真夜中の伊勢丹で、一体何が……？
料理のレシピをヒップホップでお届けする「DJみそしるとMCごはん」。名前だけ見るとユニットのようですが、かわいい女の子のソロアーティストでございます。
DJみそしるとMCごはん（愛称はおみそはん）は、女子栄養大学出身。卒業研究として「唄って覚えられるレシピ」というコンセプトで、レシピをラップにしたミュージックビデオを制作。それが注目されインディーレーベルからデビュー。そして、2013年11月にミニアルバム「おりおりのおりょうり〜X'mas〜」でメジャーデビューしました。2015年4月にはアルバム「ジャスタジスイ」をリリース。
Eテレの「ごちそんぐDJ」に出演したり、お漬物の「きゅうりのキューちゃん」とコラボしたり、ライブではお客さんにオリジナルのおまんじゅうを作ってもらうなど、独自の活動で現在大注目のミュージシャンなのです。
そしてこの度、伊勢丹新宿店のTOKYO解放区とのコラボシングル「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」を9月30日に発売。そのミュージックビデオをYouTubeで公開しています。
このミュージックビデオ、すごい独特な雰囲気なんですが、何を隠そう、あのライトペインティングが楽しめるガジェット「Pixelstick」を使っているんです。
日本でいち早くPixelstickを使ったイベントを行なっているギズモードとしては、これを見逃すわけにはいかない！（しかも、僕らのときと同じく、Pixelstickの調達はOneMe Storeが全面協力！）
ということで、伊勢丹新宿店で行われた「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」のミュージックビデオ撮影現場に潜入してきました。いったい、この不思議な暖かさがあるミュージックビデオ、どのようにして撮影されていたのでしょうか？
これがPixelstickだ！
撮影は伊勢丹新宿店の閉店後、夜中に行われました。夜中の伊勢丹にいるなんて、なかなか貴重な経験です。
撮影中のおみそはんが手にしているのが、Pixelstickです。現在日本にはそれほど多くのものがあるとは思えないのですが、そのうち4本がこのPV撮影現場に集まっています。こんなにPixelstickが使われている現場、現時点では世界でもここだけでしょうね。
Pixelstickは、SDカードに保存した画像ファイルを読み込んで、それを表示させることができます。もちろん、そのままでは何が表示されているのかわかりません。Pixelstickを持って移動することで、絵が現れるという仕組み。うーん、言葉では伝わりにくいですね。実際に撮影風景を見てみましょうか。
おみそはんがポーズを取って立っています。その周りをスタッフがPixelstickを持ってぐるりと周ります。これを5〜20秒のロングシャッターで撮影。もちろん、その間おみそはんは動けません。
ロングシャッターで撮影した写真です。どうですか、こうなるんですよ！ 不思議ですよね。実際現場で見ていても、どうなるのか仕上がりがなかなか想像できませんでした。
例えばこのシーン。どうやって撮影しているかというと……。
Pixelstickを固定した台車を複数用意し、スタッフがタイミングを合わせて左から右に移動しているんです。
このミュージックビデオでは、コマ撮りアニメーションが随所に登場。コマ撮りのシーンは秒8コマ。つまり、1秒の動画を作るために、先ほどの撮影を8回繰り返していく必要があります。Pixelstickをこれだけ使ったミュージックビデオは、世界でも珍しいのではないでしょうか？
ミュージックビデオでおみそはんが虹の中を歩いて行くシーンがありますが、そちらの撮影風景はこんな感じです。
Picelstick3本を使って、1コマずつ虹を描いていきます。これ、かなりリハーサルしたんだとか。タイミングが重要ですからね。
撮影機材はどんなもの？
さて、ギズモードらしく撮影機材についても見てみましょう。動画撮影のメインはキヤノンのEOS 5Ds R。レンズは動画用のものを使っています。
このほか、EOS 7D Mark IIなども使われておりました。デジタル一眼レフカメラは、写真撮影だけでなく動画撮影の現場でもよく使われていますね。
コマ撮りアニメを作成するソフトは「ドラゴンフレーム」です。PCに直接デジカメを接続し、ライブビューを見て前後のフレームを比較しながら撮影できます。シャッターもこのソフト上から操作できます。
