戦国ラノベ業界に新レーベル「μNOVEL」登場!……ところで“大人向けラノベ”ってなに? | ニコニコニュース

左が「μNOVEL」ロゴ、左は天野喜孝デザインのマスコットマーク(リリースより)
おたぽる

 毎日新聞出版は9月1日、主に30~40代の大人をターゲットとした、ライトノベルの新レーベル「μNOVEL(ミューノベル)」を立ち上げ、10月27日から創刊することを発表した。

初回10月刊行は以下の3作品。
・『貴族(バンパイア)泥棒スティール』 作/菊地秀行 イラスト/末弥純
・『ザ・サード【完全版】1』 作/星野亮 イラスト/士郎正宗
・『イカロスの誕生日』 作/小川一水 イラスト/ゆうきまさみ

「30~40代の『大人』を主なターゲットとして、多くの愛読者を持つ実績ある作家陣を中心に、書き下ろし新作はもちろん、人気作の復刊企画を積極的にラインアップしてまいります」(毎日新聞出版のリリースより)とのことで、さすが全国紙の新聞社が手がける出版社、豪華な作家・イラストレーター陣が顔を揃えている。

 しかし、正直“新レーベル”というのには新鮮味に欠けるラインナップで、まるで祥伝社や早川書房あたりのノベルスの新刊案内のようだが、後発のライトノベルレーベルならば、どこも最初は実績ある作家陣でスタートするものだから、これはしょうがない。だがネット上では、「これは“大人向けライトノベル”なのだろうか?」と、疑問視する声もあがっているようだ。

 そもそも“ライトノベル”そのものの定義自体が曖昧で、「表紙や挿絵にアニメ調のイラスト(≒萌え絵)を多用している若年層向けの小説」(日経BP社『ライトノベル完全読本』より)といった説が、読者の共通認識としてなんとなくあり、出版社・レーベル側が「うちはライトノベルだ!」と宣言すれば、「そういうものか」となんとなく受け入れられている、というのが現状ではないだろうか。

 だというのに、「μNOVEL(ミューノベル)」は“大人向け”を標榜。SFレーベルからも著作を出版している作家たちが新刊を出すのだから、もともと曖昧な線引きがさらにあやふやになってしまい、そこに引っかかりを感じているライトノベルファンが多いようだ。

 実際、「週刊少年ジャンプ」を多くの中高年が愛読しているわけで、30~40代の大人をターゲットに絞ったライトノベルがあるのも当然だが、これでは「大人が求める本格的なライトノベル」(同リリースより)というよりも、「昔を懐かしむ、“おっさんホイホイ”」との声があがるのも無理はない。

 どうせ“大人向け”を謳うなら、当時77歳にして「ライトノベルを書く!」と堂々宣言、いとうのいぢの挿絵で、美少女高校生によるタイムリープもの『ビアンカ・オーバースタディ』(星海社)を書き上げた筒井康隆ぐらい、大胆で男らしい展開を期待したいものだが……。

 なお、10月以後の刊行予定もあわせて明かされており、名作ぞろいだが未完そろいの作家・火浦功や冴木忍、小池一夫御大など、「“大人向けライトノベル”とは一体なにか」という議論はさておき、普通に楽しみな作家陣がラインナップを彩っている。果たして本当に出版されるのかも含めて、今後の動向に注目したい。


■「μNOVEL」今後の発行予定
【2015年12月】
・林譲治 『新戦艦誕生(仮)』
・冴木忍 『砂の夢 水の眠り(仮)』
・星野亮 『ザ・サード【完全版】2 』

【2016年2月】
・火浦功 『明るい世紀末のすごし方(仮)』
・星野亮 『ザ・サード【完全版】3 』
・庄司卓 『ダンシィング・ウィズ・ザ・デビルス【完全版】上』
・小池一夫 『夢源氏剣祭文【全】』