ハードウェア向けインキュベーターは、未来の物づくりに欠かせない存在だ | TechCrunch Japan

編集部記Mike Geyerは、Crunch Networkのコントリビューターだ。Mike Geyerは、Autodeskのエバンジェリストと新興テクノロジーのディレクターを務めている。

ハードウェアはアツイ分野だ。これから更に注目を浴びるだろう。インターネットとつながるハードウェア端末を開発するスタートアップへのベンチャーキャピタルの投資額は、2014年におよそ14億8000万ドルに達し、2年前の3倍以上に膨らんだ。

また、「お伽話」のような買収劇を演じたDropcam、Nest、Beats、Oculus、更にFitbitやGoProのIPOは、ハードウェアスタートアップの盛り上がりを加速し、多くの人の注目を集めた。

ハードウェアは次のソフトウェアだ。

過去10年間で、誰でも賢いアイディアをアプリとしてローンチすることが劇的に容易になった。クラウドファンディング、クラウドのインフラ、そしてGithubのようなオープンソースのコミュニティといった多様なサポートを受けられるようになったからだ。

現在の起業家は、同じように実用的なハードウェア製品を容易に市場に届けることができる。これも似た要因のおかげだ。今度は更に、新たな種類の支援機関の登場で、人々の持つ賢いアイディアを素早く物理的な製品に変えることが可能となった。

例えば、ユーザーが試行錯誤しながらプロトタイプを製作できるハッカースペースやメーカースペース、更には各人が製作したプロトタイプを実用的で、量産が可能なプロダクトに磨く作業をたった数ヶ月で行うことができる洗練されたハードウェア・インキュベーターといった多様な支援先が揃っている。

これらの施設がどのように運営されているかはそれぞれ異なるが、与えている影響は似ている。既存の製造工程を破壊し、次世代のイノベーティブなハードウェア・スタートアップを芽吹かせているのだ。

チャンスの波

Pebble のスマートウォッチやNestのサーモスタットといった製品、ハードウェアのインベーションを起こしているSmartThingslittleBitsは、次の素晴らしいハードウェア製品が伝統的な巨大組織の中からではなく、自宅ガレージやメーカースペース、ハードウェア・インキュベーターの中から誕生することを明示している。更に重要なのは、ハードウェアとソフトウェアが密接に連携していることだ。それに偉大な起業家の多くが気が付いている。

エコシステムの成功は、テクノロジーと人間の両方の要素にかかっている。

インキュベーターとアクセラレーターの数は急速に増えている。アーリーステージのソフトウェア企業向けのインキュベーターの数は100社以上ある一方、ハードウェア向けは大幅に遅れを取っている。しかし昨年、一桁だったその数は、アメリカだけでも20数社までに急伸した。ヨーロッパやアジアでもその流れが見て取れる。ドイツのUnternemertumやHardware.co、日本のDMMなどが目立った存在だ。

Jaguar、Land RoverやIntelといった有名企業もこの発展分野に着目し、機敏な競合の成功を真似て、自社のインキュベーターを立ち上げるなどの前進を見せた。これらの企業はクリエイティブな起業家を支援し、アイディアを素早く現実のものへと推し進めることを目指している。

Los Angeles Cleantech Incubator(LACI)も同様の考えを持ち、イノベーションを加速させること、そして製造業を復活させることをミッションの中核に掲げている。

私は、LACIの企業ポートフォリオプログラム部門のVPを務めるErik Steebと話す機会があった。彼は、「LACIはロサンゼルスの中心地で製造関係の仕事を創造するために四年ほど前に始まりました。ロサンゼルスはかつて、活気あふれる製造の拠点でした」と話した。「スタートアップの持続的な製造を維持するためは、早い段階から適切なデザインを検討し、効果的なプロトタイプを製作する設備、必要な支援とベンチャー投資のインフラを整え、彼らの成功を支えることが必要です」と説明した。

動きを支援する

全ての物の製造に関連する大きな変革の中で、ハードウェア・インキュベーターは大幅に発展している。多くの人がプロトタイプやファブリケーションのための新たなツールを利用できるようなった。同時に製品が様々なことを理解し、相互に接続できるようになった。コンシューマーが自分にぴったりの体験を期待しているのも流れを加速させている。

このようなトレンドが合わさって、新しい起業家の波が到来した。彼らは真新しいデザイン思考を理念に持っている。大企業は、早い段階から新興するイノベーションを認識することが重要だ。ハードウェアの分野で広く関係性を構築することで、成功を得ることができるだろう。特にインキュベーターやアクセラレーターとしての活動に注力することは、この動きを促進する最大のチャンスである。

北アメリカには模範となるイノベーションのハブがある。例えば、サンフランシスコのHighway1、ボストンのBolt、ビッツバーグのAlphaLabだ。下記の図を参照してほしい。ヨーロッパ、アジアにもイノベーションの波が世界に広まると共に浸透している。

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企業は、この活気あふれるエコシステムにいくつかの方法で貢献することができるだろう。下記はその一例だ。

  • ハードウェアのインキュベーターと協力し、ソフトウェアの課題を解決する手助けをすること。例えばデザイン、エンジニアリングと製造における強力なツールをインキュベートの対象企業に無料で提供する。
  • ソフトウェアを活用するためのトレーニングとアシスタントを無料で提供すること。それによりユーザーは利用できるツールを最大限に活かすことができる。
  • デザイン支援とコンサルティングをスタートアップに提供すること。例えばAutodeskは、PCH のHighway1インキュベータープログラムを卒業したkeyboard.ioのカスタマイズ可能な人間工学に基づいたキーボードのデザインにおける課題を解決するために一役買った。
  • 「人間的な要素」に着目し、定期的な運営、イベントの開催、コネクションや紹介を活かす方法を共に探すこと。エコシステムの成功は、テクノロジーと人間の両方の要素にかかっている。

「起業家は私たちにハードウェア開発は困難であることを思い出させてくれますが、Autodeskのような企業がパートナーとして協力し、彼らのデザインとシミュレーションツールを活用することで、プロトタイプのスムーズな製作、そして持続的な改善を行うことが可能になりました」とニューヨークのNew Labの共同ファウンダーでパートナーのScott Cohenは話す。「私たちのポートフォリオの企業、例えば FX IndustriesやHoneybee Roboticsは、Autodeskの様々なソフトウェアを駆使して、コンセプト段階から実際の製造段階まで辿り着いています。この屈強なソフトウェアツールと私たちのプロトタイプの製作場所が組み合わさることで、デザイナーにとって初期のプロトタイプを製作することが身近になり、実用的で影響のあるプロダクトの製作工程を本格的に加速させることができます」と話した。

明るい未来

ハードウエアプロダクトの製造がiPhoneアプリを製作するのと同じくらい簡単になれば、私たちは本当のイノベーションの黄金期に到達したと言えるだろう。私たちの創造を軽々超えるような価値をもたらすプロダクトが、現在の頭の悪い、活力のないプロダクトに取って変わるだろう。

ハードウェア・インキュベーターは、この業界の革命を現実のものとするのに重要な役割を担っている。そして、この業界の中の全ての人が意味のある関係性を構築し、必要な支援を協力して提供することが重要だ。

これがどのような未来をもたらすか、とても楽しみだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter