自動運転車の事故報告書は読む人間を暗い気持ちにさせる…カ州はテストの成功終了を宣言できず | TechCrunch Japan

大手テクノロジ企業が人類を、車に運転手がいない未来へ追い込もうとしている。そのとき人間の目はデバイスを注視し、公道という、つねに一瞬後に何が起きるかわからないものにアルゴリズムが対応して、車を前進させる。そこでは、安全性に関する疑問が、倫理や哲学をめぐる議論を打ち砕く。

この前Googleは、同社の自動運転車(driverless car)が6年あまりのテスト期間に経験した11の“些細な”事故について書かれたブログ記事を発表した。その記事は11の事故のすべてを、ほかの車の人間運転者のせいにしている。それはまるで、テクノロジの全面勝利のように聞こえるが、実はそれらが指しているのは、二つのまったく異なる運転スタイルの混在がもたらす、本質的な複雑性だ。そしてそれは、現在のロボットカーが慎重すぎる、用心しすぎるのかもしれないことを、示唆している。

その、慎重で教科書的なアプローチと、人間ドライバーのリスクを冒し心の手抜きをする性向を対比させると、自動運転車のリスク回避アルゴリズムは、事故が起きることをつねに待機しているようにも思われる(すくなくとも路上に人間ドライバーがいるかぎり)。

Googleは今、その自動運転車にもっと人間らしい運転をさせようとしている。この夏、開発チームの一人が言ったその言葉は、まるでロボットについて語る言葉のように聞こえた。つまり自動運転車というよりむしろ、高性能なロボットが運転する車だ。なにか、おかしなことに、なってきたようだ。

公道をアルゴリズムだけに導かれて走行する自律車両はたしかに、技術的成果としてはすばらしい。しかしそんな自動走行車両を、圧倒的に人間ドライバーの多い有機的で瞬時の対応能力を要する混乱の中に放り込むためには、さらに高度な技術や発想が必要であり、われわれはそこにまだ到達していない。率直に言って、自動運転車に関してGoogleらが今日まで達成した技術は、非常に巨大で複雑な問題の、易(やさ)しい表皮の部分だけかもしれない。

自動運転車の開発の最後の1マイルは、大量の技術的努力とともに、許容すべきリスクに関する規制当局や社会の合意を必要とする(大量の雇用喪失をどうするかというリスクもある)。自動運転車のメーカーが事故の全責任を負うという方式を、関連企業は市場を加速するための一つの方法として、検討している。

ご存知のようにカリフォルニア州は、この技術開発に対してきわめて前向きだ。州の陸運局は今すでに、“自律車両の試験後の展開”という、まるで当たり前のような文言で、実用時の規制を作成しているが、しかし当然ながら前述の複雑性ゆえに、それは予定より大幅に遅れている。草案の公表は、予定では今年の初めだったが、まだ何も出てこない。

その陸運局がこのほど、カリフォルニア州の路上で、自律車両の試験中に起きたすべての事故に関する公式報告書をWeb上に発表した。期間は昨年の9月から今日(こんにち)までで、そのほとんどはGoogleの自動運転車に関連している。報告書に登場する9台のうち8台が、Googleのロボットカーだ。残る一台は、Delphi Automatic社製の自律車両である。

その報告書は、非自律車の運転者による人的エラーが事故の原因、というGoogleの主張を表面的には支持しているようだが、人間とロボットの互いに異なる運転スタイルの混在がもたらす困難性も、十分な量の証拠とともに指摘されている。

たとえば今年の4月の例では、交差点で右折しようとしたロボットカーが、対向車を避けようとしてブレーキを踏み、ややスリップしたのち、後部に低速の追突をされた。追突した人間ドライバーは、自分も右折しようとして前方のLexusに気を取られ、そのGoogle Lexusが低速でそのまま進むと誤判断した結果、“ブレーキを十分に踏み込まなかった”。そして、ぶつかった。

また今年の6月の例では、自動走行していたGoogle Lexusがやはり、人間が運転する車に低速で追突された。この例ではロボットカーは赤信号で停車していて、車線に空きはなかった。後ろにいた人間ドライバーは、自分とGoogle車が直進車線にいたにもかかわらず、左折車線用の青信号を見て発進し、停まっていたLexusのお尻に当たったようだ。

もう一つの6月の例では、青信号の交差点で前方が渋滞していたために減速中のGoogle Lexusが、人間ドライバーに追突された。人間ドライバーはそのとき、道路の状況よりも青信号に気を取られていたと思われる。

報告書が詳述している事故の多くは、非常に低速で起きている。しかしそれはそのときの、自動運転車のテスト走行の性質…都市部の複雑な道路状況における走行試験…によるものかもしれない。これらの事故が起きた試験走行も、おそらく成功走行のマイレージとして記録されたと思われるが、それにしても長年の開発努力にもかかわらず、事故はやはり起きてしまうのだ。

5月にGoogleは、同社の20台あまりの自動運転車が、平均で毎週1万マイルの自動運転走行に成功した、と報告した。その時点で、6年あまりのテスト期間における成功走行の、のべ合計はほぼ100万マイルとされている。ということは、ざっと計算すると、それから今日(こんにち)までで、さらに20万マイルが加わったことになるだろう。試験の規模が5月のころと同じだった、とするなら。

陸運局の報告書に載っているGoogle関連の事故は、全8件中6件が今年の前半に起きていて、うち、4月が2件、6月が2件となっている。

今現在、カリフォルニア州における自動運転車の路上走行試験を州陸運局が認めている企業は10社、それらはVolkswagen Group of America、Mercedes Benz、Google、Delphi Automotive、Tesla Motors、Bosch、Nissan、Cruise Automation、BMW、そしてHondaだ。

Appleも最近陸運局と会談して、自動運転車両の今後の規制について議論したらしい。Appleが自動車に、電気カーに、あるいは自動運転車(?)に進出する、という噂に、火を注いだ形だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。