ゲームをすると悪い子に育つ!? 最近の研究でわかった“意外な事実” | ニコニコニュース

ウレぴあ総研

任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)用ゲームソフトとして発売され、日本のみならず世界中の人々を夢中にさせた『スーパーマリオブラザーズ』が、さる9月13日に30周年のアニバーサリーを迎えた。

【リサーチ】1時間じゃ足りない!? ゲームを1日何時間していますか?(大人・子ども)

これを記念して、自分でコースを作って遊べる『スーパーマリオメーカー』のほか、音楽CD、書籍なども発売されている。ファミコン世代の人にとっては感慨深いものがあるだろう。

そんな人も今は多くが結婚し、子供たちがゲームに興味を持ちはじめる時期。

昔は「ゲームなんてしてると悪い子になるわよ! 近視にもなるし悪いことばかり!」と当たり前のように親から怒られてきたものだが、『スーパーマリオ』が30歳を迎える現在まで、ゲームにまつわるさまざまな学術研究が積み重ねられてきた。

はたして、ゲームをすると“悪い子に育つ”のか――今回はそれを調べてみた。

(※本記事中の「ゲーム」は、携帯ゲーム機、テレビやパソコンなど電子機器を使ったものを指します)

ゲームをすると暴力的になる?

暴力や残酷描写の多いゲームをプレイすると、人間は暴力的になるのか? いくつもの調査・研究結果を眺めてみると「ゲームへの関与の度合いが大きいほど、暴力経験が多くなる」とするものも確かにある。

しかし、だからといって「やっぱりゲームは子供にやらせたらダメだ!」と結論づけるのは早計。一時的な暴力傾向だけではなく、その原因や長期的な影響まで調べた研究を調べると、また別の側面が見えてくるからだ。

海外の学術誌「JournalofPersonalityandSocialPsychology」を基にした記事によると、人が暴力的になるのはゲームに負けたから、ミスしたからといったフラストレーション要素が原因だという。これはゲームの暴力描写とは関係なく、そもそもゲーム以外の生活全般に起こり得ることだ。

また、ハーバード大学の2人の心理学者によれば、暴力的なゲームとそうでないゲームをした子供の間で、その後の攻撃性に差はなかったという。

東京大学大学院の研究では、成人男女が対象であるが「暴力的なゲームが与える長期的な影響」が調査された。それによれば暴力的なゲームをプレイしてから1週間後には攻撃性の高さが残っているが、3ヶ月後には元の水準に戻ったという。
暴力的なゲームで攻撃性が上がるとしても、一時的なものである可能性を示す研究結果だ。

このようにゲームと攻撃性に関する研究は多いが、必ずしも「残酷なゲームをやると暴力的な子になる」という昔ながらのステレオタイプは当てはまらないようだ。

ゲームが与える良い影響

ゲームが良い影響を与えることも

「ゲーム好きな子は運動と勉強が苦手で友達も少ない」――そんな先入観を、現代の研究結果は支持しているだろうか?

『スーパーマリオ』30周年とほぼ同時期に掲載されたウェブ記事では、海外の複数の研究に基づき、「ゲームがうまい子供は知能が高い」「ゲームにより運動能力も向上する」場合があることを示した。

いくら能力がアップしても視力は確実に悪くなるのでは?と思われる人もいるかもしれないが、近年の研究では「ゲームと視力低下には因果関係が認められない」とする説が出ているようだ。

また、国立国会図書館の情報ポータルサイト「カレントアウェアネス・ポータル」は、テレビや漫画、テレビゲームなどが子供に与える影響について、多くの研究結果をまとめて公開している。

ボリュームが多いため、以下に要点だけ引用する。

【良い影響】
・テレビゲーム使用が空間視覚化や情報処理能力を高める
・テレビゲーム使用が社会的不適応を低減する

【好ましくない影響】
・テレビゲーム使用は攻撃性を高める
・テレビゲームの中でより単純で思い通りにしやすい登場人物と付き合うことで,現実の人間関係を築く機会や意欲を失い,人付き合いができなくなるといったことがある

このように、ゲームの影響について肯定的・否定的どちらの側面も報告されている。

社会性が上がる、下がると正反対の研究結果が出ていることから分かるように、この分野もまだ発展途上にあるようだ。

なおゲームに触れる時間に着目したイギリスの研究によれば、プレイ時間が「1日1時間未満」のグループは生活上の満足度や社会性が高く、「1日3時間以上」だと逆の傾向が見られたという。

「全体としてゲームの影響は小さい」と補足されているものの、なかなか興味深い研究結果である。

ファミコン世代のカリスマ・高橋名人による名言「ゲームは1日1時間!」は、最新の学術研究と照らし合わせても正しかったと言えそうだ。

ゲームがもたらす影響、調査結果まとめ

大切なのは“ゲームとの付き合い方”

これまでゲームが人間(とりわけ子供)に与える影響について、いくつかの研究事例をピックアップして紹介してきた。

筆者の主観もまじえつつだが、まとめると以下のようになる。

・暴力的なゲームによって高まる攻撃性は、従来思われていたよりも限定的である

・ゲームによって能力が向上する場合がある

・ゲームによって社会性が高まる、低下するという両方の説がある

・ただし「長時間のゲームのやりすぎ」には、共通して否定的な研究結果が多い

ゲームのやりすぎについては社会性低下だけでなく、もっと直接的に健康被害をおよぼす場合がある。ロシア、中国、韓国をはじめ世界中で“ゲームのやり過ぎで死亡する若者”が問題となっているのだ。

死因も過労、ストレス、栄養失調、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)など、とてもゲームが原因とは信じたくないような報告が続いている。

日本はここまで極端なことにならないかもしれないが、親としてはゲームがもたらすメリット・デメリットをしっかり把握し、子育てに活かしていきたい。

大切なのは“ゲームすべてを排除する”ことではなく、“ゲームをしても悪影響を受けないように子供を育てる”ことではないだろうか。