「機動戦士ガンダムオンライン」大型アップデート「U.C.0096」直前インタビュー。新コンテンツやバランス調整に込められた運営開発チームの意図とは

 バンダイナムコオンラインは2015年8月26日,同社が運営するPC用オンラインゲーム「

機動戦士ガンダムオンライン

」にて,大型アップデート

「U.C.0096」

を実施する。

 このアップデートでは,ゲーム内に宇宙世紀0096年前後までの要素が登場し,さらに大規模なゲームバランス調整となる「統合整備計画」も施される。

 今回4Gamerでは,開発プロデューサーの

佐藤一哉氏

と開発ディレクター

曽根将友

氏,そして運営プロデューサー

南舘 怜

氏の3名にこのアップデートに関するアレコレを聞いてみた。

「機動戦士ガンダムUC」までの機体やフィールドが続々登場

 今回のアップデートにて「ガンダムオンライン」ではゲーム内の時間が大きく進み,「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダムZZ」を含め,「機動戦士ガンダムUC」までをカバーすることとなる。

2014年12月のインタビュー

では

「次は“Z”の時代」

との発言があったが,それを大きく超えることとなるわけである。

 「当初は,以前お話ししたとおり,『機動戦士Zガンダム』の時代を大きく取り上げようと開発を進めていました。しかし,あの作品は連邦軍の内部抗争をメインに描いており,これまでの『ガンダムオンライン』が構築してきた世界観とマッチしなかったんです。
 たとえばゲーム内のコミュニティは,ジオン軍であれば『自分はジオンのパイロットで,連邦は敵』といった意識で形成されています。そこを『このフィールドでは,あなたはティターンズ』『あなたはエゥーゴ』といった感じにしてしまうと,おかしなことになってしまいかねません」
(佐藤氏)

 確かにその時代は連邦だけでほとんどの話が進み,ジオン(残党軍やアクシズはいるが)はあまり絡んでこない。

 「それでは次に連邦軍とジオン軍が戦う構造となっている時代はどこかというと,まず『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が出てきます。でも,どうせなら皆さんの記憶に新しいであろう『機動戦士ガンダムUC』までやってしまおうということになりました。とくにこの作品のepisode 4では新旧の機体が入り交じって登場していますので,『ガンダムオンライン』の世界観にも近いんじゃないでしょうか」(佐藤氏)

 なお,ゲーム内での“チーム分け”は,従来どおり「地球連邦軍」と「ジオン公国軍」の二つのみだ。「機動戦士ガンダムUC」での「エコーズ」と「ロンド・ベル」が連邦軍,「ネオ・ジオン」と「ジオン残党軍」はジオン軍という扱いとなる。また,同じ連邦軍内で対立していた「機動戦士Zガンダム」の「エゥーゴ」と「ティターンズ」は,どちらも連邦軍となる。当然,連邦軍のプレイヤーは連邦軍の機体すべてを使用でき,ジオン軍も同様となる。

 時代が進んだことに伴って,毎月追加される新機体にも,宇宙世紀0096年前後までのものが登場する。

 その手始めとなる8月には,連邦軍に「ジェスタ」と「リック・ディアス(赤)」,ジオン/ネオ・ジオン軍に「イフリート・シュナイド」と「ギラ・ドーガ(袖付仕様)」がそれぞれ実装される。


 「9月からは,『機動戦士Zガンダム』以降の機体が毎月登場します。時代順や作品順というよりも,これまでと同様にゲームバランスを踏まえて,そのときどきに見合った機体を順次リリースしていきます」

(佐藤氏)

 「機体は今の時点で約200種類存在しており,“ガンダムのアクションゲーム”としては最多を誇っています。それぞれ特徴付けをしつつ,ゲームバランスにも配慮しなければなりませんから,新機体の開発は非常に難しくなっています。しかし『この機体はこうだよね』と納得していただけるような仕上がりを目指しています」(曽根氏)

 新フィールドとしては,「機動戦士ガンダムUC」のepisode 4にて戦闘の舞台となった「トリントン基地(0096)」が実装される。エース機体は連邦軍が「ジェスタ(トライスター)」および「デルタプラス」となり,そしてジオン軍には初の「エース本拠点」として大型モビルアーマーの「シャンブロ」が登場する。

