入れ組んだ相互関係であるように思うかもしれない。これを説明するのに、一つ良い例を取り上げたい。

私の出身地であるロンドンでは、都市の交通網がスマートデータを活用することで改善できることを知った。バス停に印字された時刻表は、テキストメッセージと最新の取り組みの産物、CityMapperアプリに進化した。

CityMapperでは、ユーザーはプロバイダーにデジタル情報の社会契約に基いて託している。私たちのいる場所を教える代わりに、目的地までの最短、最安の実行可能な道順の情報が提供される。

GPSを利用するこのアプリは、グレーター・ロンドン・オーソリティー とロンドン交通局が公開したデータセットと、交通APIを運営するPlacrの協力で実現した。

Nestaの最近のCITIEの取り組みでは、レイキャビクやテルアビブといった都市もプラットフォームアプローチを取っていると示した。アイスランドの首都はデータセットを公開し、社会活動家と協力して、市民が都市に関する新しいアイディアを提案したり、優先順位を付けたりできるプラットフォームを構築した。これまでに人口の60%以上がこの取り組みに参加していて、257のアイディアが公式に検討された。ローンチ後、165のアイディアが認められ、実施に至った。

一つ例を上げると、町内会は公的な資金を利用することが認められ、割り充てられた予算を使用できるようになった。全員参加型の民主主義が動き出している。

魅力的なチャンス、文化的な探求のみならず、私たちが住む都市は人間の活動が引き起こす影響を最大限詰め込んだ小宇宙になりつつある。

同様に2013年、テルアビブでは市民と自治体の双方向の関係性を構築するため、デジタルな住民カードをローンチした。都市がそこに住む市民の創造的なヴィジョンを実現できるようにする。カードはテルアビブに住む市民が都市機能を利用する時のハブとなる。料金を支払ったり、議員と接点を持ったり、更には週末に公開される最新の人気映画のチケットが売り切れていない映画館を探すこともできる。

小さな規模では、イギリスが2014年に歴史上最大規模の被害をもたらした洪水に見舞われた後、Tech City UKは、著名なUK Government Digital Services(GDS)のチーム、政府の環境団体、プライベートセクターの開発者を集め、東ロンドンのGoogle Campusでハッカソンを行った。

環境団体はコミュニティーが新しいソリューションやアプリを製作できるよう、最新のデータセットを公開した。それはインスピレーションを引き出しただけではなく、洪水被害者を助ける新たなソリューションを複数ローンチする助けとなった。Flood Beaconはその内の一つだ。

ロンドンは、国際的にも称賛を得ているオープンデータ機関の拠点となっている。彼らは、London Data Storeの開設と共に勇気ある一歩を踏み出した。London Data Storeは、多様なデータが利用できる世界でも有数のデータバンクだ。しかし、人口の増加に伴い都市のインフラに負荷がかかっている。この取り組みは更に推し進める必要がある。

この施策は、政府の意志と市民の力を借りる文化がなければ機能しない。ディスラプトを促す強力な民主的アプローチが必要条件だ。また、都市をプラットフォームとして捉えるのに加え、変化の余地を与えるデータの生成と共有も必要だ。そしてこのデジタル社会契約を現実のものとするためには、都市の職員には多様なテクノロジー分野からの強い支持が必要だ。

それには、多様な人を含める必要がある。戦略の責任を持つチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)、実行計画を立てるための洞察やトレンドを見極めるデータの責任者、そして開発者との関係を構築する必要もある。これにはエバンジェリストのチームを集め、プログラマー、デザイナー、法人、そして他にも都市の不足を補うアプリケーションやサービスを構築することに興味がある人たちにデータの活用を促さなければならない。

デジタルイノベーションが世界中で創造のパンデミックを起こす時、私たちは劇的な再発明のチャンスを逃さないようにしなければならない。これはタイムリーで、必要不可欠なものだ。私たちの都市を取り戻そう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter