すぐキレるトンデモ暴走老人が急増!20代女性にラブレター返され脅迫、腹を立て妹を撲殺 | ニコニコニュース

「Thinkstock」より
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 先日、東京都江戸川区の競艇場で60代の男性が暴行を受け、搬送先の病院で死亡する事件が起きた。容疑者の男は、被害者と肩がぶつかったことから口論になり、凶行に及んだという。その稚拙な犯行動機もさることながら、さらに驚かされたのは、容疑者が76歳の高齢者だったことだ。

 一般的に、人間は齢を重ねると、さまざまな経験によって精神的にゆとりが生まれ、多少の雑事には動じなくなるといわれる。しかし、近年はこの事件のように、高齢者による衝動的な暴行や傷害、殺人の件数が急上昇している。

 今夏、その裏付けとなるデータが警視庁によって発表された。それによると、今年上半期は高齢者の刑法犯の数が1989年以降初めて未成年者を上回った。今や、犯罪に手を染めるのは「キレやすい10代」ではなく、「キレやすい高齢者」というわけだ。

 急増中の「キレやすい高齢者=暴走老人」は、どういった事情で生まれてしまうのだろうか。以下は、今年、暴走老人たちが起こした事件の例である。

●全国で急増中! 暴走老人による凶悪事件

 7月14日、青森県・狩場沢の杉林で、66歳の弟が70歳の兄をナタで切りつけて殺害する事件が起きた。弟の供述によると、杉林の伐採方法について喧嘩になり、怒った兄がチェーンソーで切りかかってきたので応戦したという。言葉で諌めるのは難しかったとしても、ナタで切りつける以外に方法はなかったのだろうか。

 11月6日には、ご近所トラブルによる高齢者の殺人事件が千葉県内で起きている。生活排水についての口論を発端に、76歳の容疑者が72歳の隣人を押し倒し、殴る蹴るの暴行を加えた挙げ句、池に落として殺害したのだ。2人は、以前から生活排水について衝突を繰り返していたというが、いくら頭に血がのぼったとはいえ、年齢を考えると、もはや「暴走」という次元ではない。

 ほかにも、山口県では10月28日に83歳の兄が80歳の妹を杖で何度も殴って殺害する事件が起きている。妹は肋骨が折れるほど体や顔を何度も殴打され、外傷性ショックで死亡した。その凄惨な行為に反して、兄が供述した殺害動機は「妹が農作業を手伝わないから腹が立った」という、なんとも間の抜けたものだった。

●20代女性にラブレターを拒否されて逆上

 殺人事件には発展しないまでも、駅や電車など公共の場において、暴走老人たちは好き放題に暴れ回っている。

 6月9日、JR京浜東北線の車内でタブレット端末の使用をめぐり、71歳の男が50代の男性を刃渡り17センチの包丁で脅す事件が起きている。もちろん、車内は騒然となり、電車は緊急停止した。幸いけが人は出なかったが、多くの乗客が線路に降りて避難するなど、約3万5000人の足に影響を及ぼした。

 9月26日には、東京メトロ有楽町駅の構内で、64歳の男がベビーカーに乗っていた1歳の男児の頭を殴る事件が発生した。男は、警察の取り調べに対して「ベビーカーが邪魔だったから」と供述しているが、その程度の理由で無抵抗の幼児に暴行を働く行為は、還暦を過ぎた大人のものとは思えない。

 さらに10月には、東京都世田谷区の路上で78歳の男が喫茶店店員の20代女性にラブレターを渡し、読まずに返されたことで「ぶっ殺してやる!」などと脅す事件が発生している。老楽の恋自体は非難されるべきものではないが、好意を受け入れられなかったからといって殺意を抱くというのは、常軌を逸しているといえる。

●医療の発達や食生活の欧米化が原因?

 暴走老人や高齢者の犯罪が急増している背景には、どういった理由があるのだろうか。老人による社会問題が専門のジャーナリストは、その理由をこう語る。

「以前からいわれていることですが、まず一番大きな問題として、社会全体の高齢化が挙げられます。そして、医療の発達や食生活の欧米化により、昔に比べて体力的に元気な高齢者が増えたことも大きいでしょう」

 高齢者たちは頭も体もまだまだ元気な一方、社会には彼らが活躍できる場はほとんどなく、まだ衰えていない体力やスキルを生かすことができない。その結果、毎日を悶々と無為に過ごしている老人は、かなり多いという。そして、積もりに積もった鬱屈した感情がささいなきっかけで爆発、とんでもない事件が起きてしまうようだ。

 中国の思想家・孔子の言葉に「七十にして心の欲する所に従えども矩(のり)を踰(こ)えず」というものがある。「人間は、70歳にもなれば、心の思うままに行動しても、物事の規範から外れるようなことはなくなる」という意味だ。もし、今の世に孔子がいたら、感情の赴くままに暴走する老人たちを見て、どう思うだろうか。
(文=西山大樹/清談社)