戦後70年の安倍談話に「3つのキーワード」を確実に入れるべき理由 | ニコニコニュース

国際コラムニスト・加藤嘉一の本誌連載コラム「逆に教えて!」。今回は…。

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8月10日以降に発表される「安倍談話」。その内容については議論がありますが、ひとつ重要なのは「国際社会に何をどう発信するか」という視点です。

今年は戦後70年の節目。国際社会は、8月15日(終戦記念日)という第2次世界大戦を省(かえり)みる重要な一日を前に安倍首相がどんな談話を発表するのか強い関心を持っています。

国内ではいろいろといわれていますが、安倍首相は近年の総理大臣の中では国際的に高い評価を受けています。2度目の総理大臣就任の後、アメリカで「ジャパン・イズ・バック」と宣言。国内で長期政権の基盤を築きつつ、金融緩和をはじめとするアベノミクスを敢行し、頻繁(ひんぱん)に外遊しては要人たちと親交を深め、トップセールスを続けた。懸案事項だった日中の首脳会談も実現させた。ワシントンや北京の知識人の中には、毎年のように代わった最近の日本の首相の名前を知らない人も多いですが、安倍晋三という名前は誰でも知っています。

惜しいのは、久々に登場した影響力のある首相として、経済政策や安全保障で日本の存在感を高めようと努力していながら歴史認識問題がそれを“邪魔”してきた経緯。前回の靖国神社参拝を含め、先の戦争をめぐる不安定な言動が国内外で不評を買ってきた。実にもったいないことです。

この問題を払拭(ふっしょく)し、安倍首相と日本という国家が真の意味でテイクオフするためにやるべきことは、戦後70年談話に3つのキーワード――「侵略」「植民地支配」「心からのおわび」を確実に盛り込むことだとぼくは考えます。

安倍首相は、戦後50年の村山談話、60年の小泉談話を引き継ぐと明言してきました。今年7月9日に東京都内で開かれた米シンクタンク系のシンポジウムでは「わが国は先の大戦に対する痛切な反省の上に立ち、一貫して平和国家として歩んできた」と話し、4月の米上下両院合同会議の演説でも、やはり「痛切な反省」という言葉を使っています。これだけの“前ふり”をしてきたことを考えれば、今回3つのキーワードを使うことに“無理やり感”があるとは到底思えません。

もし安倍首相がそれを躊躇(ちゅうちょ)しているのなら、自身や自民党の周囲にいる特定の勢力、あるいは支持層の一部に配慮しているのだろうと思います。しかし、一有権者として心からの敬意をもって申し上げれば、国内で権力基盤を築いてきた安倍首相は、今さら反対の声や些細な雑音を気にする必要などない。それに、戦争には相手がいるということを考慮すれば、戦後談話はあくまでも「国際社会に対して発信するもの」。それを忘れないでいただきたい。

3つのキーワードにきちんと踏み込めば、安倍首相は国際社会から本当の意味で責任感があり、肝っ玉の据わったリーダーだと認識されることになるでしょう。

アメリカはもちろん、ドイツなど欧州諸国や東南アジア、そして中国と韓国からも批判の余地はなくなる。秋以降の日韓首脳会談や日中韓首脳会談の実現、そして9月上旬に検討しているとされる中国訪問に向けて弾みがつく。もちろん、北京で9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に開催される軍事パレードに対しても効果的な外圧となるでしょうし、その後に予定されている中国・習近平(しゅうきんぺい)国家主席の訪米に際しても不要な“反日論議”が米中間で巻き起こることはなくなるでしょう。

このように、今回の談話発表は大きなチャンスですが、やり方を間違ったり中途半端な内容にとどまれば、逆に不信感を強め、批判や嘲笑(ちょうしょう)を買うことにもなり得る。首相周辺からは「村山談話を引き継ぐと言ったのだから、その内容をあえて繰り返す必要はない」という声も出ているようですが、その考え方は“外交音痴(おんち)”であると言わざるを得ません。

それでも、個人的な信条や国内の特定層への配慮を重視するというなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(KATO YOSHIKAZU)

日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。ハーバード大学フェローを経て、現在はジョンスホプキンス大学高等国際関係大学院客員研究員。最新刊は『たった独りの外交録 中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる』(晶文社)。中国のいまと未来を考える「加藤嘉一中国研究会」が活動中!