こちらはおみそはんがミュージックビデオ内で使っていたお手製ナイフとフォーク。LEDが仕込まれていて光ります。基本的に今回のミュージックビデオ撮影は周囲を暗くして撮影していたため、ナイフとフォークも光るようになっていました。
Pixelstickを安定して横移動させるために台車に固定。工夫の跡が見られます。
なんでPixelstickを使ったの？
撮影現場を見学していると、出演しているおみそはんも撮影しているスタッフのかたも、とてもたいへんそうなんです。なんせPixelstickを使ってコマ撮りアニメを作ったという前例がありませんからね。でもなんだか楽しそうでもあります。
現在はCGが発達していますから、似たようなことをCGで再現すれば、もっと手間もかからず作れそうです。しかし、制作スタッフは「なるべくアナログっぽい雰囲気を出したかった」ということで、Pixelstickを使って撮影を思いついたそう。
確かに、コマ撮りをする度にPixelstickの位置は微妙にずれます。それをアニメーションにすると、表示にゆらぎが生じます。そのゆらぎが「デジタルなのにアナログっぽい」感じを出しているのです。
今回の撮影スタッフは体力のある若手が中心。だからこそ、Pixelstickを使ったコマ撮りアニメなんていう発想が生まれたのかもしれませんね。
伊勢丹の地下1階にはすごくエネルギーがある場所。それを歌いたかった
さて、今回の主役であるDJみそしるとMCごはんさん。なぜ「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」という曲を作ることになったのか。そして、今回の曲はどういったテーマから生まれたのか。深夜の撮影の合間にお話を伺いました。
ギズモード編集部（以下ギズ）：今回の新曲「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」のコンセプトは何でしょう？
DJみそしるとMCごはん（以下おみそはん）：9月29日（火）から伊勢丹新宿店本館2Fの「TOKYO解放区」で開催される企画展「平野紗季子の（食べられない）フード天国」のために書き下ろした曲です。依頼をいただいてから「伊勢丹地下1階の歌を作りたい」と思ったので、この曲はデパ地下がコンセプトです。伊勢丹の地下1階のことをひたすら歌っています。
ギズ：これまではレシピを歌詞にした曲が多かったわけですが、今回の歌詞はちょっと違いますね。
おみそはん：レシピではありません。伊勢丹の地下1階のことを曲にしました。この曲を作ることが決まってから、毎日伊勢丹の地下に通って、どこにどんなものがあるのかとか、試食をしたり、家に帰ってから今日巡ったところを地図に描いたりしました。伊勢丹の地下1階ってすごくエネルギーがある場所なんです。食材自体がすごい光を持っているというか、「食べてー」っていう主張がすごい。一等賞のものばかりが並んでいる感じなんです。そこに集まる人たちも「よし食べてやるぞ！」という感じで、「食べてー」と「食べたい」という気持ちがぶつかりある活気のある場所だなと思ったので、それを曲にしました。
ギズ：今回はコマ撮りアニメでミュージックビデオ撮影をしていますが、実際やってみていかがですか？
おみそはん：自分でものを動かしてコマ撮りをしたことはあるんですけど、自分がコマ撮り撮影されるのは新鮮です。深夜の時間帯で6秒間止まっていなければならないのは、結構たいへんですね。白目をむきそうになっちゃって（笑）。でも、スタッフの方々のほうがたいへんだと思います。
ギズ：今回、Pixelstickを使っての撮影をされていますね。初めて見られたかと思うんですが、感想はいかがですか？
おみそはん：すごいですよね。実際現場で動かしているときはどんな風になるのかわからないですけど、撮影すると可愛い絵がパーッと出てきて驚きました。デジタルの最先端の機械ですけど、それをコマ撮りというアナログな手法で撮影していくというのがおもしろいなと思います。伊勢丹にあるものも、今一番新しい最先端のものが置いてあるけれど、手間ひまかけて人間が作っている感じがするものが多いと思います。そのあたりもリンクするところがあると感じています。
長時間の撮影でお疲れのところ、丁寧に質問にお答えいただきまして、ありがとうございました。DJみそしるとMCごはんの新曲「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」は9月30日に発売。ミュージックビデオと合わせてぜひお楽しみください！
