ハンドメイド作品のマーケットプレイスminneの流通額は12億円に、企業や自治体とのコラボで攻勢をかける | TechCrunch Japan

GMOペパボが展開するminneは2012年にローンチしたハンドメイド作品のマーケットプレイスだ。10月21日、minneはこれまでの成長と今後の事業戦略についての発表会を開催した。GMOペパボの代表である佐藤健太郎氏が登壇し、神戸市、パルコ日本ホビー協会と協力してリアルの場で作家同士や作家と購入者のつながりを構築していくこと、そしてminneのブランドを強化する施策としてヤマト運輸との梱包資材の開発やminneのサービスを改良していくと伝えた。

minneは作家が作品をサイト上に登録して、他のユーザーにアプリやウェブサイトを介して販売できるC2Cのサービスだ。現時点でminneのアプリダウンロード数は300万を超えたという。minneのプラットフォームに登録する作家数は15.6万人に上り、掲載作品数は179万点までになった。また2015年第3四半期におけるマーケットプレイスの流通額は12億円を超え、取引の6割はアプリ経由だったと佐藤氏は説明し、今期中にも500万アプリダウンロードを目指すと意気込む。

minneの事業にとって重要なのは、販売側の作家と購入側のユーザーの両方を惹きつけることだ。そのために、今後の取り組みとして作家同士の交流の場や作家と購入者が出会える場を設けてハンドメイド作品を中心とするつながりを作ること、そしてハンドメイド作品の売買ならminneというブランドを強化することに注力する。

minneは2015年5月、作家同士が作品づくりや販売に関する悩みを相談したり、気軽に他の作家と交流したりできる「minneのアトリエ」をIID世田谷ものづくり学校の一室に開設した。今回新たに神戸市と協力し、デザイン・クリエイティブセンター神戸してリノベーションしたKIITOという施設にminneのアトリエを開設すると佐藤氏は発表した。minneはアトリエを通して、より多くの人にハンドメイド作家と接点を持ち、minneでの出店を促す考えだ。自治体としてはminneと組むことで、ひとり親の世帯、子育て中の親、高齢者、障害者、若年未就労者に趣味や特技を活かした在宅ワークという新たな働き方の支援を行うという。

作家同士に留まらず、minneは作家と購入者とつなぐイベントも多く開催してきた。2015年3月には新宿伊勢丹での「minneの手作りマーケット」を開催し、優秀なハンドメイド作品を表彰する「ハンドメイド大賞」も実施した。10月21日の発表でminneは、全国展開する百貨店のパルコと協力し「ミエルツアー」と題し、2016年3月から福岡、広島、渋谷、仙台、北海道においてパルコの実店舗でのイベントを開催すると伝えた。ミエルツアーは、作家自身が接客して、自分の手で販売を行うイベントである。また、イベントの開催に関しては日本ホビー協会との取り組みを行うと発表した。日本ホビー協会は、来場者数12万9000名にも上るハンドメイド作品の日本で最大規模のイベント「日本ホビーショー」を主催している。来年、minneはスポンサーとして企画やステージに関わり、さらに同会場でのminneの作家2000名以上の出店をサポートする計画だ。「ハンドメイド作品の魅力や品質の高さをより多くのユーザーに伝えたいと考えています」と佐藤氏は話す。また、このような作家と購入者が直接対面する場を通して、作家の活躍の場が広がり、購入者と直接会うことで作品づくりのモチベーションにもつながるとしている。

minneは作家、そして購入者の双方を自社プラットフォームに惹きつける取り組みも積極的に行う予定だ。minneのブランドを強くするため、アプリやサービスの使いやすさといった機能面の改良と「世界に一つしかないハンドメイド作品を届ける」というサービスの世界観を守るための施策に取り組んでいる。作家への取り組みとしては、作家がより簡単に作品を登録できるようにすること、作品の魅力が伝わる写真の撮り方や説明文の書き方が分かるといったインターフェイスの改良を行っている。購入者への施策としては、決済方法を充実すること、欲しいものがすぐ見つかるようにアルゴリズムでユーザーの好みに合わせて商品を紹介することなどに取り組んでいるという。

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ヤマト運輸と開発したminneオリジナルデザインBOX

また、minneはブランド強化の一環としてヤマト運輸とminneオリジナルの梱包資材の開発を行ったと発表した。開発したパッケージはハンドメイド作家の意見を取り入れ、使い勝手と見た目にこだわったという。開発したのはビニールのラップで作品を安全に梱包する「クイックフィットエコノ」とアクセサリーなどの小さめの作品を梱包するためのパッケージの2つだ。外観はminneのロゴをあしらい、温かみのあるハンドメイド作品の世界観を壊さない柔らかい色合いを採用している。

今回の発表は、自治体や大手企業とのコラボレーション、サービスのブランド強化などminneの攻勢を示すものだった。海外では、今年の3月にアメリカのハンドメイド作品プラットフォームEtsyが上場し、C2Cプラットフォームに注目が集まっている。ただ、Etsyは商品がハンドメイドであるという性質上、スケールの課題に直面してきた。そのため、Etsyは承認した作家に対して量産できる体制を整えるための支援を行うと発表したが、それがハンドメイドを取り扱うという企業コンセプトと相容れるかどうかはまだ分からない。今後minneも同様の課題に直面しないとも限らない。minneの「ハンドメイドの新たな価値創出」を軸とした佐藤氏の戦略が功を奏すかに注目したい。