 ちなみに「機動戦士Zガンダム」に登場するサイコガンダムなどの大型機体は,このシャンブロ同様にプレイヤーが操作できない形で登場する可能性が高いという。

設計図はガシャコンからゲーム内通貨での直接販売に

 システム面では,まず戦闘時やブリッジなどのユーザーインタフェースに改修が加えられる。時代の変化をビジュアルで表現しているとのことだ。

 そして大きな変更としては,これまでガシャコンでしか入手できなかった機体の設計図を,ゲーム内ショップで購入できるようになることが挙げられる。つまり,ゲームをプレイしてゲーム内通貨を貯めていけば,最新機体を除くほぼすべての機体の設計図をプレイヤーが選んで購入できるようになるのだ。

 「初心者や中級者が新しい設計図を必要とするとき,ランダムで何が手に入るのか分からないという状況はあまりよろしくありません。またガシャコンの種類が増えすぎて,どれを回せばいいか分からないという問題も生じていました。
 そこで強くなっていくための導線として,対戦してゲーム内通貨を貯め,ショップに行って必要な設計図を購入するという流れを確立しようと考えたわけです。また,本作はガンダムのゲームですので,皆さんそれぞれに好みの機体もあるでしょうから,その機体の設計図を入手することもコツコツとプレイするモチベーションにつながるのではないかと」
(佐藤氏)

 「各機体とも銀の設計図は25万GP,金の設計図は500万GPという設定になっています。 ちなみに25万GPと500万GPという数字は,これまでの通常ガシャコン1回3000GPを回したときに,それぞれの設計図を入手できる期待値から算定しています。したがって,すでに入手している設計図の価値が大きく変わってしまうことはありません」(南舘氏)

 同時に通常ガシャコンはゲーム内通貨が使用できなくなり,報酬やイベントなどで入手したガシャコンチケットでのみ回せるようになる。その代わり,ガシャコンから出るものは,従来よりも価値の高い内容になるとのことで,具体的な数値こそ非公開だが,たとえば金の設計図なら今までよりも入手確率が高まるとのことだ。

 従来の「チャレンジ」機能は,アチーブメント要素が追加され「称号システム」となる。これは設定された特定の条件(チャレンジ)をクリアすると称号がアンロックされるというものだ。称号はパイロットカードに設定可能となっており,とくに追加効果などは設定されていないが,ゲーム内でほかのプレイヤーに向けたアピール要素としても使える。

 「チャレンジはかなりの数を用意しているのですが,中には達成条件が厳しく,一握りの人しか達成していないものもあります。今回,そこに称号を付与することで,そうしたレアなチャレンジを達成したことを明示しようと考えました。
 たとえば,称号のリストでは『取得率3%以下』『5%以下』といったレア度を確認できますから,そういった称号をパイロットカードに設定すれば,自分の腕前をアピールできます。
 また,称号は約400種類ありますから,面白い言葉を選んでもいいですし,対戦好きやガンダム好きといった本作へのアプローチを示したり,戦闘中どんな役割を積極的に行うかといったことを示したりすることも可能でしょう」
(佐藤氏)

 なお,チャレンジの内容は,一部新規のものが追加されるが,基本的には従来どおりの内容とのこと。またこれまでにクリアしたチャレンジがあれば,今回のアップデートと同時にその称号をまとめて入手できる。

 そのほかパイロットアバターには「機動戦士ガンダムUC」に登場する「エコーズ」「ロンド・ベル」「ジオン残党軍」の汎用制服が追加となる。

 また「機動戦士ガンダムUC」の楽曲を収録したBGMパック「『機動戦士ガンダムオンライン』原作BGMセットVol.4」も販売される予定となっている。

機体同士の戦闘が激しくなる調整を施した今回の「統合整備計画」

 今回のアップデートでも,前回同様に「統合整備計画」と称した全体的な機体のパラメータ調整がなされる。今回は「機体同士の戦闘をもっと面白くしたい」をテーマに,「膠着状態のつまらなさ」「特定の機体・兵装が突出して戦況に影響を与えている」「戦闘のワンパターン化」の改善を試みるという。

