「回送バスに謝られた…」全国で目撃談 バス会社が語る運転手の苦しい胸の内 | ニコニコニュース

回送中に「すみません」の言葉を添えた行き先表示幕
withnews(ウィズニュース)

 「回送中のバスに謝られた」「路線バス腰低いんやけどwww」 ツイッターでは、表示器で「すみません」と謝る「腰の低い回送バス」の目撃情報があちこちでつぶやかれています。その狙いは何なのか、導入しているバス会社に聞いてみました。

各地で目撃情報
 回送バスに「すみません」や「申し訳ありません」などの表示を取り入れているのは兵庫、東京、青森、函館、京都、岡山、宮崎などの一部の路線バス。これらの都府県に住んでいない人にとっては「お詫び表示」はとても新鮮なようです。ツイッターには毎週のように目撃談があがっています。

 「回送って書いてるバスは多けれど、すみません回送中ですって書いてるバス初めて見た。丁寧。笑」


 「宮崎のバスは回送の表示が『すみません回送中です』なのね。なんと奥ゆかしい!」

 兵庫県姫路市を拠点とする神姫バスは、約15年前に明石エリアの路線バスで「すみません回送中です」を導入。当時の報道には「全国初とみられる」などとあり、最も早く「お詫び」を取り入れたケースと思われます。

 同社の担当者によると、お詫び導入は運転手からの提案で決まったそうです。もともと運行本数の多い明石エリアでは、運行ルートにまた戻るために始発の営業所まで引き返す回送バスも多くなります。同社の担当者は「詳しい導入の経緯は当時の社員が残っていないので分からない」としながらも、「バスをまだかまだかと待つお客様の列の横を、ただ『回送』のままで通過するのは忍びないと思ったのでは」と分析しています。

 行き先表示器が幕式からLED式に変わるタイミングとも重なり、スムーズに導入ができたそうです。ただ全路線では取り入れていません。「こうした表示が受け入れてもらえる地域性なのかどうか、そこは慎重に判断しています」

宮崎では方言でお詫び
 4年前にお詫びを導入したのは宮崎交通。「やっと来たバスが回送だとがっかり」と利用者から不満をよせられたのをきっかけに、「すみません」の文字を入れることに。ただ、当初は「字が多くて読みにくい」という不評もあったようです。
 それでも、遊び心を忘れていません。なんとたった1台だけ宮崎弁で「すんません」と謝るバスがあるのです。担当者は「単なるジョークです」と笑っていました。

「もっと謝りたい」 運転手の心理とは
 「本当は『止まれんで申し訳ありません。このバスは回送中でございます』にしたいところ。でもやっぱり字数制限があるので…」。こう打ち明けるのは5年前にお詫び表示を導入した両備グループ(岡山市)の担当者です。回送バスの運転手の心理を説明してくれました。

 「やっとバスが来たとホッとしたおばあさんが、ちらっと見てしょんぼりする様子。『待ってたのになんで通り過ぎる』と立腹される方もいます。本当にたまりません。停留所の前を通るたびに、一度止まって回送中ということを丁寧に説明したくなるほどですよ。ごめんなさい、ごめんなさいと思いながら通過してますよ」

 同グループでは運転手がたまたまテレビで他社のお詫び表示の取り組みを知り、すぐに採用することになりました。それでもまだ十分とは思っていないそうです。「『すみません』だけではまだ言い足りない。でも仕方ないですよね」

 次々と採用されつつある「すみません」の表示。全国の回送バス運転手がずっと抱えていた心の中の声をストレートに表したものと言えそうです。