「被告人は無罪」。東京高裁で開かれたオウム真理教の菊地直子元信者(43)の控訴審判決。大島隆明裁判長が逆転無罪を言い渡すと、ほぼ満席の傍聴席からはざわめきが起きた。被告人席に戻った菊地元信者は、込み上げてくる涙を抑えるかのように、何度もハンカチで口を押さえて鼻をすすった。

 午後1時半ごろ、102号法廷に入った菊地元信者は、眼鏡を掛けグレーのパンツスーツ姿。判決主文が言い渡された際は、証言台の前に正面を向いて立ったままで表情はうかがえなかった。

 その後、被告人席に座った菊地元信者。自らの主張を退けた一審判決について「不合理」「論理の飛躍がある」などと指摘する判決理由に耳を傾けながら、時折涙ぐむような様子も見せた。

 約1時間15分に及んだ言い渡しの最後、大島裁判長が「法律的には無罪だが、あなたが運んだ薬品で重大な犯罪が起きた。当時は分からなかったとしても、教団内でのワークがどのような犯罪を生んだのか。きちんと心の中で整理してほしい」と語り掛けると、何度もうなずいて、法廷を後にした。