『キングダム ハーツ HD 2.8』野村哲也氏のインタビューでタイトルと内容の謎に迫る! | ニコニコニュース

●野村哲也氏のインタビューで各作品を紐解く

 2015年9月15日に開催された“SCEJA Press Conference 2015”にて、『キングダム ハーツ』(以下、『KH』)シリーズの新作『KH HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』(以下、『KH2.8』)の制作が発表された。対応機種はプレイステーション4(以下、PS4)で2016年発売予定というこちらの作品には、下記の3タイトルが収録される。

◎収録作品


『キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-』(完全新作、文中は『KH0.2 BbS』)
『キングダム ハーツ χ(キー) バックカバー』(映像作品、文中は『KHχ バックカバー』)
『キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンス HD』(HD化作品、文中は『KHDDD』)

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 これまでに、シリーズのHD化作品と映像作品を収めた『KH -HD 1.5 リミックス-』(以下、『KH1.5』)と『KH -HD 2.5 リミックス-』(以下、『KH2.5』)がリリースされているが、『KH2.8』には新作のショートエピソードが追加され、“ファイナル チャプター プロローグ”というサブタイトルが付くなど、それらの作品とは若干意味合いが異なるようだ。そこで、多忙を極めるディレクターの野村哲也氏にお時間をいただき、タイトルに込められた意味や、各作品についてお話をうかがった。

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■“2.8”というタイトルに秘められた意味

――『KH1.5』、『KH2.5』ときて『KH2.8』とは、驚きました。“2.8”とつけたタイトルの由来をお聞かせください。

野村 いくつかの意味を含んでいますが、まずひとつの考えかたとして、今回『KHDDD』として収録している『KH3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』(以下、『KH3D』)は、前作のHD作品にあたる“2.5”の後……“2.6”に相当する作品と位置づけられます。そして『KHχ』と『KHアンチェインドχ』、『KHχ バックカバー』の『χ』シリーズは、ソラ不在の“0”と考えています。『KH BbS』が“0.1”で、今回の『KH0.2 BbS』がタイトルにも入っているように“0.2”と。すると、“2.6”+“0”+“0.2”で、“2.8”という数字が出てくるわけです。

――なるほど! シリーズの時間軸に沿ったナンバーが振られていて、そのうえで加算していると。『KH0.2 BbS』の“0.2”にも、そんな意味が込められていたとは。

野村 『KH BbS ファイナルミックス』のシークレットエピソードでは、“0.5”という表示がありましたよね。フルボリュームで『BbS』の続編があるとしたら“0.5”まで進んだモノにする予定だったのですが、やはり『KHIII』が優先ですから、今回は“0.1”から一歩進んだ“0.2”になっています。

――そうなると、『KH2.9』がリリースされたりする可能性も?

野村 つぎは『KHIII』です(笑)。サブタイトルにもあるように、『KH2.8』は“ファイナル チャプター”、つまりシリーズにおける“ダークシーカー編”の最終章となる『KHIII』の、プロローグ的な意味合いを持っているので。“0.1”分飛んでいる意味は、『KHIII』でわかります。

――その“0.1”が気になりますね……。『KH2.8』は、PS4オンリーとのことですが、PS3でリリースされてきた『KH1.5』、『KH2.5』からハードを移した経緯というのは?

野村 ゲームプレイがある『KH0.2 BbS』は、『KHIII』の技術で作っているので、PS4でしか動かないんです。それと現在の開発環境がPS4用のものになっているので、新作の制作についてはPS3で作るほうが難しいという事情もあります。また、ユーザーの皆さんに、少しでも『KHIII』の雰囲気をお伝えしたいと思っていて。『KH0.2 BbS』には、まったく同じではないですが、『KHIII』のシステムを一部取り入れています。

――『KH0.2 BbS』のシステムは、『KH BbS』とは違ったものになるということですか?

