なぜ男尊女卑はなくならないのか? その“無意識”のメカニズム | ニコニコニュース

『男尊女卑という病 (幻冬舎新書)』(片田珠美/幻冬舎)
ダ・ヴィンチニュース

 夫に人前でバカにされた。男性客に「“男”の責任者を出せ」と騒がれた。「女は泣けば許されると思ってるんだから」「女はすぐ感情的になるから」など、なにかにつけて「女は」と小バカにされる。見せかけの“男女平等社会”に、静かにキレている女性は少なくないかもしれない。

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『男尊女卑という病』(片田珠美/幻冬舎)によると、多くの男性が女性を一段下に扱うのは、必ずしも意識的ではないという。多くが無意識のうちらしい。なぜ、男は女をバカにするのか。

 まず考えられるのは、その男性自身が職場で上司や同僚から見下されたり、小バカにされたりしている可能性だ。これは、有名な精神分析学者・フロイトの娘であるアンナ・フロイトが名づけた「攻撃者への同一化」というメカニズムで、自分が受けた仕打ちを弱い対象に加えることにより無力感や屈辱感、不安や恐怖を乗り越えようとするもの。このメカニズムは、いじめられっ子がさらに弱い者をいじめて“いじめっ子”に変わったり、虐待を受けていた子どもが大人になって子どもに暴力を振るうというプロセスにも見られる。とはいえ、この可能性は女性の社会進出によって、いまや男性だけの問題とはいえないかもしれない。

 そこで、こんな分析もしている。男性には、女性を見下す意外な心理的病理が潜んでいるというのだ。男性は、子どもの頃から「男の子なんだから」と、“男性性”を理由に、自分の欲望を抑えられてきた可能性が高い。心当たりがある男性もいるだろう。このため、つらいことが少しでもあると感情をおおっぴらにする女性に羨望や悔しい気持ちを潜在的に持っている、というのだ。

 さらに、フロイトの性理論を紹介しつつ、分析を深めている。フロイトの性理論によると、男性は女性にないもの…つまりペニスを持っており、それが男性だけにある事実が自信と優位性を植え付ける。対して、持っていない女性を軽視するようになり、そのうち嫌悪や憎悪さえ覚える。やがて、なぜ女性にペニスがないのかと考えると、「罰として去勢された存在」だと理解し、同時に自分も「いつか切り取られてしまうかも」という強い不安を抱える。優位性と喪失の恐怖に板挟みになった存在、それが女性を蔑視する男性だという。トンデモ理論だと思うかもしれないが、この理論から世にマザコン男が多い理由、男性の女性蔑視を無意識に受け入れる女性たちや、一部の女性が男性のように「強くなろう」「成功してやろう」と躍起になる心理の説明が説得力をもってなされている。

 社会が男性優位である限り、自分の身は自分で守らなければならない。本書では、「小バカにし続ける夫には、距離を置く」「狭い社会で逃げられないときは、スルーする」など、具体的な処方箋が提示されている。

 ところで、女性を支配したり貶めたりする男性にターゲットにされやすい女性には、


(1)罪悪感を覚えやすい
(2)他者の欲望を満たそうとする
(3)自己評価が低い
という共通の特徴があるそうだ。とくに幼い頃からマジメでいい子だった女性ほど当てはまりやすいそうなので、自覚がある人はそのような男性には一線を画すよう気をつけるべきだ、としている。

 いずれにしても、男性が女性を、女性が男性を理解できないのは、その性に生まれたからであり、「男女のわかりあえなさ」をまず受け入れたうえでしかるべき対策を講じることにより、生きやすさが劇的に変わると結論づけている。

文=ルートつつみ