研究結果:ロボットがモノをつかめるようになるまで10日かかる

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赤ん坊よりは早い…かな?

ロボットは多くのことに優れていますが、モノをつかむのはあんまり得意ではありません。ロボットが乱雑なテーブルの上からモノをつかめるようになるまで、何日かかるんでしょう?

カーネギーメロン大学がこの問いへの答えを求めて研究を行ないました。研究に参加した(させられた?)のは上の写真のバクスターくん。2本腕のモダンな工業ロボットで、通常は工場で反復作業をしています。研究チームは、バクスターくんがモノで溢れるテーブルからモノをつかめるようになるか実験を行なうことにしました。

バクスターくんは、それぞれの腕に2本ずつついている指でモノをつかむことができます。その指には、つかむモノを見るために高解像度のカメラを内蔵。さらにマイクロソフトのKinectが前方テーブルの全体を把握するために使われました。MIT Technology Reviewは研究チームがどのようにバクスターくんにモノのつかみ方を教えたか、以下のように説明しています。

研究チームはバクスターが目的のモノからほかのモノを引き離し、ランダムな場所を選ぶために指をある一定の角度に回してから、目的のモノをつかむために垂直に指を降ろすようにプログラムしました。その後、バクスターが腕を持ち上げて、モノをつかむのに成功したかを圧力センサーで確認。各場所でバクスターは188回モノをつかむプロセスを繰り返し、毎回つかむ角度を10度ずつ変えました。バクスターが学習できるように、研究チームはバクスターの前のテーブルにさまざまなものを置き、1日最大10時間、人間が介入することなくバクスターを放置しておいたのです。


バクスターくんはモノや画像を認識するためのニューラルネットワークを備えていましたが、助けになるのはそれだけ。そして経過すること700時間…約5万回モノをつかみ、150個の異なるモノを持ち上げて、バクスターくんはTVのリモコンやプラスチック製のおもちゃがちらかるテーブルから、モノを持ち上げることを覚えたのでした!

現在、バクスターくんは以前に見たことがあるものだったら73%の確率で、見たことがないものだったら66%の確率で持ち上げられることができるようになりました。さらに、モノを見るだけで、それをつかむのに成功するかを80%の確率で予測することも可能になったとのことです。

しかし、「モノをつかむのに成功」と言っても、私たちが想像するのとはちょっと違うかもしれません。たとえば、赤いおもちゃの銃をつかんだとき、バクスターくんはつかむことはできましたが、指の大きさと銃の幅があっていなかったため、成功とは言いがたい、と研究チームは記しています。また、つかむのに成功しても、モノが滑り落ちてしまうこともあったそうです。

まだまだロボットが細かい作業をできるようになるには時間がかかるかもしれません。でも研究は始まったばかりですから。


source: arXiv via MIT Technology Review

Jamie Condliffe - Gizmodo US[原文
(conejo)

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