「よくないね!」ボタンの導入はフェイスブックの高齢化が関係している…かも

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先日、「よくないね!」ボタンの導入を発表したフェイスブック。

これまでずっとポリシーを変えなかったフェイスブックが、どうしてここにきて導入に踏み切ったのでしょうか? 一つの仮説として「フェイスブックの高齢化」があげられます。フェイスブックとユーザーの年齢層との関係についてみていきましょう。

ネガティブすぎるとされてきた「よくないね!」ボタン


本題に入る前に、フェイスブックが「よくないね!」ボタンを拒んできた経緯をおさらいしてみましょう。これまでもユーザーは「よくないね!」ボタンの導入を望んできましたが、フェイスブック側は「投稿の善し悪しを評価し合うような討論の場にしたくない」と頑なに拒んできました。マーク・ザッカーバーグは以下のように語っています。

だれだって自分が大切だと思った瞬間を「よくないね!」ってけなされたら嫌なんじゃないかな。そういうのは僕たちが作ろうとしているものじゃないんだ。

言い換えれば、フェイスブックはコミュニティをポジティブに保とうとしていたんです。ユーザーが簡単な操作でネガティブな気持ちを表わせないようにすることで、喧嘩や名指しの批判のない安全な場所を作ろうとしてきました。これは特に10代の若者たちにとって重要なことで、ネットでのいじめなどを防ぐ対策にもなっていました。

また、「よくないね!」ボタンがないことで、広告主にとってかなり都合のいい場所でした。実際、フェイスブックはユーザーがブランドやプロダクトをどれだけ「いいね!」しているかという情報を広告主に宣伝していました。

ユーザーの高齢化


しかしながら、フェイスブックのユーザー層や投稿内容などが変化するにつれて「よくないね!」ボタンの導入が検討されるようになりました。2004年にハーバード大学の学生用ネットワークとして始まった頃は、フェイスブックにはまだ18〜23歳のユーザーしかいませんでした。そして2005年には高校生も対象として拡大し、更にユーザーの平均年齢は下がっていきました。

しかし、2006年に対象ユーザーを限定しなくなったことで、たくさんの高齢のユーザーが流れ込んでくるようになったのです。結果として、現在はインターネットを使用するほとんどの大人たちがフェイスブック上に存在するようになりました。一方、若者たちは徐々に手を引きはじめているようです。


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ピュー・リサーチセンターによると、フェイスブックは最も多くのユーザーを獲得しているSNSであるそうです。事実、1日に10億人以上からのアクセスがあるというデータも。しかし、ユーザーの年齢層は高めで61.9%が25歳以上だといいます。それに加えて、最近の多くの研究が明らかにしているのは多くの若者のフェイスブック離れです。これは、親や親戚などがアカウントを持つようになり、若者たちがInstagramやSnapchatに移っていったことが原因のようです。

その結果、フェイスブックのニュースフィードに流れてくる情報も変化しました。今ではパーティーの写真の代わりに赤ちゃんの写真が流れてくるようになり、高校のゴシップネタの代わりに時事ネタなどがシェアされるようになったのです。

ニュースを配信しはじめたフェイスブック


ユーザー層の変化に合わせて、フェイスブックはより高齢なユーザーのニーズに焦点を当てるようになりました。そこで特に力を入れはじめたのがニュース配信です。人々がニュースにアクセスするための主要なポータルサイトとして自身のサイトを位置づけはじめました。

先述のピュー・リサーチセンターによると、いまやアメリカでは30%の成人がフェイスブックからニュースを読んでいる、といいます。ちなみにツイッターでニュースを読んでいるのは8%、LinkedIn経由は3%とのこと。他のSNSをかなり引き離していることがうかがえますね(それでもTVは87%、ラジオは65%なので既存メディアにはまだまだ追いついていないのですが)。

API(American Press Institute)などによる長年の研究により、若い人たちよりも高齢な大人たちの方がすべてのカテゴリーにおいてニュースに関心があることが明らかになっています。フェイスブックがニュースに力を入れはじめたのもうなずける話ですよね。フェイスブックは基本的に興味のあることをシェアする場ですが、多くの大人たちにとって興味のあるものといったら日々のニュース。最近では「Instant Articles」(パブリッシャーがオリジナルコンテンツをニュース・フィードに流せる新機能)を発表するなど本腰を入れてポータルサイトへの道を歩みはじめているようです。

なぜ「よくないね!」ボタンなのか?


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フェイスブックは10年前とはすっかり変わりました。大半のユーザーが10代から大人へと変化したのです。そして大人たちはニュースをシェアするようになったのですが、そうなると明らかに「いいね!」では表現できない投稿が目につくようになりました。マーク・ザッカーバーグは以下のように述べています。

すべての瞬間がいい瞬間なわけではないだろう? たとえば難民問題など悲しいニュースをシェアするときに、その投稿を「いいね!」するのって抵抗があると思うんだ。

「よくないね!」ボタン(どのような形になるかはまだ未定ですが)の導入はフェイスブックの変化の証といえるでしょう。かつては若者たちの繋がりの場でしたが、今では大人が討論する場へと変わってきているのです。新しい表現方法が求められるのも必然的なことだったんですね。


この記事はThe Conversationから許可を得て米Gizmodoが転載したものの翻訳です。

Felicity Duncan - Gizmodo US [原文]
(阿部慶次郎)