 具体的な解決策は4つあり,一つは「兵科カテゴリ間で開きすぎている優劣を均一に近づける」という内容である。

 「現状,兵科の中では強襲タイプが最も多く使われています。そもそも強襲タイプは機体の種類が多いので,ある程度偏るのはしかたない面もあるのですが,それを差し引いても,今は『強襲タイプが万能で,ほかのタイプを使う必要がない』といった状態に陥っています。そこで,戦況に応じてタイプを選択できるよう,それぞれの役割に価値を持たせるような調整を施しました。
 また,低〜中コストの機体については,以前から,パワーがそれほどでなくとも数で押すといった形で使えるような位置付けにしているのですが,この機会にもう一度,そこを強調するような調整にしています」
(曽根氏)

 二つめは,「プレイヤー一人あたりの戦力ゲージのへの影響度を,本拠点攻撃(コア凸)=モビルスーツ撃破にする」というもの。

 「これはモビルスーツ同士のバトルにおいて,撃破する/されるという部分を激しくするという狙いがあります。ルール上は確かに本拠点への攻撃が重要ですけれども,その本拠点を攻撃する味方をサポートするためにライン戦を行ったり,逆に本拠点を攻撃されないよう防衛したりと,さまざまな動きを取ってもらおうという狙いです。たとえ戦況が膠着しても次の展開,その次の展開と毎回異なるような状況を作り出したいと考えています」(曽根氏)

 三つめは,前回の統合整備計画から引き続き,「キルを取るためのワンパターンな動きの改善」である。本作では,相手を転倒させて動きを止めてから追撃し,キルを取るという流れが主流になっているが,転倒した側が何もできなくなってしまうため,大きなストレスを感じてしまいやすい。そこで前回は,しきい値を上げて転倒しにくくなるような調整が施され,以前よりも転倒の回数は減ったもの,やはり追撃してキルを取るという流れ自体は変わらなかったという。

 「前回の結果を踏まえ,今回は転倒するシチュエーションをもう少し限定する調整を施しました。実のところ,この調整だと転倒するときはほぼ撃破される寸前になっているため,何もできずに倒されるという印象を受けにくくなるかと思います。
 その代わり,今回は新たに転倒の前段階として『よろけ』を用意しました。これは『怯みよりは硬直するけれども,転倒にはおよばない』という状態で,よろけさせた側には攻撃チャンスが生じ,よろけた側にも硬直が解けたあとに逃げるチャンスが生まれます。したがって,その場に応じた駆け引きが生じるというわけです」
(曽根氏)

 四つめも前回からの継続となり,「プレイして改善したほうがいいと思われる細かい点の修正」である。

 「たとえば,爆風系の状態異常効果を与える武器は,現状だと“かすっただけ”でもフルの状態異常を引き起こします。とくに狭い空間でグレネードが飛んでくるときなどは,大変な思いをするわけです。そこで今回は,直撃すればフルの効果が出るけれども,それ以外は攻撃の中心からの距離に応じて効果が減衰するような調整を施しています」(曽根氏)

 また,カメラガンや低コスト帯レーダーポッド,低コスト帯ミサイル武器といった,比較的容易に有利な状況を作り出せる武器や設置物にも調整が加えられる。

 「とくにレーダーポッドは,破壊されないかぎり戦場に残り続けますから,それだけで相手側の侵入経路が大幅に制限されてしまいます。そこで今回は,レーダーポッドの隙を見つけて一点突破したり,あるいは裏を取ったりといったさまざまな選択がしやすくなるよう調整を施しました。
 また,ミサイルは,ロックオンさえしてしまえば,ある程度当たりますから相当に有利ですし,ロックオンされた側は前に出にくくなってしまいます。そこで撃破されても再出撃が容易な低コスト帯に調整を掛けることで,ミサイル本来の立ち位置に戻そうと考えました。
 全体的には,どんな機体であっても,これまでよりもう少し前線に出て戦えるような調整を目指しています」
(曽根氏)

 弱体化といえば,ゲーム内で猛威を振るっていた「ピクシー(フレッド機)」と「イフリートナハト」にも調整が加わる。

 「『ガンダムオンライン』では,極力弱体化をしないよう努めてきたのですが,明らかに性能が突出しているものや,緩やかにゲームバランスを崩壊させると判断できるものに関しては,今回のような全体調整のタイミングで弱体化するケースもあります。
 とくにこの2機体に関しては,データから見ても本拠点に与えるダメージが著しく高いと判明しています。以前,その2機体が本拠点を攻撃しにくくなるような施策も何度か試したのですが,それだとほかの190種類におよぶ機体も影響を受けてしまうんですよね。そこで今回,今後のことを考えて議論を重ねた結果,この2機体については弱体化するという判断をしました」
(佐藤氏)

