野党でも“結果にコミット”するべき | ニコニコニュース

最終的に、議席数で圧倒する与党が“強行”であっても採決してしまうのであれば、野党にはなす術がないということになってしまう。少数野党が、政策に実質的に影響を与えるためには、どのような戦術が考えらえるのだろうか。前回に引き続き、日本を元気にする会の山田太郎議員に聞いた。

赤組か白組かの“運動会”の様相を呈す国会


-先程、「国会での議論は“ちゃちい”」という話がありましたが、参議院で行われた安保法案の採決は非常に混乱しました。例えば、民間の会社であれば「A案とB案を話し合って、それぞれの良いところを束ねて最終的には折衷案のCにしましょう」というような議論の進め方は一般的だと思います。しかし、国会ではそうなりません。牛歩や長々と演説する“フィリバスター”のような戦術が採用されますし、ああいったものは見方によってはナンセンスだと思います。

山田議員は、民間企業で創業した会社を上場をさせるなど多くの経験を積んだ上で参議院議員になりました。国会内での議論の慣習に違和感を覚えることも多いと思います。何故、国会では建設的な議論が行われにくいのでしょうか?

山田太郎議員(以下、山田): 国会の議論が民間企業と異なる点の一つに、党議拘束が挙げられます。議員は所属政党によって党議拘束を受けるのです。

例えば、集団的自衛権に関しては、民主党政権時代のある総理は「そういうものを発動せざるを得ない時もある」と発言していましたし、その他の複数の幹部も容認の立場だったはずです。今回も参院で可決せずに衆議院に法案が戻ってきた場合、一部議員は賛成するのではないかとすら言われていました。しかし、党議拘束があるので基本的に党が「反対」といえば所属議員は全員同じ立場を取らざるを得ません。内容よりも立場が前に立って、立場や議論が変節していくのです。

もう一つは、選挙の問題があります。私が国会議員になって、非常に違和感を覚えたのは、 “売り上げ”がないということです。上場企業を作って社長をやった経験がありますが、企業においては来月の売り上げが立っていても、3ヶ月後には、どうなるか分からないので、常に顧客の声を気にしています。しかし、議員の場合、衆議院なら解散があるものの2年から3年、参議院ならば6年はチェックを受けないので、その間はある種“何でもあり”になってしまいます。所詮、直接国民の声をきかなくても良いということになってしまうのです。

秘密保護法などもそうなのですが、半年~1年経つと「あったっけ、そんなの?」となってしまう有権者も多いので、法案の内容云々よりも、その時々の政局のメカニズムが前面に出て、最終的に赤組か白組かの運動会の様相を呈してしまう。つまり野党は反対をするものであり、与党とは賛成をするものであるという構図です。マスコミも具体的な政策の中身よりも、ワイドショー的になり、赤・白の対立を煽ります。

一方で与党も、複雑な構造を持っています。今回の安保法制は典型的ですが、自民党内はもちろん、公明党や官僚との間で様々な議論をしてきているので、一旦与党としてまとまったものを国会で崩すわけにはいかない。“運動会”の本番が国会なわけですが、そこで今までの議論で決まったフォーメーションを崩してしまえば、与党全体が崩れてしまう可能性がある。

民間であれば「こんなことで揉めていると、売り上げが立たなくて、我々は潰れるぞ」という危機感があるでしょう。しかし、国会や議員はあんなに揉めても潰れはしない。選挙までは少なくとも持つ。「どうせ選挙になれば次の課題が問題になって、国民はこのことは忘れているんだろう」みたいに考えているわけです。採決時の混乱の際は、みんな“活き活き”としていた


-採決の際の議場は非常に混乱していました。山田議員が読み上げた附帯決議書もぐしゃぐしゃになっていますね。

山田:委員長席に議員がダイブしている横でこれ(附帯決議)を読んでいました。コピーを10枚持っていて4枚破られたので、最後は手のひらサイズのものをお財布の中に入れときました。これが読めなければ大変なことになってしまいますから。

「これを8分で読めるはずがない」と言われますが、私は早口で全部読みました。あの委員会が終わる最大の長さは、私がこれを読み終える時間だったわけです。

-ああしたパフォーマンスは何故起こるのでしょうか。あれをやることで支持が得られると思っているのでしょうか。

山田:違いますよ。あそこにいると楽しいんですよ、きっと(笑)。

-「楽しい」ですか?

