18歳でリーガデビュー…注目を集めたバルサFWムニルの1年後 | ニコニコニュース

バルセロナでプレーするムニル [写真]=VI Images via Getty Images
サッカーキング

文=座間健司

 昨シーズンの序盤、18歳のある選手が大きな注目を集めていた。2014年8月24日、カンプ・ノウで行われたエルチェ戦で先発出場し、何度も決定機をつくった。それまで下部組織でプレーしていたレフティーのストライカーが、ビッククラブで開幕スタメンに名を連ねての1部リーグデビュー。18歳357日でデビューした彼をレアル・マドリードのレジェンドであるラウール・ゴンサレスのデビューと比較する地元メディアもあった。

 ムニル・エル・アダディはひと夏で一気に国内の頂点へ駆け上がる。

 ビセンテ・デルボスケ監督にスペインのフル代表に招集された。そして9月1日に19歳になったばかりのムニルはマケドニア戦で代表デビューを果たした。

 公の場では代表監督は否定したが、父親の母国であるモロッコ代表に招集されるのを避けるためにスペインが先に招集し、公式戦でプレーをさせたとみられる。

 バルセロナで開幕戦スタメン、さらにフル代表デビュー。たった2週間でムニルの人生は大きく動いた。彼の家族、友人がラジオでインタビューに呼ばれるなど、ニュースターの誕生に世間が沸いた。このままスター街道を突っ走るのかと思われたが、上手くは進まなかった。

 世界最高のクラブの1つであるバルセロナでプレーするには、世界最高のストライカーでなければいけない。世界有数のストライカーになる可能性があるが、現時点のムニルはそうではない。

 バルセロナが8100万ユーロ(約110億円)を支払い、獲得したウルグアイ代表FWルイス・スアレスの出場停止処分が明けると状況が変わった。それまでは途中出場のチャンスを与えられ続けて、リーガとチャンピオンズリーグで9試合出場していたが、スアレスの処分が解けると出場どころか、試合に招集されないことも珍しくなくなった。

 バルセロナB(当時2部)に登録を戻されたが、2チームを行き来するムニルは結局Bチームでも中途半端な立ち位置となった。トップチームでもスアレスの復帰以降は7試合しか出場できなかった。

 ムニルは昨シーズン、トップチームで16試合1得点、Bでは17試合4得点という結果。特筆すべき数字を残すどころか、肝心の出場機会が少なかった。昨冬、今夏にはオランダのアヤックスなど多くのチームが彼のレンタル移籍に関心を抱いたが、結局バルセロナに留まった。

 バルセロナの前線には“MSN”というスリートップがおり、スペイン代表のペドロ・ロドリゲスが出場機会を求めて、移籍しなければならないほど彼らは絶対的だ。世界のどんなアタッカーでも“MSN”の牙城を崩すのは難しい。ムニルは彼らの1人が負傷しなければ、定期的に出場機会を得られない。

 実戦をプレーしないで、選手がそのタレントを開花させるのは難しい。あのリオネル・メッシさえも2005年夏には公式戦の出場機会を求めて、エスパニョールへのレンタル移籍がほぼ決まっていた(ジョアン・ガンペール杯のユヴェントス戦で敵将ファビオ・カペッロがすぐさま欲しがるほどのパフォーマンスを示し、その話は消滅した)。選手は試合に出場できなければ、成長は望めない。

 ムニルが再びスペイン代表に招集されるのはいつになるのだろうか。