 また,特定の機体が強くなると,その機体をプレイヤーのデッキから外せなくなってしまうという問題も発生するという。

 「そうなると本音ではあまり好みではないのに,使わざるをえないという状況が生じます。一方,私達は190種類以上の機体を提供しているわけですから,状況に応じてさまざまな機体を気軽に使い分けられるような環境を整えなければなりません。
 ただ,それは個性を消すという意味ではありません。またアップデートを重ねて環境が変化すれば,機体の持つ個性を活かす方法も変わりますから,こういった全体調整の機会にそれぞれを見直していきます」
(曽根氏)

 「とはいっても,“極力弱体化しない”という方針は基本的に今後も変わりません。のちのち弱体化しなくとも済むよう,私達が各機体のリリース前にきちんと検証しておくのが大前提です。それでもプレイヤーの皆さんが実際に遊んでいく中で,さまざまな戦術や手法が生まれて,中には私達が想定できなかった事態も出てきます。そうした場合に,突出したものをやむなく調整するわけです。影響範囲が大きいのでどうしても大型アップデートのタイミングでの反映となりますが,今後も同様な方針で調整していきます」(南舘氏)

マッチングには非公開の「レーティング」を導入。従来の「階級」は強さを示す指標に

 統合整備計画と同時に,今回はマッチングと階級の見直しもなされる。新しいマッチングシステムでは,プレイヤー各自の戦績や勝利への貢献度などを加味した「レーティング」が用いられることとなる。

 「これまでの階級はプレイの腕前よりも,階級試験をうまく突破できる人が大将などの上位を占める結果となっており,私達が考えるオンライン対戦アクションからはズレていました。そこで今回は,あくまでも“対戦で勝つ人が強い”ということをベースに評価を行い,それに基づいたマッチングを導入しました。このレーティングは内部パラメータとなっており,ゲーム内では他人のものはもちろん,自分自身のものも確認できないようになっています」(佐藤氏)

 一方,階級はレーティングに基づいてプレイヤー各自の強さやプレイの巧みさを示すものとなり,毎週のメンテナンスごとに行われるプレイヤー全体の相対評価によって変動するようになる。

 「階級の変動については,以前あったPPシステムのように,単純な勝ち負けをベースに行うといろいろ問題が生じます。たとえば,負け続けると一生懸命プレイしてもどんどん階級が下がってストレスが溜まりますし,逆に勝っても大人数の集団戦なので自分が何かをしたから勝ったということを意識しにくいのです。
 そこで,『あなたは今週頑張ったから,翌週は大将に昇格』となるような仕組みに変えました。この仕組みだと,少尉から大将に急上昇するケースも出てくるかと思いますが,そういう人は本当に強いと捉えてください。ちなみに,ある週まったくプレイしなかったからといって翌週に階級が大幅に下がることはありません」
(佐藤氏)

 以上が,今回の大型アップデートにおける主だった新要素とバランス調整の内容となる。最後に,今回インタビューに応じていただいた3名から,今後の「ガンダムオンライン」の展開に期待する人に向けたメッセージを掲載して本稿の締めとしよう。

 「昔から『ガンダムオンライン』を遊んでくださっている方もいらっしゃれば,このアップデートを機に遊んでみようという方もいらっしゃるかと思います。そうした多くの方が,どんな時間帯に遊んでも楽しいと思える内容にしつつ,昔からある本作ならではの部分を出していきたいと考えています」(曽根氏)

 「『ガンダムオンライン』もサービスインから2年半が経過し,ついにユニコーンガンダムが登場する時代を迎えました。私自身,ずっと本作に関わってきましたが,非常に良いゲームだと自負していますし,今後の伸び代もまだまだあると考えています。皆さんが遊びやすい,最強のガンダムゲームを目指して頑張っていきます」(佐藤氏)

 「これからもプレイヤーの皆さんのご意見を反映した,より良いサービスを目指します。末永く遊べる『ガンダムオンライン』を提供していきますので,今後ともよろしくお願いいたします」(南舘氏)

「機動戦士ガンダムオンライン」公式サイト