トルコに報復示唆=シリア防空体制強化へ―欧米との衝突回避・ロシア | ニコニコニュース

 【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領は25日、トルコによるロシア軍機撃墜を受け、対空ミサイルでシリアの防空体制を強化すると警告した。「シリア領空を侵犯したのはトルコ軍機」(軍参謀本部)と逆に批判するとともに、軍当局間の連絡も遮断。報復の可能性を示唆し、トルコを強くけん制する狙いとみられる。ただ、ラブロフ外相は記者会見で「トルコと戦争するつもりはない」とも語った。

 国営テレビによると、プーチン大統領は記者団に「再発の可能性を排除できず、発生した場合は対処しなければならない」と強調。ショイグ国防相は会議で「シリア全方面の防空体制強化のため、西部ラタキアの空軍基地に(最新鋭地対空ミサイル)S400を配置する」と述べた。

 国防省などによると、24日に撃墜されたロシア軍機の乗員1人は緊急脱出後にパラシュートで降下中、反体制派の銃撃を受け死亡。もう1人は25日未明、アサド政権側に救出された。プーチン大統領は、死亡した乗員に最高位の「ロシア連邦英雄」の称号を授与すると発表した。

 プーチン大統領は「(対テロ戦の)裏切り行為」「テロリストの共犯者」と最大限の表現でトルコを非難。「トルコ現政権は長年、自国のイスラム化を(過激化の方向で)支持している」と批判した。ラブロフ外相は25日のトルコ訪問を急きょ中止した。

 ただ、トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国。2014年に軍事介入した非加盟国のウクライナとは全く状況が異なり、ロシアも慎重な対応が求められている。プーチン政権は、アサド大統領の進退などシリア情勢で立場を異にするトルコに対決姿勢を示しつつも、欧米陣営との軍事的な衝突は回避する方向で、対テロ外交を進める見通しだ。

 ペスコフ大統領報道官は24日夜、記者団に「(トルコに)最も激しい憤慨と落胆を覚える」と表明。エルドアン大統領の12月の訪ロ延期の可能性に言及した。25日にはトルコ国境付近での空爆継続も表明した。ロシア外務省筋は記者団に「トルコから説明を待つ。駐トルコ・ロシア大使召還は現時点で検討していない」と語り、決定的な関係悪化を避けたい考えもにじませた。