山田:みんなテンション上がっていますから。あんな大人の棒倒しみたいなものが許される。罪に問われないなんてことは、通常ならあり得ませんよ。

私は攻撃されてはいけない立場ですから、「しっかり、やることをやらねば」と思って横目で見ていましたが、お互いになんか活き活きとやっていましたからね。いつも寝ていて、何の議論しているかも理解してない議員が、異常に活き活きしてましたよ。言い方は悪いですが、あれは大人の運動会ですよ。

-ともあれ、最終的に多数決で決まってしまうのであれば、選挙の時点ですべての決着がついているという結論になりかねません。しかし、実際には少数野党でも様々な戦術があると思います。前回は安保法制について伺いましたが、山田議員や日本を元気にする会は、国会内での議論において、どのような戦い方をしているのでしょうか。

山田:例えば、児童ポルノ禁止法が改正され、マンガ・アニメに関する附則条項が外れた際には、附帯決議をつけたり、法律の運用が現場で変な方向に行かないように委員会でうまく答弁を引き出したりと、あらゆる手段を駆使しました。

他にも直近ですと参議院選挙制度改革の際にも現実的な対応をしています。いわゆる、「一票の格差」を3倍以内にするために、自民党は当初6増6減案を提出していました。これに対して、公明党と民主党が2倍以下になる案を提出したわけですが、この時も現実的な対応をしました。我々は「都道府県単位の選挙制度を壊さない」というのが世論のニーズだと考えたのです。

新聞調査などを見ると、「一票の格差」を2倍以下にしてしまうと、すべてガラガラポンになって、衆議院と同じような選挙システムになってしまうことが懸念されていました。であれば、本来我々は全国比例代表・ブロック制の導入を理想として主張していましたが、これを一旦抑えて、段階的に憲法違反になっているものを直ちに解消しなければ、次の参議院議員選挙はもっとおかしなことになる、と主張したのです。

このように、自分たちの理想を一旦抑えてでも、現実的な対応をとり、まずは憲法違反の状態を解消しました。そして、実はニーズの高かった都道府県単位の選挙制度については、高知と徳島、島根と鳥取に犠牲になってもらいましたが、今回の4県・2合区で食い止めたということです。

さらに具体的には、本文の中の附則条項の7条に、「今回一度限りでもう1回見直す」と内容の文言を私が入れました。それでも法案提出者として私が衆議院で答弁席に立っていると他の野党側は、「憲法違反の法律を作りやがって!いいと思っているのか!」と言われましたけどね。

要は、ある種の正義というか、多くの人が「そりゃそうだよね」と感じる落としどころを出せるかどうかだと思っています。私はみんなの党時代からアジェンダを作成してきました。理想通りではないけれど、ベターな案を実現するための具体的な策を考えた時に、与党であれ何であれ、「そりゃそうだよね」と感じてしまう内容であれば、NOと言えなくなってしまうわけです。

今回の安保法案についても、我々が修正で勝ち取った「国会の関与」という点については、元々公明党も主張していた内容でした。それを出せば与党側もNOと言えないでしょう。つまり対極にある反対論を述べるのではなくて、むしろ現状で中途半端なものに対して、「本当はもうちょっとこうしたいんじゃないの?」というポジションの案をぶつけることによって、与党側にも「これだったら受け入れてもいいんじゃないか」という雰囲気が生まれるわけです。「是々非々」という言葉がありますが、これは賛成/反対ではなく、もっとより良くする、悪いものなら改めるという立場なんだと思います。

