高まる批判、夢破れる=エンブレム作者の佐野氏―東京五輪 | ニコニコニュース

 「いつの日か五輪のシンボルを作ってみたかった。夢は捨てなければかなうんだと思った」。7月24日、自身の作品が2020年東京五輪のエンブレムとして発表された際、佐野研二郎氏は感激をそう表現した。

 ところが程なくエンブレムをはじめ、別の作品にも盗用を疑う声が出た。盗用そのものは最後まで否定したが、高まる世間の批判の中で、取り下げを申し入れざるを得なくなった。

 騒ぎの発端は、五輪エンブレムがベルギーのリエージュ劇場のロゴと酷似しているとの指摘だった。「全くの事実無根。これまでの知識、経験の集大成として仕上げた」。佐野氏は疑惑を否定したものの、ビールのキャンペーンの景品で第三者のデザインを利用したことが判明したほか、名古屋市の東山動植物園のシンボルマークが外国の施設のものに似ているなどの指摘が相次いだ。

 佐野氏は多摩美術大学を卒業後、大手広告代理店勤務を経て東京都内にデザイン事務所を設立。1964年の東京五輪で故亀倉雄策氏が太陽をイメージしてデザインしたエンブレムが好きで、「それを大切に継承しながら、新しい東京五輪をつくっていきたい思いがあった」と語っていた。

 エンブレムの「T」には東京、チーム、トゥモローという明確なメッセージが込められていたが、5年後の祭典の日を迎えることなく消滅。1日、東京都渋谷区にある佐野氏の事務所には、エンブレムに関する問い合わせの電話やメールが多数寄せられたという。事務所の関係者は、佐野氏が終日不在で「戻る予定もないので、対応は難しい」と話した。