iPhone 6sで4K動画、ってちょっと未来過ぎない?

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4Kで撮っても見るデバイスがないし。

iPhone 6s6s Plusが発表され、そこに4K動画撮影機能が搭載されることが判明しました。またひとつ時代が進んだ感がありますが、米Gizmodoでカメラマンも務めるMichael Hession記者は、「4K動画、そんなにメリットないんじゃ?」と冷静です。以下Hession記者、お願いします。

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iPhone 6sと6s Plusの4K動画撮影機能について、つらつら考えてきました。僕の感覚はシンプルで、どんなアップル製品にもあてはまるものです。みなさんには、どうかアップルの広告とか営業トークにのせられないでほしいんです。彼らは今美しい映像の数々をひけらかし、4Kを魔法のレインボージュースみたいに降り注ごうとしていますが…。

4K(またの名をUltra HD)に興味がある人なら、4KのTVとかハイエンドなビデオカメラとかを見たことがあると思います。でも実際多くの人は、まだ4K動画を見たことがないんです。それは、コンテンツがあまりなかったからです。でもこれからは、iPhone 6s/6s Plusを手に入れればその美しいフォーマットの動画を自分で撮れます。それならいいじゃん、ってことでしょうか?

4K動画はフルHD、1080pの約4倍の解像度です。つまりより精細な画像ってこと自体はナイスですが、だからこそ4Kの普及は遅れているんです。ストリームするにも膨大な帯域が必要だし、放送するにもバックエンドに巨額の投資が必要です。4KTVはもう何年も売られていますが、買う人はまだまだ少ないです。だって余計なお金を出しても、4Kで見られるものがあんまりないんですから。ユーザー視点で見ると、4Kはまだ見せ物であって、スタンダードにはなっていません

そんな4Kでの撮影機能が、今もっとも影響力ある家電ブランド、アップルのフラッグシップ製品に搭載されます。iPhone 6sと6s Plusによって、我々の動画が4Kになるということです。といってもスマートフォン全体で見れば4K動画はこれが最初ではなく、サムスンのGalaxyシリーズでは2014年のS5以降撮れるようになっています。ただし当時もそれに喝采を贈る人は少なく、まして今はもっと少なくなっています。

だから僕としては、4KがiPhoneに搭載されることを奇異にすら感じています。だって4Kって、普通の人に説明するのが難しいものです。アップルといえば、技術オタクでなくても理解できるシンプルでクリアな機能にフォーカスするのがモットーだったのに、それに反しているんじゃないでしょうか。たとえば自分のお母さんに4Kのメリットを説明するとしたら、どう言ったらいいんでしょう? 多分こんな会話になると思います。

「ねえママ、これ見て。新しいiPhoneでは4K動画が撮れるんだ」

「え?」

「解像度がもっと良くなるんだよ!」

「それどういう意味?」

「なんていうか、クオリティが良いんだよ、見てみて」

ママがiPhoneの動画を見る。

「同じように見えるけど」

「ああ、まあ、違いがわかるには4KTVじゃないといけないんだけどね」

「何テレビ? うちにはないと思う」

「あ、うーん、とりあえず動画を4Kで撮ってみて。僕が今度買う4KTVで、きれいに見えるはずだから」

「OKそうするわ」

数週間後、ママから電話。

「ねえiPhoneが、ストレージが足りないって言ってるんだけど。どうやって直すの?」

「クッ…」

おわかりいただけるでしょうか。つまり4Kって、誰にとっても魅力があるわけじゃないんです。普通の人はクオリティの違いに気づかないし、ましてスマートフォンとかソーシャルメディアで見る場合、圧縮されたり画面自体小さかったりで、意味がないんです。さらには4K動画ファイルを保存するためのストレージも必要です。iPhoneでの4K動画が圧縮フォーマットがわからないので、この点どこまで足を引っ張るかわかりませんが、ともあれ課題にはなりそうです。

ちなみに、4Kで撮った動画のひとコマが下の1枚目で、2枚目が1080p動画のひとコマです。


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そんなに変わらないですよね。もしこれらを60インチの4KTVで見れば違ってくるはずですが、多くの人は動画を見るとき、ホームビデオであれば特に、これくらいの小さなサイズで見ているんです。

とはいえ、4Kはあらゆる種類の動画に必ず訪れる未来です。いつか、あらゆる動画記録デバイスが4Kで撮り、あらゆるTVが4Kで表示するようになります。だから今からそれを使ったって別にいいんです。つまりあっても害はない、ただほとんどの人にはメリットもないというだけです。4Kで撮ることの最大の利点は、「10年後、誰もが4KTVを持っている時代になったとき、今撮った4K動画を再生しても、十分きれいで古臭くない」というだけです。それはクールですが、せいぜい飾り程度でしかありません。

アップルがこの機能をどう売り込むのかは、興味深いところです。彼らはすでに、9日のキーノートで流した広告の中で4Kに言及しています。いわく、「カメラでは4K動画が撮れ、あなたのムービーの見え方が変わります」。アップル最新の機能を盛り上げるセリフにしては、かなりもやっとした表現にとどまっています。



4Kはどちらかというと、一般消費者ではなくTV局にとって意味のある技術スペックなんです。4Kだからホームビデオがすごくきれいになるかっていうと、少なくとも今は、そうじゃないんです。


Michael Hession-Gizmodo US[原文
(miho)