なぜエロゲ出身のライターがアニメやラノベ業界でブレイクしているのか? | ニコニコニュース

 アニメ第1話が放送されるや否や萌え系の見た目とはかけ離れたサイコホラーな展開に話題が沸騰した『がっこうぐらし!』や、ゲームブランドKey所属の人気シナリオライター麻枝准が原作・脚本を手掛ける『Charlotte』(シャーロット)など、今期話題となっているTVアニメの作者たちの中には、いわゆる「エロゲ」(18禁のアダルトゲームのこと)出身のシナリオライターが意外なほど大勢います。この現象、実はライトノベル業界も全く同じだそうで、「この人もエロゲ出身だったの!?」という売れっ子作家もいて、エロゲ出身の作家がラノベブームを牽引する大きな原動力となっているそうです。

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 そこで、エロゲライターたちのアニメ・ラノベ業界でのブレイク現象について、現役ラノべ編集者にその要因を聞いてみました。

●物語に“結”をつけた経験の多さ。これが圧倒的な強みに

――いまエロゲ出身のライターさんがラノベも執筆しているケースって多いですよね?

「編集者が彼らを起用する理由は大きく分けて3つあると思います。

まずは知名度ですね。すでに多くのファンを獲得しているので、ラノベで命の初動が出やすく発売後も話題性を出しやすい。

二つ目は仕事が早いこと。普段、ラノベ数冊分のシナリオ仕事をしているため、ラノベ作家に比べると速筆の方が多いです。書き下ろしで発売する文庫は、スケジュールが重要なので、速筆は非常にありがたい。

三つ目は業界に顔が利くことです。良いイラストレーターさんを連れてきやすい。ライターさんが直接口利きできたり、彼らにも名前が知られているため、仕事を引き受けてくれやすいんですよ」

――常にヒットを求められる編集者が重宝する特質を持っているというわけですね。

「あと、大人な方が多いというのもポイントですね。シナリオライティングだけでなく、ディレクター経験をしていたり、ゲーム会社での勤務経験がある方も多いため、もろもろの対応、対処もわきまえていて、作家性と商業性のバランスを取るのも上手いので非常に助かります」

――その他にも彼らがラノベやアニメといった異なるフィールドで活躍できる要因はあるんでしょうか?

「物語に“結”をつけた経験の多さ。圧倒的にこれだと私は思います。ゲーム1本はラノベ5~10冊分くらいの分量は軽くあるので、長編の物語を書くにあたって、

 ・どれくらいの世界観、設定が必要で 


 ・キャラクターの数&設定、ステータスの掘り下げが必要で
 ・物語のドラマの数、種類、タイミングが有効か

ということを経験で知っているというのは大きな強みになります。

こういった長い物語に読者がどういう反応をするか、つまり、長い物語を書くため、数々のキャラ、展開、設定を用意するため、何がウケやすくて、ウケづらいのかを自然と身につけている。ラノベだと基本的に1シリーズ1テーマで物語を作り、途中巻で、別展開、キャラなどを増やしていきますが、その展開を読者が本当に喜んでいるかわかりづらく手探り感があるんです。一方、ゲームだと、全部盛り! で出すので、お客さんの望んでいるものを知る、ということでしょうか。それがわかった上で、人気のあるジャンル、テーマなどを外すのか、そのまま使うのかという選択もできるのは大きいですね」

――なるほど~。物語に“結”をつけた経験が重要というのは面白い視点ですね。

「刊行時点で完結しないライトノベルと比べ、基本ゲームは大きな起承転結をし終えたものを1本の作品として発売する。つまり、話の結をイメージしてシナリオ作りを行うため、シリーズ全編内での手の抜きどころもわかっており、バランスの取れた、作品の作り方を知っている。ラノベはシリーズ、エロゲは1本、と作り方に差があるんですよ」

――ゲーム業界での経験が長いと「構成力」が身に付きやすいということでしょうか?

