おさる 書家・宇都鬼として活動を始め「やっと芸人になれた」 | ニコニコニュース

真剣な眼差しで書家・宇都鬼としての活動を語る
NEWSポストセブン

「すんまそん」「うれCY!」「ありがトーマス」「お願いスマッシュ」などのギャグで知られる、ピン芸人のおさる(47才)。芸人としてはめっきりその姿を見ることは減ってしまったが、実は最近、書家・宇都鬼(ウッキー)としての活動に注力しているという。迷走か、本気か!? 本人に直撃した。

――書道家として活動しているそうですが、何年目になりますか?

おさる:仕事として受け始めてから、1年半くらいです。師匠についたのは7年前ですが、母親が書道の先生でしたから、4才から書道を習っていました。中学校に上がる頃にはやめていましたけどね。

 でも、大人になってからも字を書くのは好きで、いつかは、また書道をやらないといけないと思っていました。そこに雑誌の仕事がきて、今の書のお師匠さんに出会って、本格的に習うようになったんです。

――どれくらいの時間、字を書いているのですか?

おさる:週末は、1日に10時間以上書くこともありますよ。展覧会の前には、朝から師匠のお宅にお邪魔して、終電まで。長さ3m、幅1mくらいの紙に書いています。大きな字だから、膝をつくと長く線を引く時に詰まって途中で文字が切れてしまうんです。だから10時間ずっと中腰で、歩きながら書いている感じですね。農家のかたの苦労がわかります(苦笑)。

――腰痛になりそうですね。

おさる:なりますよ! 10時間書いた翌日は、目覚めると起きられないんです。イテテテって、おじいちゃんみたいですよ。そこに容赦なく、2才の息子がドーンと腰に乗ってきますからね。一番の急所をわかっていますから。戦いですよ、書道と子育て。でも楽しいです。

――書道家の仕事としては、どういったものを書いているんですか?

おさる:命名書とか、起業の看板とか、ロゴとか、名刺とか。書のパフォーマンスイベントもありますし、注文をいただいたらなんでも。看板だと読めないといけないので、崩しすぎず。お祝いの一言を書いてくださいと言われると、元気のある文字を書きます。命名書だと赤ちゃんの名前だから、一番濃い真っ黒な墨で、きっちりとした字を書きますね。

――書道家の活動で、感動したことは?

おさる:昨年の暮れに、歯医者さんの看板を書いたんです。リアルタイムで工事を見ていたら、ぼくが書いた文字が7m×2mくらいの看板になってできあがってきて。感動しました。いいことしてるんだなって。

 それから命名書の依頼をいただくと、子供が生まれて最初に書いてくれと言われるものなので、任せとけって張り切っちゃいますね。良い字で、その子のスタートを切ってあげたいって、200%の力でやりますから。

――書をお願いすると、おいくらなんですか?

おさる:宇都鬼のホームページに依頼先が載っているんですけど、料金は応相談です。そんなに高くないですよ。でも、驚いたことがあったんですよ。大きな字で“一期一会”と書いてほしいと依頼があって、2m70cmくらいで書いたんです。できあがって、金額の相談をしようとしたら、「金払うんですか?」って言われて(苦笑)。

 表装とか、書いた後もお金がかかるから、無料とはいきませんよね。そのときは「お金いるんですか? ならいらないです」と言うから、それは自分の家に飾っています。絵に比べて、字は軽く見られるのかなって。ちょっと悲しかったですね。

――芸人と書道家のウエイトは?

おさる:呼ばれた時は芸人、その他の時間はずっと書家みたいな感じです。でも自分の気持ちの中では、「やっと人に見せられる芸ができた」と思っています。今まで、「すんまそん」「うれCY」「ありがトーマス」だけだったんです。でも、やっと人に見せられる芸ができました。やっと芸人になったんですよ。

 実は今まで、“芸人”と名乗っていませんでした。細かい話ですけど、プロフィールを出すときはいつもお笑いタレント”にしていたんです。ぼくは芸がないから、芸人って書けないなって。それを今年の夏くらいに、“芸人”と書くようになったんです。

 だから、2011年の『東京書作展』で最優秀賞に選ばれた時はうれしかったですね。真っ暗なところに光が見えた気分でした。書道でいけますよと、天から言われた感じで。カミさん(山川恵里佳)にも褒められましたよ、「すごいね。賞もらうの、お笑いを通して初めてじゃない?」 って(笑い)。

――書道はあまり、お金がかからないもの?

おさる:いえ、かかるんですよ! 10時間書いた日は、紙代などで数万円かかります。筆、墨、硯、いくらでも高いものはありますし、紙は1枚400円とかしますからね。それを何十枚と書く日がありますから。でも、高ければ高いほど、気持ちが研ぎ澄まされるんです。1枚1枚、「お前で決めてやる!」という。

――将来、書道家として目指すものは?

おさる:若い人に字を知ってもらって、楽しく書いてもらえるように、指導にあたりたいです。教室を開くのではなくて、パフォーマンスとか作品を通して、こんなに書は楽しいものなんだって、たくさんの人に知ってもらいたいですね。

 習字教室を開かないかと誘いがあるんですけど、断っているんです。逆にぼくが習いに行く立場なら、タレントの書道家のところに行かないと思います。だから、もし教室を始めるなら「この人はこんな字を書くんだ」と、もっと知っていただいてからですね。「“すんまそん”しか言ってなかっただろ」「まだ7年だろ」って言われちゃいそうですからね(笑い)。

【おさる】
1968年9月19日生まれ。大阪府出身。1991年、大学の同級生のコアラと『アニマル梯団』を結成し、『タモリのボキャブラ天国』(フジテレビ系)などで人気に。2000年コンビを解散。2004年、占い師・細木数子の勧めで芸名を”モンキッキー”に改名し、8年後”おさる”に再改名した 。現在、書家・宇都鬼としても活動中。詳しい活動はこちらで紹介されている。http://www.kakibito.com/ http://ameblo.jp/monkickey/

撮影■田中麻以