「ドナルド・トランプ大学は詐欺だった」元生徒たちの証言

150826trumpuniscam.jpg


生徒たちの悲痛な思いがひしひしと伝わってきます。

お騒がせ不動産王ドナルド・トランプ。共和党の大統領候補者レースで支持率ナンバーワンとなり、世界中をびっくりさせました。そんなトランプは大学も経営してたことがあるんです。大学が設立されたのは2005年。学位を取れないのに「大学」を名乗っているとして、2011年には「トランプ・アントレプレナー・イニシアチブ」へ名称を変更しています。

ただし、元生徒からの評判はびっくりするくらい悪く、「あれは詐欺だった!」とまで言われてます。不動産王から実践的なノウハウを学べると思ったのに、やたらと高い教育費を押しつけられた人もたくさんいるのだとか。2011年にはニューヨークの司法長官が、トランプ大学は宣伝していた通りの教育を提供していないとして、4,000万円の訴訟を起こしていました。

これに対してトランプは「弁護士たちは選挙献金が欲しいから私たちを脅しているだけ」とバッサリ。トランプ大学はまっとうな学校であると主張しています。

そこで米gizmodoは連邦取引委員会(Federal Trade Commission)から、トランプ大学の訴訟記録を手に入れました。ささいなことから大きなことまで。トランプ大学がどうマズかったのかが伝わってきます。

ケース1: 書籍に35,000ドル(約423万円)も払わされた人

ドナルドトランプ大学は、「不動産業会で活躍したい」と願う善良かつ素直な人々を騙していたのだと思います。わたしが35,000ドル(約423万円)で得たのは、図書館で誰でも手に入れることのできる本でした。

とにかく払ったお金を返して欲しいです。ドナルドトランプの罠にかかった自分が馬鹿だったと、すごく恥ずかしくなります。追記: もしお金が戻ってきたら、それについては感謝します。以上です。

ケース2 : 全米最大の不動産データベースサイト「Zillow」を利用すればよかった

2008年11月にトランプ大学後援のセミナーにインターネットとEメールで招待されました。3日間のセミナーで価格は1,495ドル。そして、セミナー最後の11月9日に「成功するには一対一のコーチングが必要」と言われました。コーチングのお値段は15,000ドルから25,000ドル(およそ181万円から303万円)。

しかも、前日にはクレジットカードの利用限度額をひきあげるよう参加者に呼びかけています。11月9日に高額のコーチングに申し込んだのは、たった一人だけ。さらに競争に勝ち抜くうえで役立つ投資家用のパッケージソフトウェアの購入もおすすめされました。このソフトウェアがあれば土地を購入するうえで優位にたてるとのことでした。わたしはまんまとソフトウェアを購入し、数週間後に受けとりました。

その後、わたしは12月15日に自宅を引っ越し、2ヶ月後にやっとネット環境が整いました。そこでトランプ大学は役に立たないソフトウェアを売りつける詐欺をしていると主張するサイトに出会ったんです。ソフトウェアは無料でZillowを利用して手にいれることのできるものでした。

トランプ大学の関係者に連絡しようと、フェニックスのフルフィルメントセンターの住所を手に入れ、新品のソフトウェアを返品しました。これもビジネスに必要なコストだと自分を納得させようとすることもできます。しかし、1,494ドル(およそ18万円)もの授業料を払わせたり、追加でソフトウェアや個人コーチングなどを購入した人にだけコースの内容を教えたり。これはフェアな取引ではないと思います。

実際、不動産取引に関するテクニックなどを学ぶには、15,000ドルから25,000ドルのプログラムに参加しないといけなかったんです。これは不正なビジネスだと思われても仕方ないでしょう。さらに、わたしが買ったプロダクトを使うことができないと彼らは知っていました。なぜなら、ソフトウェアには月29.99ドル(およそ3,630円)のサポートに申し込む必要があったからです。こんな策略にひっかかったのはわたしだけだと思いますが...。もし全額かが返ってこないなら、せめて半額だけでも戻ってきてほしい。

ケース3 : くじびきでiPadが当たったけど決して手に入れることのなかった人

2010年の8月にスコッツデールで、夫と一緒にトランプのセミナーに参加しました。そこでわたしはiPadを当てました。主催者はその場ではiPadを渡さず、トランプイニシアチブの連絡先をくれました。後日そこに連絡しましたが、連絡は一切なし。一応ほかの担当者と連絡はとれましたが、途切れ途切れにしかやりとりをできていませんでした。

メールの記録は残っていますし、電話をした日付も残っています。ただし、会話の録音は残っていません。同じようにiPadが当選したのに商品を受け取っていないのは、わたしだけではないはずです。何度も「まだサプライヤーから商品が届いていない」という返答を受け取り、問い合わせる労力が無駄だったと感じました。なにかしらの助けが必要だと思ったんです。他の人たちも同じだと思います。残念ながら同じ境遇に人で知りあいなのは一人だけなのですが...。

追記: iPad2を受け取るはずでしたが、新しいiPadはすでに発売されています。もしiPadを受け取ることができるのなら、新しい方でお願いします。こんなに待ったのですから。

ケース4 : 人生をやり直そうと思っていた人

わたしは2008年10月に離婚しました。2009年5月に新聞で偶然みつけたのがトランプ大学の広告でした。ちょうどビジネスを始めてみようかな...と思っていたところでしたし、一回目のセミナーは無料でした。このセミナーを受けて、「自分も不動産投資をやっていけるかもしれない...」と思いました。