「そうですね。例えば1クールのアニメであればラノベなら2~3冊分の話が必要ですが、ラノベは人気シリーズであれば10冊程度は続くことが多いため、2~3冊で完結する話を作ることはあまりしません。ただ、ライター経験があれば、ラノベ2~3冊、つまり○○KBの分量で起承転結を作ればいいのね、と過去の経験、蓄積、ノウハウで分かるので、媒体の変化にも対応がききやすいのかと」

――だからアニメの原作や脚本、シリーズ構成などに名を連ねることが多いんですね。

「ライターという職業上、会社、ブランドからの指示を受けて、つまり人の意見を取り入れて作品を仕上げた経験が少なからずあるので、大勢の人間とディスカッションしながら制作していくアニメの現場でも、うまく他人の意見を取り入れながら自分の色を出していくのに長けているんでしょうね」

●エロゲ出身のライターが描く注目のラノベ作品はこれ!

 ダ・ヴィンチニュースではエロゲライターの中でも定評のある人気作家たちの作品をピックアップしてみました。「エロゲはやるけど、基本的にラノベは読まない」という人にも、このラインナップはオススメ! 丸戸史明さん(代表作『WHITE ALBUM2』他)、田中ロミオさん(代表作『CROSS†CHANNEL』他)、王雀孫さん(代表作『俺たちに翼はない』他)、衣笠彰梧さん(代表作『暁の護衛』他)の4人です。ぜひ参考にしてみてください!

『冴えない彼女の育てかた』(丸戸史明/富士見ファンタジア文庫)


これは俺、安芸倫也が、ひとりの目立たない少女をヒロインにふさわしいキャラとしてプロデュースしつつ、彼女をモデルにしたギャルゲームを製作するまでを描く感動の物がた…「は?なんの取り柄もないくせにいきなりゲーム作ろうとか世間なめてんの?」「俺にはこのたぎる情熱がある!…あ、握り潰すな!せっかく一晩かけて書き上げた企画書なのに」…ってことで、メインヒロイン育成コメディはじまります。

『犬と魔法のファンタジー』(田中 ロミオ/ガガガ文庫)


未踏の地を夢見て、若者たちが冒険の旅に出たのも、今は昔。冒険なんて、時代遅れもいいところ。今の若者の夢は、無事に就職すること。主人公・チタンは一生安泰の宮廷務めを目指し就職活動中。しかし、なかなか採用されず苦戦続きでやさぐれていた。そんなチタンの前に現れ、冒険という悪の道に誘う中年男・ケントマ。冒険者の才能がある、としつこく誘うケントマから逃げ回るチタンだったが……。

『始まらない終末戦争と終わってる私らの青春活劇』(王雀孫/ダッシュエックス文庫)


高校へ進学した有田雁弥はいつものように妹の鞠弥と登校していると、痛々しい厨二病言動をまき散らす、新田菊華と出会う。どこを気に入られたのか、雁弥は菊華が所属する喜劇部(仮)へと入部させられ、脚本を書くように命じられる――。

『ようこそ実力至上主義の教室へ』(衣笠彰梧/MF文庫J)


希望する進学、就職先にほぼ100%応えるという全国屈指の名門校・高度育成高等学校。最新設備の使用はもちろん、毎月10万円の金銭に値するポイントが支給され、髪型や私物の持ち込みも自由。まさに楽園のような学校。だがその正体は優秀な者だけが好待遇を受けられる実力至上主義の学校だった。

 作品を完結させる腕とネームバリューを持つエロゲ出身ライターは、編集者にとっても即戦力として頼れる存在。固定ファンのいる作家ならば新作小説でもある程度の売り上げが見込めるので、お金をかけた宣伝もしやすいようです。

 エロゲ業界で人気の衣笠彰梧氏(シナリオライター)とトモセシュンサク氏(原画家)のコンビが手掛ける『ようこそ実力至上主義の教室へ』などは、なんとPV用にショートアニメまで作られています。しかも、パッと見はTVアニメのPVかと思ってしまうようなクオリティ。こうした宣伝からも、両氏の作品に対する出版社側やファンの期待が見て取れますね。