【ワシントン時事】米ジョージ・ワシントン大学の国家安全保障公文書館は24日、冷戦時代の西側の先制核攻撃に対するソ連の警戒の深さを分析した米機密文書を公開した。1983年に行われた北大西洋条約機構(NATO)の軍事演習の際、「米国は不用意にソ連との関係を一触即発の状態に陥れた恐れがある」と指摘している。

 NATOは当時、核戦争を想定した演習を毎年実施。83年11月の「エイブル・アーチャー(優れた射手)」と題した演習では、同9月の大韓航空機撃墜事件を受け、対ソ関係が緊張する中、実物に似た模擬核弾頭を搭載した航空機を動員するなど、新たな手法を取り入れた。

 これに対し、ソ連側は東ドイツをはじめとして、空軍が高度な警戒状態に入り、情報収集活動も大幅に強化。実際に危機が起きた時と同様の警戒態勢を敷いた。報告書は「米国が演習を隠れみのに利用して攻撃に着手するとソ連軍首脳は真剣に危惧していた可能性がある。少なくともソ連にとって戦争の恐怖は現実味を帯びていた」と結論付けた。

 公開されたのは、1990年2月に米大統領の諮問機関、対外情報諮問委員会に提出された報告書。公文書館が情報開示請求を通じ入手した。