フィリピンの貧富の差を描く「バロットの大地」TIFFで上映 | ニコニコニュース

ポール・サンタ・アナ監督(左)と プロデューサーのクリスマ・マックラン・ファハルド氏
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フィリピンの現状を描いた「バロットの大地」が10月24日、第28回東京国際映画祭「CROSSCUT ASIA #2 熱風!フィリピン」部門で上映され、メガホンをとったポール・サンタ・アナ監督と、プロデューサーのクリスマ・マックラン・ファハルド氏が、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われたティーチインに臨んだ。

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故郷を離れ、恋人と都会で暮らす主人公の青年ジュンは、他界した父から広大なアヒル農場を相続することになる。ジュンは農場を売却しようと考えていたが、家畜や雄大な自然に囲まれた生活や、農場の管理を委託する一家との交流に少しずつ魅力を感じはじめる。

アナ監督は、2011年に「クリスマス・イブ」の脚本家としてで第24回東京国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞しており、「監督として今映画祭に戻って来られて光栄です」と感無量の面持ちで語った。

今作では、タイトルでもあるフィリピンの伝統食バロット(ふ化直前のアヒルの卵をゆでたもの)が印象的に描かれる。フィリピン国外で"グロテスクな珍味"として紹介されることも多く、都会に住む人々や若者のバロット離れが加速しているという。

アナ監督は「フィリピンでもバロットがどこからくるのか分からない人が多い。田舎の方に行くと生活が苦しい人が多く、中流階級の人々が所有している農場などを、土地の権利がない貧しい人々に住み込みで管理してもらうという社会のサイクルがある」とフィリピン社会の貧富の差を説明。「国民に不公平感があるんです。そういうものをバロットを象徴として伝えていければと思いました」と製作意図を明かした。

さらに、都会で暮らす主人公のジュンが、これまで関わってこなかったアヒル農場を知ることを描くことで、「中流階級の人々がが社会を変えていけるということを示したかった。責任というものを中流階級の皆さんに感じ取ってほしかった」と社会へのメッセージを投げかけていた。

第28回東京国際映画祭は10月31日まで開催。