選書は"クズ本"ばかり...!? 利用者のニーズを無視した「TSUTAYA図書館」の実態 | ニコニコニュース

画像は「武雄市図書館HP」より
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 佐賀県武雄市の図書館で購入された図書資料の内容が議論を呼んでいる。武雄市図書館は、2013年から、全国初の事例としてTSUTAYAを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)を指定管理者とする運営が始まっている。

 図書館には、スターバックスコーヒーとTSUTAYA店舗が併設されている。コーヒーを片手に、TSUTAYAと図書館の雑誌や書籍が自由に読める。朝の9時から夜の9時まで年中無休の365日開館も話題となった。貸出にはTポイントカードも使用可能であり、図書館利用の場合、自動貸出機1回を使用するごとに3ポイントが付与される。

 次世代の図書館として注目を集める一方で、政策がスタートした2013年度に購入された約1万冊の図書資料が"クズ本"すぎると問題視されている。

 約1万冊の内訳は、とあるTwitterユーザーによって公開された「初期蔵書受け入れ費で購入された資料」で確認できる。文書の作成元は図書館の管轄機関である武雄市教育委員会である。

 その内容は、自己啓発書、ビジネス書、スピリチュアル・風水・占い関連本、心理学系読み物、健康系エッセイ、グルメガイド、旅行ガイド、着こなし・裁縫・料理本、資格対策本、パソコン(ソフト)ガイド本、などだ。図書館で人気の高い、ベストセラーの現代小説などの姿はほとんど見受けられない。

「図書館の資料に何を取り入れるかという仕事は選書と呼ばれます。選書は利用者の需要もふまえて行うので、上記にあげられたジャンルの本も含まれていいでしょう。ただし、リクエストが殺到しないであろう、まったく無名の版元や著者の本が複数冊買われています。さらに、佐賀県には縁遠い埼玉や千葉のラーメンガイド本まで買われています。まともに選書をしているとは思えません」(図書館事情に詳しいフリーライター)

 ラーメンガイド本以外にも、複数の出版社から出ている東京ディズニーランド、ディズニーシーのガイド本が網羅的に買われていたり、国内外の旅行ガイド本も各地域、各都市、各国ごとに大量に買われていたりする。この手の本は毎年、最新情報が更新され発行される。武雄市図書館が購入しているのはほとんどが2~3年遅れの"型落ち本"である。インターネット上で指摘される"TSUTAYAの在庫押し付け"と言われても仕方がない状況だ。

「図書館の蔵書は時代や利用者のニーズに合わせて、随時入れ替えられることがのぞましいとされています。それが、蔵書新鮮度として図書館評価の対象ともなるんです。ただし、蔵書はバラバラに収集されるのではなく、相互に有機的なつながりを持たなければなりません。約1万冊の内訳は、ジャンルが偏っており、人文社会科学などの学術的な性格を持つ書籍が皆無なのも問題ですね。値段が高いものの広く読み継がれるべき学術書ではなく、古本屋では100円で投げ売りされているような本ばかりというのは疑問を感じます」(前出・同)

 約1万冊の書籍は、平均すると1冊あたり1,000円以上の購入コストがかかっている。他に買うべき本があるのではないか、という疑問は誰もが持つのではないだろうか。

 武雄市図書館では、TSUTAYA運営による図書館開館に先駆けて、音楽CDや映画などのDVDが大量に破棄されている。これは併設されるTSUTAYAへの配慮ともいわれた。さらに、新聞縮刷版や郷土資料など、日常的な需要はないものの、調査研究に役立つ資料も破棄されている。中には国会図書館にも所蔵がない資料も含まれるという。

 武雄市図書館は「おしゃれで快適」「年中無休で便利」と好評価がある。しかし、利便性追求の果てに、"文化のインフラ"としての図書館の本質が失われつつあるのではないだろうか。
(文=平田宏利)


※画像は「武雄市図書館HP」より