精子が正常に働くためには、精巣にある脱リン酸化酵素「精子カルシニューリン」が不可欠だとの研究内容を大阪大微生物病研究所の伊川正人教授、宮田治彦助教らのグループがまとめ、米科学誌サイエンスに2日、発表した。マウス実験で、精子カルシニューリン遺伝子を破壊した雄マウスが不妊になることを確かめた。

 伊川教授は「不妊症の原因究明に一歩近づいた。精子カルシニューリンを安全に阻害できれば、将来的に男性避妊薬の開発につながる可能性がある」と話している。

 実験では、ゲノム編集技術を活用して精子カルシニューリン遺伝子を破壊した遺伝子改変マウスを作製。改変マウスの精子は、卵子を取り囲むゼリー状の透明帯を通過できず、受精できなかった。

 カルシニューリン阻害剤を2週間投与された雄マウスも同様に不妊となったが、投与を中止すると1週間程度で生殖能力を回復したという。

 カルシニューリンは全身の免疫細胞や精巣に存在し、人へ応用するには精子カルシニューリンだけを阻害する方法を見つける必要がある。不妊薬などの開発には早くても5〜10年程度かかる見通し。