妖怪ウォッチ、早くもブーム終了で投げ売り?販売激減、過剰生産でブランド失墜 | ニコニコニュース

「妖怪ウォッチ」(「バンダイ公式HP」より)
Business Journal

 Facebookでは最近、「過去の思い出を振り返ってみましょう」というお知らせが表示されるようになった。筆者は、Facebookを絵日記代わりに使っているのだが、1年前の8月の投稿は、当時小学1年生の息子と戯れるゲームソフト『妖怪ウォッチ』(レベルファイブ)関連の投稿一色であった。

 近所の総合スーパー(GMS)の玩具売場で40分の1という低確率の抽選販売「ウォッチ」を当てて歓喜しているものや、近所のお祭りの屋台で、当時貴重だった「妖怪メダル」(2枚入りで税込194円)を当たり商品とする価格500円のクジに多くの子供が群がっている様子を投稿していた。

 それが今年8月初旬、同じGMSの玩具売場ではレジ前で妖怪メダルが静かに販売されており、3個セットで税込500円だった。通常より82円安だ。

 コンビニエンスストアやスーパーマーケットの処分棚では、妖怪ウォッチ関連の菓子や玩具、文具などが格安で販売されているのを目にすることが増えてきた。昨年のフィーバーを思うと、隔世の感すらある。

●妖怪ウォッチ人気凋落の理由

 流通業界関係者は、妖怪ウォッチの人気が下落した理由には2点あるとの見方が広がっている。

 1点目は、切り替え戦略のまずさだ。今は改善されているが、昨夏のブーム時のメダルは、最初に発売されたウォッチでは使えないなど、新しく販売される商品と従来の商品に互換性がなく、希少性もあって新バージョンを持っていない子供が満足に遊べない商品だった。我が家もウォッチが当たったものの使えるメダルがなく、すぐにタンスの肥やしになって息子は一時期興味を失っていた。

 実際は商品の供給が追いつかないほどの売れ行きだったようだが、“飢餓商法”と揶揄されるほどの品薄がマイナスに働いた。

 2点目は版権問題だ。商品化の版権は、基本的には版元のレベルファイブ関連ルートと、レベルファイブ・電通・バンダイを経由するルートの2通りあるようだ。昨年は、急激に人気が高まったため、版権が下りるまで6カ月前後の時間を要し、商品が店頭に並び出したのが秋口から年末にかけてとなった。そのため、年末商戦の足がかりとなる夏休みに妖怪ウォッチ商品の露出が少なく、小売店側が欲しい時に必要な品揃えがなされていない状況であった。

 その後、一挙に流通量は増えたが、品薄だった時期に希望数量が入荷しないことを見越して各小売チェーンが複数の卸業者に多めに発注したため、メーカー側は過剰に生産することとなり、店頭を含む流通上でも多くの在庫を抱えることになってしまった。

 また、さまざまなカテゴリで版権が許可され、今年に入ってからは在庫過多とともに、あらゆる商品が妖怪ウォッチの主要キャラクターであるジバニャンだらけになった。しかし、春にはアニメで新キャラクター「USAピョン(うさぴょん)」を中心とする新展開となって話題を集めた。そのため、ジバニャン柄の商品はメーカー希望小売価格の10~15%で卸売業者に投げ売りされ始めブランド価値は下落、ブームから一転して負のスパイラルに陥っていった。

 小売関係者の話では、メダルはメーカー出荷で昨年の半分、小売店頭で昨夏の約4分の1の販売数、版権商品はそれぞれの商品発売時の5分の1~8分の1の販売数にまで落ちてきているという。

 さらに、昨年末『NHK紅白歌合戦』をはじめとして数々の特別番組に露出したため、“一発屋”のようなイメージがついて、年明けと共にブームが終了したように受け止められたことも戦略ミスだったと流通業界関係者の間でささやかれている。

●ポケモンとの違い

 基幹商品であるメダルに関しても、昨夏の流通政策に問題があった。トイザらスやイオン、イトーヨーカドーなどの玩具売場などに販売を限定し、コンビニ流通を活用しなかったため、全国津々浦々にまで商品を流通させられず、田舎の子供たちはメダルを手に入れることができなかった。

 似たようなケースで、1996年に『ポケットモンスター』(任天堂)の基幹商品である「ポケモンカード」は、トイザらスやイトーヨーカドーだけでなく、当時コンビニで47都道府県に唯一展開していたローソンを利用した。コンビニは、欠品しやすいという問題があるが、ローソンのバイヤーが事前発注や担当エリア内の展開方法をコントロールするなど工夫がみられた。加えて、ポケモンカードのメーカーであるメディアファクトリーが当時ダイエーグループだったため、グループ内のローソンに優先的に供給したことも見逃せない。

 ポケモンのアニメは当初全国放送ではなくテレビ東京系での放送だった。それに比べて妖怪ウォッチはBSジャパンで全国放送されていたわけで、メダルが全国展開できなかったのはコンビニ流通しなかったことと無関係ではないだろう。

 ゲームソフト販売においても、ポケモンは小学館と任天堂の戦略で、ローソンの「LOPPI」というマルチメディア端末に取り扱い在庫を優先的に振り分け、地方の子供たちに一気に行き渡らせた。この戦略の違いも、妖怪ウォッチ失速の一因であると推察できる。

 また、展開に当たって提携していたマクドナルドが、昨年7月に発覚した使用期限切れ鶏肉問題を機に18カ月連続減益したことも、悪影響を与えたとみる向きがある。

 妖怪ウォッチ関連商品の売り上げは、今年に入って急激に落ちているものの、それ以上に稼ぐキャラクターはいないというのが現状である。

 ポケモンブーム絶頂の97年12月、アニメの放送中にテレビ東京の放送演出が原因で光過敏性発作を起こした視聴者が多くいた。テレビ東京の発表によると、患者は750人、 入院した人は135人いた。この騒動の影響で一時人気は低迷し、当時、大手玩具卸では山梨の倉庫に2億円分の在庫が一挙に滞留したといわれていたが、さまざまな施策によって「世界のポケモン」といわれるまでに復活した。

 妖怪ウォッチが世界的なキャラクターになれるかは未知数だが、クールジャパン戦略にとって非常に重要なコンテンツであることは間違いない。

 年末の映画公開に向けての巻き返し戦略には注目だ。ジバニャンとピカチュウのバトルは、始まったばかりなのかもしれない。
(文=法理 健/流通ジャーナリスト)