簡単に言うと、なぜ中国の「元」は「国際通貨」を目指しているの? | ニコニコニュース

マイナビスチューデント

中国で株価が大暴落し世界の景気に多大な影響を与えるということで、中国経済の動向に注目が集まっています。また中国の通貨「元」が世界で注視されている状況です。「元を国際通貨として認めるか」という議論がありますが、これはいったいどういうことなのでしょうか!?

■そもそも「国際通貨」って何!?

「中国の元は国際通貨入りを目指している」といわれます。まず、この「国際通貨」とは何かについてご紹介しましょう。

国際通貨とは「米ドル」「ユーロ」「円」「ポンド」のことです。これら4通貨は、世界の貿易、国際取引、為替取引に使われる信用ある通貨で、他の通貨と簡単に交換できるという特徴があります。

例えば、日本がA国と貿易して何かを輸出したとします。その代金はたいてい「米ドル」で受け取ります。A国の使っているローカル通貨で受け取ると、その価値がどうなるか分からないからです。

1カ月後にA国の通貨が大暴落! なんてことになると紙くずのようなお金をもらうことになってしまいます。そんな危険は誰も犯しませんね。ですから、国際間の取引ではたいてい「米ドル」で支払うという取り決めをします。

先の例でいえば、A国は自分の国の通貨を米ドルに替えて、その米ドルで日本に代金を支払うのです。あるいは自国の持っている米ドルでその代金を支払います。

このように、国際間の取引は価値が信頼できる通貨でなくてはいけません。また、信頼できる通貨であるからこそ、どのローカルな通貨とも交換でき、持っていても安心ということになります。

■「SDR」って何!?

国際通貨基金(IMF)では、この4通貨を「SDR(特別引き出し権)を構成するもの」と規定しています。SDRとは「Special Drawing Rights」の略で、簡単にいえば、IMFからお金を借りる「権利」のことです……が、同時に「単位」でもあります。

これでは何のことか分かりませんね。分かりやすくします。

IMFからお金を借りる際には、SDR単位でお金を借りるのです。つまり、「すみません100億円貸してください」ではなくて「100億SDR貸してください」となるのです。簡単にいうと「仮想の通貨単位」みたいなものです。

OKになると「100億SDR」に当たるお金を借りられます(ほとんどの場合は米ドル)。

SDRが実際の米ドルでいくらになるのかは変動します。例えば9月8日現在、

●1SDR = 1.401660ドル

です。

⇒データ出典:IMF「SDR Valuation」


http://www.imf.org/external/np/fin/data/rms_sdrv.aspx

このSDRの価値は「ドル」「ユーロ」「円」「ポンド」によって決まります。現在、

米ドル:41.9%


ユーロ:37.4%
ポンド:11.3%
円:9.4%

という構成比で「SDR」の価値が算出されています。SDRというバスケットに通貨を入れているというイメージで、これを「通貨バスケット制」といいます。上記の「SDR(特別引き出し権)を構成するもの」というのはこのような意味なのです。

なぜ、こんな面倒なことをしているかといいますと「SDR」の価値の変動を抑えるためです。国際通貨四つがバスケットに入っていますから、たとえそのうちの一つが大きく変動しても、その影響を最小限に抑えることができます。

「100億米ドル」借りたA国が、返すときにその「米ドル」が大暴落・大暴騰していたら大変なことになります。貸したIMFが大打撃! なんてこともあり得ます。ですから、安定した価値のある「SDR」を仮想で作って、その単位でお金を貸すことになっているのです。

■中国の「元」はなぜ国際通貨を目指す!?

さて中国の「元」です。

中国政府は自国通貨「元」を国際通貨にしようと運動しています。これは取りも直さず、上記のSDRに入ることを目指しているのです。

IMFはそのバスケットにどんな通貨を入れるのかを5年ごとに決めます。中国政府は次の総会でこの一角を占めることを狙っているのです。

SDRに食い込めると、「国際通貨」として認められ、各国(政府および金融当局)の準備通貨(外貨準備高の相当量を占める通貨)となることが期待できます。世界各国(政府および金融当局)の準備通貨になれれば、その発言権は大きくなります。みんなが頼りにしているその通貨は自分の国で刷ってるわけですからね。

世界で準備通貨となっているのはやはり多くの場合「米ドル」です。ですから、中国の「元」が国際通貨を目指すのは、アメリカに対する挑戦でもあるのです。

ただし、IMFはSDRの基準の一つを「国際的に自由に取引していること」(freely usable currency)としていますので、この基準からすれば、中国の「元」には大きな疑問符が付きます。事実、IMFのシダート・ティワリ戦略政策審査局長は「SDR構成通貨への元を採用することについての結論を9カ月先送りする」というレポートを8月4日に発表しました。


中国の「元」が「国際通貨」になれるかどうかは余断を許さない状況なのです。

(高橋モータース@dcp)