8月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は、前年同月比0.1%下落し、日銀が量的・質的金融緩和に踏み切った2013年4月以来のマイナスに転じた。日銀の大規模緩和開始後、物価は順調に上昇基調をたどってきたが、昨年夏以降の原油価格の大幅下落をきっかけに変調。ついに緩和効果は吹き飛び、2%の物価上昇を目指す日銀の「異次元緩和」は振り出しに戻った格好だ。

 黒田東彦日銀総裁は25日、安倍晋三首相との会談後、記者団に「物価の基調はしっかりしている」と強調。エネルギー価格の下落を除けば、物価はプラスを維持しているとの認識を示した。実際、食料品や日用品などは値上げが相次いでおり、安倍首相も24日の会見で「デフレ脱却はもう目の前だ」などと強気の見通しを語った。

 しかし、原油安が続けば、日銀が「16年度前半ごろ」としている2%物価目標の達成時期がさらに後ずれすることは避けられない。中国など海外経済の減速で国内景気の足が引っ張られる恐れもある。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「物価が短期間で2%程度まで上昇するのは常識的には考えにくく、遅かれ早かれ(日銀の)追加緩和が必要になる」とみている。