エミー賞授賞式、過去最低の視聴率 「番組視聴の多様化」が原因か | ニコニコニュース

過去最低の視聴率した「第67回エミー賞 授賞式」の様子(C) AFLO
クランクイン!

 9月20日(現地時間)に放映されたプライムタイム・エミー賞授賞式が、過去最低の視聴率を記録した。トータルの視聴者数は、1190万人(アメリカでは、視聴率を%で表示せず、人数で表示する)、昨年は1560万人だった。全体で400万人減った上、広告主が重視する18歳から49歳までの年齢層で見ると、昨年に比べ、14%の減少を見ている。アメリカでは人気のある番組は延々と続くため、エミーも毎年同じ作品や人が受賞することが多いが、今年は作品部門でも演技部門でも初受賞が多く、新鮮な結果になった。それだけに、この数字はショックだ。

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 考えられる原因のひとつは、アメリカン・フットボール(NFL)の試合とバッティングしたこと。エミー授賞式は、毎年、メジャーネットワークが交代で中継することになっており、昨年はNBCが、この競合を避けるために、エミーを8月に動かした。だが、今年の番に当たったFOXは9月の日曜という、伝統的な日程をキープしている。

 しかし、理由はそれだけではない。“新鮮な結果”が、ある意味、視聴率低下に貢献したのだ。

 今年は、ドラマシリーズ部門の『ゲーム・オブ・スローンズ』、コメディシリーズ部門の『Veep(原題)』をはじめ、HBOが圧勝。HBOは、ケーブルチャンネルに加入している世帯が、さらに特別料金を払って視聴するプレミアムチャンネル。『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』や『セックス・アンド・ザ・シティ』など、以前からクオリティの高い番組でエミー賞を受賞してきたが、43個も賞を取るのは、会社創設以来、初めてのことだ。ほかに、プライム会員にならないと見られないアマゾン・インスタント・ビデオなどの動画配信サービスの作品も受賞している。

 テレビがなくても見られるネット環境がテレビの祝典であるエミーの資格を得たことで、テレビの定義は大きく変わり、幅が広がって競争も激化した。普通のケーブルチャンネルも次々にオリジナル番組制作に乗り出し、今ではついていけないくらい番組が出回っている。良作も増え、「テレビの黄金時代」と呼ばれる一方、エミーは自分の見ていない、あるいはお金がかかるから見るつもりのない番組が競い合う授賞式になってしまった。これは、オスカーが前々から経験してきたことだ。『タイタニック』が受賞した年は記録的な視聴率を出したが、インディーズ映画ばかりがノミネートされる年は、視聴率が下がる。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が受賞した今年も、視聴率は低かった。

 アメリカのメジャーネットワークにとって、秋は新シーズンのスタート時期。エミー賞授賞式の合間に、その年の担当ネットワークは、自社番組のCMを流す。つまり、より多くの人に授賞式を見てもらうのは、重要事項なのだ。今年の教訓を受けて、来年担当するチャンネルは、果たしてどんな策を練っているだろうか。(文:猿渡由紀)