野村 『BbS』に『KHIII』の要素を加味した、ハイブリッドといったところでしょうか。

――そこまで手を加えてしまうと、『KHIII』の進行に影響がないか少し心配もあります。

野村 『KHIII』はナンバリングらしいクオリティーとボリュームを実現するために、時間をかけていますが、影響のない範囲で制作しているので、その点については問題ありません。ただ、少しでも早く触れてもらいたいという思いと、『KH0.2 BbS』でのゲームシステム体験を通じ、『KH III』とのつながりをひと足早く楽しんでいただきたいという思いがありました。

■3つの収録作とサービスが開始された『KHアンチェインドχ』

――『KH3D』がHD化されるにしても、映像特典などの形なのかなと思っていました。まさか据え置き機対応でプレイアブルになるとは。

野村 そこは、『KH1.5』や『KH2.5』を手掛けたHD担当スタッフががんばってくれて実現しました。今回はHD化に加え、ニンテンドー3DS版では下画面を使っていたシステムを、1画面でできるようにゲームデザインを変更していたりと、これまでのHDリマスター作品よりはリメイク色が強いと言えます。

――追加要素はあるのでしょうか。

野村 お話しした通り、これまでのHD化の作業を超えているので大きな追加要素はないのですが、トロフィー対応など、これまでのHD化でやってきたようなコレクション要素の追加はあります。『KH3D』はストーリー的にも濃密なものになっていますから、『KHIII』の前に、『KHDDD』でぜひ遊んでほしいですね。

――『KHDDD』であれば、『KHIII』が出るハードで遊べますしね。では『KH0.2 BbS』についてもお聞きします。時間軸的にはどこから始まるのでしょうか。『KH BbS ファイナル ミックス』のシークレットエピソードとのつながりは?

野村 シークレットエピソードの直後から始まります。彼女が闇の世界でシンデレラ城を見つけた、あの後です。

――では、あのシンデレラ城が舞台になると。

野村 どうでしょうね(笑)。ただ、シークレットエピソードのときのように、延々と闇の世界をさまようわけではありません。

――シークレットエピソードで見られた“A fragmentary passage”が『KH0.2 BbS』のサブタイトルになっていることについては?

野村 この後のストーリーは存在しているけれど、パッケージとして出す予定がないという意味で、『KH BbS ファイナル ミックス』では“A fragmentary passage”(断章)としていました。しかし、設定としては存在しているため、『KHIII』の冒頭で少し触れる予定があったのですが、今回の機会に触れていただいたほうがいいかなと。ただし、『KHIII』の進行に影響が出ないように、“0.5”として考えていたフルボリュームではなく“0.2”としています。ですので、断章であることには変わりがなく、“fragmentary passage”をサブタイトルとして残したというわけです。

――期間的には、どこまでが描かれるのでしょうか。

野村 そこはオチにつながるので言えません(笑)。ただ導入は、ソラの新しい旅立ちに際して、王様がこれまで秘めていたエピソードを語る、という形になります。『KH0.2 BbS』の設定は、『KHIII』にも密接に関わる部分なので。

――王様も鍵を握っているわけですね。つぎは、『KHχ バックカバー』……の前に、先日サービスが開始された『KHアンチェインドχ』について、少し状況をおうかがいできれば。

野村 サービス開始当初、サーバートラブルが続き、申し訳ありませんでした。ここまで、社内のサーバー管理などをしている部署にも協力してもらって、改善を続けてきました。まずサーバーの安定に努め、ご迷惑をおかけしている部分についても順次対応していきます。それから徐々に、イベントなども開放していければと。

――安定性については、最近はだいぶ落ち着いていますよね。サクサクなプレイ感覚がやみつきになります。

野村 スマホは生活にも密接なハードですし、ちょっとした時間でも『KH』らしい手触りを楽しんでいただくということを念頭に作ってきて、ゲーム性としてはいいものになっているかなと。これからは、来年の1月まで毎月50クエストずつ追加していくことを公表していますが、その後も引き続き更新がありますので、楽しんでいただければと思っています。

――あのサクサク感はぜひ体験してもらいたいですね。では改めて『KHχ バックカバー』について。こちらは5人の予知者たちの視点で描かれるとのことですが?

