誰もが乗りたくなる! 便利でスマートな電動車いす「WHILL」 | ニコニコニュース

デザインした人 杉江 理(WHILL代表)
プレジデントオンライン

100メートル先のコンビニに行くのを諦める――。車いすユーザーのそんな声をきっかけに電動車いす「WHILL」プロジェクトは始まりました。車いすは一般的にネガティブなイメージを抱かれがちです。でも考えてみればメガネだって、昔は目が悪い人だけが使うネガティブなものとして捉えられていました。それが今ではファッションアイテムになり、「グーグルグラス」のようなメガネ型の端末まで出ているわけです。だから車いすにしても便利でスマートであれば楽しくなり、極論すると、誰もが乗りたくなるはず。そのための手段として、車いすのデザイン性と機能性を高めることを考えていきました。

見た目の面では、とにかく乗り物に見えるようにしたかった。一般的な電動車いすは上部が椅子、下部がタイヤで構成されています。でも、室内で使ういすが動いていることは違和感につながりかねない。だからWHILLでは座席とタイヤにフォーカスが当たらないよう、それらの色をすべて黒にして目立たなくし、ハンドルアームにフォーカスが当たるようにしました。

乗り物に見えるようにするために、最も変えようとしたのが車いすに乗る人の姿勢です。そのため、車体を操作するハンドルは前方につけています。考えてみてください。車でもバイクでもハンドルは決まって前にある。だから、運転者がアクティブな前傾姿勢になるわけです。

そのハンドルを進みたい方向に押せば、最高時速6キロメートルのスピードで動きます(各国の法律による)。さらに、凸凹な歩道や砂利道を走破しながら7.5センチ程度の段差を越えられる四輪駆動のタイヤ、24個の小さなタイヤからなる小回りの利く前輪、「ブルートゥース」の搭載……、スペックを見れば行動範囲が広がることがわかると思います。今後はどこにいるかを知らせるためのGPS機能などを内蔵しようと考えています。

車いすユーザーも乗れる、まったく新しいパーソナルモビリティをつくるために実行したことは3つ。ユーザーの声を聞く、ユーザーになる、ユーザーを観察するということです。最初の半年は街中や老人ホームで車いすを使っている人に声をかけて意見を聞くことから始めました。それから僕自身も2カ月間、電動車いすに乗って日常生活を送ってみたら、日本社会の中では使いにくさがあることがわかった。電動車いすに乗って東京ミッドタウンにある会社に打ち合わせに行ったら、受付にすらたどり着けなかった。エレベーターがとてもわかりにくい場所にあったのです。

ライフスタイルを知るためには、朝起きてどこに出かけて家で何をしているかまで観察しなければなりません。だから声をかけて仲良くなった人の家に行って、一緒にご飯を食べたりもしました。WHILLのハンドルを後ろに折りたためるようにしたのも、このときにベッドから車いすに飛び乗る姿を初めて見て、車いすのハンドルが邪魔だと気づいたからなんです。

米国でヒット! ドコモと提携でGPS機能搭載も

2014年9月販売。シリコンバレーフォーラム 「ライフサイエンステクノロジー」部門最優秀賞など受賞作多数。本体価格99万5000円(税別)。先行予約分は完売し、現在までに米国を中心に100台以上販売。15年3月にNTTドコモと業務提携し、今後GPS機能の内蔵も予定。

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杉江 理(WHILL代表)
1982年、静岡県生まれ。日産自動車開発本部を経て、1年間中国・南京にて日本語教師に従事。その後2年間、世界各地を放浪し、新規プロダクト開発に携わる。2011年、WHILLプロジェクト開始。元世界経済フォーラム(ダボス会議)GSC30歳以下日本代表。

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