3日間にわたるセミナーに参加するために、1,495ドルを支払いました。これで不動産投資について学ぶことができる...はずでした。わたしは多発性硬化症や脳卒中を経験していたので、取引について手とり足とり教えてくれる人が必要でした。トランプ大学はそんな希望を叶えてくれると保証していたんです。2回目のセミナーでクレジットカードと貯金について聞かれました。この時点ではまだトランプ大学に入ろうと決めていました。情けないことに高い授業料も投資だと信じていたんです。

2009年6月にはロサンゼルスで開催されたクリエイティブファイナンスのセミナーに参加しました。 そこでわたしは個人メンターのために2,000ドル(およそ24万円)を支払いました。しかし、セミナー後しばらくたっても連絡はありませんでした。

2010年4月にやっとメンターと話すことができました。そして今わたしはセクション8(貧困者に政府が家賃を補助するプログラム)受給者で、SSI(アメリカにおける生活保護の一種)に頼って生活しています。離婚届を受け取ったとき、住宅は自分のものになるはずだった。どうして彼らがわたしからお金を奪ったうえに家までもっていったのか理解できない。政府のお世話にならず自活したかったのに...。以上です。

ケース5 : 「ゴールドエリート」パッケージに申し込んだ人

わたしはトランプ大学の「ゴールドエリート」パッケージに申し込みました。このプログラムは説明されていたものとは、まったく異なるものでした。だから返金を求めたのに、まったく何も受け取っていません。「ゴールドエリート」パッケージに申し込んだのは、3日間にわたるトレーニング(もちろん追加料金が必要)でした。ゴールドエリートパッケージの価格は34,995ドル(およそ423万円)。これがあれば不動産投資ビジネスを確実に軌道に乗せることができる、それを約束する指導をしてくれるのだと聞かされていました。

そんなプログラム、特ににメンタリングはまったくのゴミです。約束されていたものとは、まったく違います。去年4月時点では差し押さえ物件の購入に関するトレーニングにおいて「メンターが最初に取引を最後まで指導する」と言われていました。トレーナーのJames(仮名)は「Rick(仮名)によるメンタリング内容は、物件の試算や分析、オファーや契約の方法から、売り手や弁護士との交渉、実際の購入における契約書の書き方など盛りだくさん。長期的な投資プランまで一緒に考えてくれるはずでした」

Jamesは「3日間のトレーニングの90日後にはRickとJamesから初めての不動産購入がうまくいっているのかフォローの連絡がある」と言っていました。とにもかくにもトランプ大学のプログラムは、不動産取引を始めるにあたり何の役に立ちませんでした。間違った方向に進んでしまったのですから、むしろマイナスです。

他の、より役立つ授業を受けるべきでした。何よりこんな授業がとても高額だったのです。トランプ大学はわたしの問い合わせに関してろくな返事をすることがなかったので、わたしは弁護士と協力してトランプ大学に対応を求めていました。そしてそれにも決められた期間中に返事はありませんでした。現時点で問題は何一つ解決せず、うやむやになっています。

ケース6 : まったくの詐欺だと主張する人

Prosper Incとトランプ大学は不動産投資に関するトレーニングを提供すると約束していました。代表者によると1,000万ドル(およそ12億円)以上を毎月稼ぐことだって可能になるとのことでした。わたしは不動産投資に関連する法的に手続きなどを学びたいと考えていました。これでもう一つの収入源を得たいと。クリエイティブ職についていたため、わたしは不動産投資に関する予備知識や実践的な経験などはありませんでした。これをProsper Incとトランプ大学は知っていたんです。9,495ドル(およそ114万円)でプログラムを購入しましたが、彼らが提供したプログラムは想定していたものとまったく違うものでした。

さらに彼らは、希少性の原理(珍しいものに価値をおく考え方)にもとづいた神経言語学プログラミングや高圧的なセールス戦略を駆使していました。そうやってプログラム参加者を増やしていくんです。たとえばスタッフはProsper Learning用のHSBCクレジットカードを登録させられませす。不動産取引のためという名目ですが、実際はプログラムの授業料を支払わせるためのもの。

さらにスタッフは投資余力を判断する電話インタビューにおいて、インタビュイーの経済状況を審査させたりしていました。もちろんProsper Incとトランプインスティチュートプログラムのためです。こういった倫理的に問題のあるやり方で生徒となる人たちから投資を受け、何も役に立つことは教えていなかったんです。

これらが無責任かつ違法な詐欺的な彼らのやり方です。彼らが数え切れない人を騙して食いものにしてきたということ、これこそが訴訟原因です。押し売りでProsper IncとHSBCのクレジットカードを契約させ、嘘をついて財政情報を集めていた。さらに生徒が返済可能であるかも考慮されていなかった。これは州や国の刑法に反するもので、彼らの免責事項がまったく中身のないものであったことは明らかです。

ケース7 : メンターが消息不明だった人

不動産のクラス15,000ドル(およそ181万円)に加えて、コーチングに20,000(およそ242万円)ドル、追加で30ドルを支払いました。にもかかわらず一ヶ月以上なにも連絡がなく、コーチングもありませんでした。さらに他の授業を受けるようにいわれたうえにコーチングの返金も不可能。一応ほかのメンターがついたものの下請けの詐欺師でした。さいわい2年間のプログラムには申し込まなかったので、不動産ビジネスについて間違った方向に進むことなく自分で学ぶことができました。


image by PathDoc/Shutterstock

Matt Novak - Gizmodo US [原文]
(Haruka Mukai)