野村 それと、予知者たちの主である“マスター・オブ・マスター”ですね。チリシィが「あのお方」であるとか、「主」と呼んでいる人物です。

――チリシィを創り出したという。

野村 はい。ただ、マスター・オブ・マスターは、別にそういう固定の呼称というわけではなくて、周囲の人はふつうに「マスター」と呼びます。マスター・オブ・マスターというのは、どういう立ち位置の人物かを示すものになります。予知者たちは、自身もキーブレードマスターです。彼らの師匠、つまりマスターのマスターなので、マスター・オブ・マスター、というわけです。

――予知者たちだけでも謎だらけなのに、そのマスターまで出てきてさらに謎が深まりそうです。

野村 彼は『KHχ バックカバー』では、けっこう出番がありますよ。ちなみに、『KHχ』では黒いコートの人物として登場しています。

――ああ、5人の予知者たちと話していた……。

野村 『KHχ』や『KHアンチェインドχ』はプレイヤーの視点で進むため、予知者たちがどんな人物かというのは、まだあまりわからないと思います。『バックカバー』では、トレーラーでも少し出ていたように、彼らの持つ個性や思惑の違い、何を望んでいるのかといったことが描かれます。もしかしたら、所属しているユニオンの長の本性を垣間見て、「そんなことを考えていたのか」と、ちょっと好みが分かれるところがあるかもしれません(笑)。

――それはそれでおもしろそうですけどね(笑)。我慢ならないという方はユニオン移籍ということで……。今後、『KHχ』や『KKHアンチェインドχ』でも、予知者たちの思惑に踏み込んでいくことになるのでしょうか。

野村 『KHχ』のほうで最近配信したシナリオでは、狐の仮面をかぶった予知者の名前が出て、少しずつですが彼らについての情報が出てきていますね。ちなみに、マスター・オブ・マスターと、彼の6人の弟子たちには名付けのルールがあるのですが、そこはわかる人がわかればいいかなと。

――あれこれ予想をするのもシリーズの醍醐味ですからね。それとトレーラーで、チリシィに声がついていたのが新鮮でした。声を担当したのは金田朋子さんでしょうか。

野村 はい。“切なさ”を含む演技を念頭に収録していただき、いい仕上がりになったなと思います。

■そしてすべてが『KHIII』につながっていく

――『KH2.8』までのすべての物語が『KHIII』につながっていくわけですが、先日『ベイマックス』(原題:『Big Hero 6』)のワールドの存在を発表されて、大きな反響がありましたね。

野村 いちばん最後に決まったワールドなので、その事実くらいしかお伝えできなかったのですが、喜んでいただけているようでよかったです。『ベイマックス』は近未来ではありますが、現代感のある街並であるとか、ああいった世界観の中でアクションができたら楽しいだろうな、というのが選定の決め手になりました。

――あらすじとしては、ハートレスがとりついて黒く染まったベイマックスと、ベイマックス&ソラが対峙するという流れになるのだとか。

野村 そうですね。映画版の後の話になります。黒いベイマックスは安江(Co.ディレクターの安江泰氏)が「どうしてもやりたい!」と熱望していて。自分も気に入っている作品なので、どういう仕上がりになるか楽しみにお待ちください。

――野村さんのもうひとつのディレクター作品『ファイナルファンタジーVII フルリメイク作品(仮題)』については、いかがですか?

野村 ファミ通さんのインタビュー(2015年9月10日号掲載)で北瀬(佳範氏)も答えていましたが、とくにバトルに関しては戦略と手触り含め、こだわって磨き続けています。どこまでお見せするかまだ検討中ではあるものの、冬には続報をお届けしますので、それまでお待ちいただければと。

――11月には、東京ディズニーランドで開催のD23 Expo Japan 2015直前となる3日に、『KH』の特別イベント、そして冬に『ファイナルファンタジーVII フルリメイク作品(仮題)』の続報と、これからニュースが続きそうですね。

野村 いまはそれらに向けて準備を進めているほか、アーケード版の『ディシディア ファイナルファンタジー』の稼動もありますし、来年の予定としては『KH2.8』や『ワールド オブ ファイナルファンタジー』の発売が発表されています。『KHχ』と『KHアンチェインドχ』もよりよくしていきたいですし、ありがたいことに、社外からの依頼も複数いただけているほか、まだ仕込んでいることもあって、いま手いっぱいなところもあるのですが(苦笑)、ファンの皆さんに喜んでいただけるように尽力していこうと思います。

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