キャンパスにゲームな雰囲気のサウンドが。伊藤賢治氏,佐野電磁氏,SAK.さんによる慶應義塾大学学園祭トーク&ライブイベントをレポート | ニコニコニュース

キャンパスにゲームな雰囲気のサウンドが。伊藤賢治氏,佐野電磁氏,SAK.さんによる慶應義塾大学学園祭トーク&ライブイベントをレポート
4Gamer

 2015年11月23日,慶應義塾大学三田キャンパスにて開催された三田祭にて,ゲームミュージックコンポーザーとしてお馴染みの伊藤賢治氏と佐野電磁氏によるユニット「伊藤電磁」と,シンガーのSAK.さんによるトーク&ミニライブイベント「伊藤電磁 feat.SAK in 慶應義塾大学 三田祭」が開催された。

 「ロマンシング・サガ」や「パズル&ドラゴンズ」などの作曲者として知られるイトケンこと伊藤氏と,「リッジレーサー」や「ドラッグ・オン・ドラグーン」の楽曲制作(とおしゃべり)で知られる佐野氏,そして「Dance Dance Revolution」の「Find The Way」などでゲーム音楽にも深い関わりのある,慶應義塾大学卒業生のシンガーSAK.さんによって,興味深いトークや楽曲制作が披露されたイベントの模様をレポートしよう。

 イベントはまず,伊藤氏と佐野氏の軽妙な掛け合いからスタート。これまで何度か行われてきた伊藤電磁のイベントでは,ノーテーマの無軌道トーク(失礼)が多かったが,この日は学園祭ということもあってか,自身がゲーム音楽家という仕事に就くまでや,就いてからの思い出話が中心になった。

 ゲーム会社に就職すると教授に告げたところ,「もっとちゃんとした会社に行きなさい」と諭されたという佐野氏,音楽を仕事にしようとしたがなかなかうまく行かなかった伊藤氏と,ともに就職には苦労したそう。就職時期がバブル華やかなりし頃で,今ほどゲーム作りに対して理解のなかった時代だったと振り返った。

 就職してからは,「音楽スタッフが当時30歳の植松伸夫さんと僕だけで,社員のの多くが20代だった」(伊藤氏),「ナムコの開発チームに(当時としては大容量の)1GBのハードディスクが導入されるときいて“一生かかっても埋まらねえじゃん!”と驚いた」(佐野氏)と,当時を懐かしむトークを披露し,来場者を楽しませていた。

 また,イベント前日の11月22日にテレビ朝日系で放送された「題名のない音楽会」がゲーム音楽特集だったこも話題に上った。自身の「パズル&ドラゴンズ」が演奏された伊藤氏は「ゲーム音楽がこういう機会で取り上げられるのは大変感慨深い」とコメント。一方佐野氏は,「(自身が得意とする)クラブ・ダンス系はそういうのに呼ばれないからね!」とスネて見せ,結局番組は悔しいから見なかったと明かし,爆笑を誘っていた。

 ひとしきりトークで盛り上がったところで,伊藤氏が弾くジングルに乗せてSAK,さんが登場。SAK.さんも卒業生として,学生時代からシンガーになるまでの経歴を披露した。


 SAK.さんはKALUAという音楽サークルでの活動していて,シンガーになりたいという気持ちが強く,就職活動で一般企業の最終面接までたどり着いたものの,辞退してしまったとのこと。しかし,どうやってシンガーになったらいいかが漠然としか分からず,ネット上で見かけた「仮歌を歌ってくれる人募集」に応募したところ,募集していたのがノイジークロークの加藤浩義氏で,そこからシンガーへの道が開けたという。
 これもご縁があってのことだと,出演者も含めて驚いていたのが印象的だった。

 イベント後半は,楽曲の制作風景を披露するという,ある意味もっとも伊藤電磁らしいコーナーに。佐野氏がPCで音楽制作ソフトを起動し,SAK.さんに向かって「はい,お歌を歌っていただきましょう!」と促すと,SAK.さんも慣れたもので,マイクに向かって「♪アー」と華麗なコーラスを響かせる。「ちょっと変化球いきましょうか」という佐野氏のリクエストに,SAK.さんが「♪ユキチ」(※慶應義塾大学の創立者は福沢諭吉)とセリフを入れて応えるシーンもあった。

 イベントの終了時間が刻々と迫る(トークに時間を割きすぎた感あり)中,次に佐野氏と伊藤氏は伴奏の制作に取りかかる。手順としては,佐野氏が「この音はどう?」と確認をし,伊藤氏がオッケーなら演奏をしてレコーディングしていくというキャッチボールだ。 そうしたやり取りを経て,ベース,コードと打ち込みによるバックトラック(伴奏)が完成した。

 最後は総仕上げとばかりに,完成した曲に乗せて伊藤氏がキーボードの生演奏を披露したのだが,このあたりはいくら文字で書いても伝えきれないので,セッションの最後にあたる約13分間をムービーで公開しよう。イトケン節が吹き込まれて完成するまでの雰囲気をお楽しみいただきたい。

ムービー(※4Gamerへジャンプします)

 こうして見事に曲が完成。すばらしい演奏を披露しただけでなく,普段は目にすることのできない制作過程を見事なショーに仕立てあげた3人に,惜しみない拍手が送られてイベントは終了となった。大学という空間で,こうしたゲームやゲーム音楽に関するイベントが行われたことは,それだけゲームというものが文化として認められてきた証拠ではないだろうか。今後ますます,こういった機会が増えることを期待したい。

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