この原稿を書くにあたって、ミュージックビデオを何度も見たのですが、全然飽きないんですよね。撮影現場を見学していたということもあると思います。しかし、純粋に曲がかっこいいんです。バックトラックもかっこいいし、歌詞もかっこいい。その上、Pixelstickを使ったデジタルなのにアナログなミュージックビデオ。これ、しばらくヘビーローテーションしちゃいそうです。
食をモチーフにした作品やグッズを楽しむ「食べれないフード天国」
さて、この「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」がテーマ曲となっているイベント「平野紗季子の（食べれない）フード天国」は、フードエッセイストの平野紗季子さんを中心に、食べ物を食べて楽しむだけではなく、食べられないからこそ広がる「新しい食欲」に着目。ファッションデザイナー、アーティスト、ミュージシャン、ジュエリー作家などと食をモチーフにした作品やグッズを展開し、食の奥深さや豊かさを発信します。
ミュージックビデオの最後に平野さんもご出演されていますね。
参加クリエイターは平野紗季子さんとDJみそしるとMCごはんさんをはじめ、THEATRE PRODUCTS × ローザー洋菓子店、Crepe.、ROTARI PARKER、KLOKA.、Aquvii × 小谷実由 × 喫茶YOU、CHIMASKI、チーム未完成、LOS PAPELOTESとなっています。
会期と場所は以下の通り。
09/29（火）〜10/13（火） 伊勢丹新宿店本館2階＝センターパーク/TOKYO解放区
09/29（火）〜10/13（火） イセタン羽田ストア（レディス）ターミナル1
10/28（水）〜11/02（月） ジェイアール京都伊勢丹5階＝中央エスカレーター脇 特設会場
※一部アイテムが伊勢丹オンラインストアでも購入可能です。11/3（火）まで。
●平野紗季子×DJみそしるとMCごはん！トークショー＆プレミアムライブ開催！
「平野紗季子の（食べれない）フード天国」開催を記念し、今企画展のオーガナイザーでもあるフードエッセイストの平野紗季子と、音楽とミュージックビデオを担当したDJみそしるとMCごはんによる店頭イベントが、同TOKYO解放区で、10/03（土）に開催決定！
当企画では、二人のフード愛に満ちたトークセッションや、DJみそしるとMCごはんによる企画展のために書き下ろされた楽曲「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」のライブパフォーマンスが行われます。
更に、「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」CDと特製デザイントートのセットを購入した方を対象に、DJみそしるとMCごはんによるサイン会も実施。
＜イベント概要＞
◆日程：2015年10月3日（土）17:30～19:00ころ（予定）
◆会場：伊勢丹新宿店本館2F センターパーク／TOKYO解放区
◆内容：平野紗季子とDJみそしるとMCごはんによるトークショー／ミニライブ／サイン会
◆イベント参加条件：期間中、イベント商品をお買い上げのお客さま先着25名をイベント会場内に優先的にご案内いたします。
※お席のご用意がございませんので、立ち見となります。
◆サイン会参加条件：「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」CDと特製デザイントートのセットをご購入頂いたお客さまをご案内いたします。
※トークショー、ミニライブ後に開催予定。
時間に限りがございますので、制限をかけさせていただく場合がございます。予めご了承ください。
◆お問い合わせ先：03-3352-1111（伊勢丹新宿店 大代表）
『TOKYO解放区まで』とお問い合わせください。
※会場の状況により内容が変更になる場合もございますので予めご了承ください。
※本イベントの録画・録音はご遠慮ください。
「THIS IS ISETAN UNDERGROUND」を聴いて感じたのは、「衣食住」の中でも「食」はど真ん中だということ。生きるために必要な行為であり、心を豊かにしてくれるものでもあります。
いつも元気な人はもちろん、最近ちょっとお疲れ気味だなという人も、「平野紗季子の（食べれない）フード天国」を覗いてみてはいかがでしょう。「食」というど真ん中な世界に触れることで、エネルギーが湧いてくるかもしれませんよ！
兄弟メディアのroomieではDJみそしるとMCごはんさんに、「今後どういう歌を歌っていきたいか」を含めて紹介しているのでそちらも合わせてどうぞ。
source: ISETAN PARK net
（取材・文：三浦一紀 写真：石橋雅人）