栄誉つかんだ「実行力」=研究費調達、フランス日帰り―医学生理学賞の大村さん | ニコニコニュース

 ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大村智・北里大特別栄誉教授(80)は、持ち前のバイタリティーで従来の枠にとらわれない研究活動を続けてきた。研究を「経営」と捉え、費用を企業から調達。部下を厳しく指導するだけでなく、自らフランスに「日帰り」で出張した逸話を持つ。

 立命館大薬学部長の今村信孝教授(62)は1982〜88年、北里研究所で大村さんの指導を受けた。微生物の培養液から新薬になりそうな化合物を精製し、特許取得や論文執筆を担うグループをまとめる担当だった。

 今村さんは、当時の大村さんについて「オーラが出ている大先生で、バイタリティーも実行力もあった」と振り返る。出張でフランスに飛んだ大村さんが空港で打ち合わせを済ませ、そのまま日帰りで戻って来たこともあったという。

 合言葉は「研究を経営する」。米国での経験を踏まえ、大手製薬会社と協力することで研究費を確保した。指導は厳しく、休日出勤も当たり前。「土曜日の午前中、区役所で用事があって研究室に行かなかったら、電話で呼び出されてすごい勢いで怒られた」と苦笑する。

 多忙だった大村さんは、夜遅くに研究室をのぞきに来ることが多かった。今村さんは「抜き打ちのように突然現れるので、研究室のみんなで『靴音のする靴を履いてください』と言ったこともあった」と振り返る。

 今村さんは「他に取る賞がないほど賞を取っていた。ノーベル賞は遅かったぐらいだ」と受賞決定を喜ぶ。

 立命館大は今年度、薬学部に創薬科学科を新設した。今村さんは「創薬は日本の得意技。大村先生のノーベル賞受賞が後進を育てるきっかけになれば」と期待を込めた。