ゴキブリと戦う人に聞いてみた「なぜその仕事を選んだの?」フマキラー課長の使命感 | ニコニコニュース

「なぜゴキブリと戦うの?」 フマキラーの戸村彰氏に聞いてみた クランクイン!
クランクイン!

 日常生活における人類の天敵といえば…そう、ゴキブリだ。誰もが一度はカサカサと猛スピードで走るヤツらの姿に悲鳴を上げた経験を持っているはず。ドラッグストアやスーパーには、そんなゴキブリを駆除するための殺虫剤が所狭しと並んでいる。開発元のメーカーに勤務する人々は、なぜゴキブリと戦う職業を選んだのだろうか。フマキラー株式会社マーケティング部・課長の戸村彰氏に、知られざる殺虫剤業界の実情について聞いた。

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 かつてはアパレル業界で営業マンをしていたという戸村氏。フマキラーへ転職を決めた理由はささいなことだったという。

 「転職を考えたときにたまたまフマキラーのことを知って興味を持ちました。特に虫に対して思い入れがあったわけではなく、むしろゴキブリは今も昔も変わらず苦手です(笑)。ただ開発の人間の中には、虫が好きだったり化学関係の研究をしていたりという理由でこの仕事に就いた者もいると思いますよ」。

 フマキラーは現在、広島工場で商品開発を行っている。ゴキブリ殺虫剤の開発チームは10名程度。工場ではゴキブリや蚊、ハエなど大量の害虫を飼育しており、時には自らの体を実験台にして新製品の効力を試すこともある。入社当時の研修でその光景に戦慄したという戸村氏だが、現在ではすっかり慣れたのだとか。「触るのは今でも無理ですけどね(笑)」。

 フマキラーのゴキブリ殺虫剤の国内シェアは現在、アース製薬、金鳥に続く3番手。毎年3月~4月頃にドラッグストアやスーパーでの棚割りが決まるため、いかに他社にはない魅力を打ち出してPRできるかが勝負となる。

 「フマキラーでは何より殺虫効果を重視しています。薬剤だけでなく、たとえば噴射口の形状も対象に応じて最適化しています。そのために金型工場を自前で持っているのはフマキラーだけですね」。

 とはいえ、殺虫剤で使う薬剤は各社共通のものが多く、明確な差別化は困難。そこで戸村氏が注目するキーワードが「予防」だ。

 「以前はゴキブリが出てから対処する商品が多かったのですが、今後はそもそもゴキブリが出ないように予防する商品がトレンドになるでしょう。また、清潔さや処理のしやすさも重要なポイントです。弊社では-85℃でゴキブリを凍らせる『ゴキブリ凍止ジェット 除菌プラス』を発売していますが、この製品は殺虫剤を使用していないため食品まわりでも使えますし、ニオイやベタつきもないので好評をいただいています」。

 最後に「この仕事に就いてよかったこと」を聞いてみると、戸村氏は顔を引き締めて「人々の命を守るという使命を得たことです」と答えてくれた。

 「フマキラーは他社に先駆けて海外展開を行っていますが、特に海外では蚊が媒介する感染症で大勢の人々が亡くなっています。ゴキブリはそこまで恐れなくてもいいのですが、やはり多くの菌を持っており病気を媒介します。人々の命を守ることが殺虫剤メーカーの使命なのです」。

 虫によるあらゆる被害をゼロにする使命を帯びて、殺虫剤メーカーの戦いは今後も続いていく。(取材・文・写真:山田井ユウキ)