安保法案については、大規模な反対デモが行われましたが、私もデモは否定しません。デモに代表されるような反対の世論があったからこそ、「何らかの修正に近いことをやらないと世論は収まらない」「自分たちが強行と言われてしまう」という“何か妥協しなければいけない空気感”を作ることが出来たからです。デモがなければ、私たち野党の修正をここまで与党が受けいれることはなかったかもしれません。しかし、否定はしないものの、それだけをやり続けても、仕方なかったということだと思います。

―「反対」の中にも、ある程度幅がありますから、法案の修正などの過程は非常に重要だと思います。しかし、メディアも採決のドタバタの様子をクローズアップするばかりで、今回の修正の具体的な内容などについては、それほど大きく扱いません。

山田:私も、仲の良い記者に我が党の修正協議や合意内容の詳細について書いてくれるように話したのですが、デスクから「記事に出来ない」と言われたそうです。「なぜなら面白くない」からだと。つまり、「安倍さんが譲歩をしたとか、そういう論調はイヤだ」と、大手新聞の記者2人ぐらいから言われました。あくまで、「野党の反対を振り切った」という形じゃないと盛り上がらないというわけです。週刊誌やワイドショーじゃないんだから、と思いますけどね。政権交代しなくても、野党として出来ることがある


-与党案に反対するだけではなくて、野党でありながら与党の法案の内容に影響を及ぼすことは出来るのでしょうか。

山田:出来ると思います。与党と野党で赤白に分かれた運動会になってしまうと、「白もいいこと言ってるじゃないか」と言った瞬間、赤組から「この裏切り者」と言われてしまう。

安保法案をめぐっては私たちも同じことを言われました。野党なのに、「お前ら安倍さんに塩を送ってどうすんだ」と。しかし、我々にしてみれば塩を送ったつもりはない。むしろ与党にしてみれば、単独で通せたものを修正した法案が通ってしまった方が、制約が強くなるわけです。国会は弁論大会じゃありません。私は野党であったとしても、政治家として結果にコミットするべきと思います。

何か信念があって、政権交代をしないと1つも実現しないというのも一つの考え方でしょう。しかし、私はそう思わない。少なくとも、私はこれまで自分が書いたいくつのかの法案が法律になっている実感を持っていますし、法案じゃなくとも省令通達を変えてきた実績があるからです。

-参議院制度改革や安保法制などの経験を踏まえて、少数野党であってもやり方によっては、大勢に影響を及ぼせるという手応えを感じていますか?

山田:例えば、我々は里親や児童養護施設の問題に取り組んでいます。乳幼児の段階で乳児院や児童養護施設などに子供を送ると、愛着障害になってしまう。そのため、里親で育てるべきだという方向に政策を進めようとしても、自民党は施設の関連の団体から支援を受けている。ここには施設の子供が減ると予算が減るので、離したくないという歪んだ構造があるわけです。こういう既得権益から我々は自由なので、「施設から里親への流れをつくるべきだ」と言えるわけです。

一部の国会議員は抵抗するかもしれませんが、多くの議員がなんとなく「おかしいよ、やっぱり」となれば、政策は前に進みます。つまり、与党の人間が仲間を裏切るような形になるため言いにくく感じていることを見つけてあげる。我々は、思想的に右とか左ではなくて、与党の人間が言いにくい真実を、いかに見つけて、球を先に投げてあげるか。そのためには世論を喚起する、そこを意識して活動してきました。そういうやり方もあると思います。

-与党側の隠れた本音みたいなものを、うまく引き出していくということですね。

山田:そうですね。ただ、そうした場合にも世論の後押しが必要なんです。やはり世論を無視することはできませんから。

安保法制については、修正によって大きな成果を勝ち取れたと思います。私自身は、元々反対していた人間ですから、法案の通過が既定路線の中で、それなりの実行力と影響力を与える方法を考えて、修正と言う選択肢を取りました。

こうした交渉をするときには、最初から「全部ダメ」だと話になりません。私はビジネスでも、そんな態度で交渉に勝ったことはありませんから。しかし、多くの野党政治家はそれがわからない。それは野党しかやったことないからわからないと思うのですが、少しずつ駆け引きしながら実質的な影響力を確保することも重要だと思います。