殺人すら厭わない? 暴力と欺瞞まみれの中国・不動産事情 | ニコニコニュース

"陸の孤島"となりながらも立ち退きに抵抗を続ける現地住民
日刊サイゾー

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 21世紀に入り、中国各地では大規模な建設ラッシュが相次いでいます。都市部に林立する超高層ビル群は、かつては急速に発展する中国経済の象徴とされていました。しかし、その威容の下には、さまざまな闇が隠されているのです。

 現在でも中国各地で高層ビルやマンション、高速道路などが急ピッチで建造されていますが、開発計画上、邪魔になる場所に個人住居や集落が存在する例は珍しくありません。その対応策として、政府や省、市などの自治体が非合法世界の人間を雇い、住民に対しさまざまないやがらせを行い、無理やり立ち退きを要求する、いわゆる地上げを行う例が多発しています。日本においても暴力団員などが地上げを行うことがあるようですが、それは悪徳企業が私的に依頼するものでしょう。ところが、中国の場合はある意味、公共事業のような形で行われているのです。

 地上げ屋たちは、まずは住民に対し、電話で「立ち退け!」などと脅迫したり、住宅に落書きします。それでも動じず住民が立ち退きを行わない場合、住宅やそこに住む人々を文字通り「抹殺」します。

 今年8月20日、吉林省では都市計画のために邪魔となった婦人児童センターの職員たちに対し、何者かが有毒ガスをまき散らすという事件が発生、数人が病院に搬送されました。9月14日には山東省で、立ち退き命令に応じなかった住民の家が何者かに放火され、夫が焼死、妻が暴行を受け路上に放置されるという事件が発生しました。2つの事件の犯人は現在行方が追われていますが、彼らが立ち退くのを目的として自治体側が雇った刺客という可能性が高いでしょう。

 かつては、2005年6月11日、河北省で発電所を建設する際、立ち退きを拒否した農民たちを、迷彩服姿の武装集団300人が襲撃して6人を殺害するという事件も発生していますが、命の価値が薄っぺらい中国において、莫大な金が動く不動産における「死」は日常茶飯事なのです。

■不動産価格上昇のデマを流す中国政府

 こうして人々の犠牲の下に築き上げられた中国の建築物ですが、日本でも報じられているように、すでに不動産価格は下落の一途をたどっており、多くの投資家たちが破産に追い込まれています。しかし、国内では情報統制により、この事実は隠ぺいされ、経済評論家たちは、どこをどう判断したらそういう結論が出てくるのかわかりませんが、口をそろえて来年以降、不動産価格は上昇すると予想を立てています。裏で政府が指図していることは明らかであり、多くの中国国民がそのデマに気付き始めています。

 今年8月、香港最大の不動産グループ「長江実業」の会長・李嘉誠氏が、上海に所有していた大型複合施設を約200億人民元(約4,000億円)で売却しました。ほかにも、購入した中国企業の本社を中米のケイマン諸島に移転するなど、今年に入り李氏の「中国離れ」が加速しています。この事実を受け、共産党の機関紙「人民日報」は李氏のグループが中国から撤退したことについて、「モラルを疑う」「信用を失う行為」と激しく非難し、「国内経済には、なんら支障はない」と強がりの記事を掲載しました。ところが、李氏のみならず、すでに国外の著名な投資家たちが続々と中国市場から撤退しているため、識者の間では、バブル崩壊の日は目と鼻の先とウワサされています。

 数年前の土地バブルの際、中国では文字通り雨後のたけのこのように建て売り住宅や高層マンションが建設されました。しかし、多くの人々を犠牲にして乱造された住宅群には価格高騰を理由に入居者が集まらず、ゴーストタウン化している場所は少なくありません。そして現在、国内の経済が危機的な状況にもかかわらず、いまだに中国政府は虚栄と事実隠ぺいのために、開発を推進しています。一見、未来世界のような街並みの中国の都市ですが、僕には人々の苦しみや欺瞞を埋めるための「墓標」に見えてしまうのです。
(構成=亀谷哲弘)

●そん・こうぶん
中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)がある。
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